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いつでも元気

いつでも元気

お金をかけない健康法

 「命が惜しいので、私はA社のワクチンもどきの接種をしません」。
 昨春の第4波流行のさなか、同世代のメル友・X氏から驚きのメールが飛び込んできました。
 X氏はインターネットに良く登場するY教授の説明を信じたようです。Y教授は「ワクチンは生ワクチンか不活化ワクチンのどちらかであり、A社の製品はそのどちらでもない」と主張。接種すると「女性が不妊になる可能性が非常に高く」「長期的には体に変調をきたし死亡する場合も」などと、ワクチン有害論を流布していました。
 X氏はその情報を信じて、メル友仲間に拡散。A社にいた研究者が「このワクチンもどきを打った猫は2年後に全部死んだ」とか、ある世界的富豪が「このワクチンで世界の人口を10~15%減らすことができる」と述べているなどの情報を紹介してきました。
 私はそれに対して「命が惜しいので、先週ワクチンを接種しました。これで万全ではなく、感染予防策の徹底が必要です。検査を広げ、ワクチン接種ももっと早くです」と返信。しかし、その後もワクチン忌避陰謀論を紹介する情報が送られてきます。
 昨夏には、X氏のメル友仲間の一人がコロナ感染で死亡。「心臓に病気をかかえていて、ワクチン接種をしなかった」とのことですが、ワクチン有害論が影響したのではと心配したものです。
 新聞では「反ワクチンが産業に」との報道もありました。ワクチンに関心を寄せる人々のアクセス数を稼ぎ、「コロナに有効」とうたうサプリメント販売につなげるなど、「反ワクチン」活動が巨額の利益を生んでいるといいます。
 コロナ発症や重症化を予防するワクチンの有効性を示す知見が蓄積されてきました。ただ、根強いワクチン有害論との論争は続きそうです。


大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)

いつでも元気 2022.3 No.364