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いつでも元気

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まちのチカラ 
瀬戸内海に浮かぶアートの島 香川県 直島町

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

 香川県の北、瀬戸内海に浮かぶ27の島からなる直島町。
 芸術作品が数多く展示されるアートの島として知られ瀬戸内国際芸術祭には世界中から人々が訪れます。
 海との歴史を感じる古い町並みと現代アートが融合する島をご紹介します。

感染対策をしたうえで取材しています

 岡山県玉野市の宇野港からフェリーで約20分、瀬戸内海の穏やかな景色が広がる直島町に到着しました。フェリーを降りてすぐ目に入るのは町のシンボルのひとつで、世界的アーティスト草間彌生の作品「赤かぼちゃ」のオブジェ。青い海と空とともに出迎えてくれました。
 町の島々の中心である直島は、周囲16㎞、面積8㎢。観光や美術鑑賞のエリアである島の南半分を車で走るだけなら、20分で回ることができます。島内の美術施設は主に3つのエリアに分かれて点在しています。
 フェリーが到着する西側の島の玄関口宮ノ浦地区には、赤かぼちゃの他に約250枚のステンレス網で構成された藤本壮介の直島パヴィリオンや、大竹伸朗が手がけた実際に入浴できる美術施設の直島銭湯「I♥湯」(アイラヴユ)が。
 一方、戦国時代の城下町を原形とする東側の本村地区には、7軒の空き家などを改修した家プロジェクトや安藤忠雄の建築要素を凝縮したANDO MUSEUMがあります。
 そして島の南端には、美術館とホテルが一体となったベネッセハウス ミュージアム、巨大なスケールの李禹煥美術館や自然と一体となった地中美術館があります。
 地中美術館は、町内で最も来場者が多い人気の美術館。瀬戸内海の美しい景観を損なわないようにと、建物の大半が地下に埋設されています。クロード・モネ、ジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの3人の作品が恒久設置され、降り注ぐ自然光によって作品や空間の表情が刻々と変わります。自然、芸術、建築が融和する、ここでしかできない体験をお楽しみください。

学生のカフェで地域が活性化

 島歩きの合間にひと休みできるカフェを香川大学の学生が運営していると聞き、訪れました。本村地区の古民家を改修した和cafeぐぅでは、5人の大学生が丁寧に接客も調理も行っています。
 今ほど沢山のカフェがなかった2006年にオープン。「学生さんが一生懸命つくったスイーツがおいしいんですよ」と地域の方にも好評です。カフェ運営の他にも、これまで町民が行ってきた観光ボランティアガイドを受け継ぎ、周辺の本村地区を案内します。この地区は古い町並みが残るエリア。歴史や文化とともに現代アートの解説も行います。
 「いろんな学部、いろんな出身地から集まっているメンバーなので、それぞれの視点で町の魅力をお伝えできれば」と楽しそうに語るのは、経理担当で経済学部3年の山田倫太郎さん。若者のさわやかな声が町に響きます。

安心のなおしまひらめ

 宮浦港(宮ノ浦地区)の正面にあるレストランゆうなぎでは、珍しいなおしまひらめを提供しています。なおしまひらめは、全国でも数少ない海水の紫外線殺菌で、消毒薬を使わず人にも環境にも配慮して卵から育てています。「始めて30年以上、島周辺の水温の変化が激しい環境でも生き残ることができる魚を探して、ヒラメにたどり着きました」と、近くの能見海岸の養殖場で元気なヒラメに餌をやるのは堀内健司さん。
 その日の朝まで泳いでいたヒラメは新鮮なまま、レストランゆうなぎで刺身や煮付けなどでいただくことができます。人気は丸ごと1匹を大胆に揚げたヒラメ唐揚げ定食。頭から尻尾までサクサクで香ばしく、ふわふわの身を味わえます。
 ゆうなぎは堀内さんの母親の和子さんと、子ども2人の3人で経営。「おばあちゃんのさじ加減は子どもの頃から見ていたからね」と、孫の堀内かおりさんが調理の腕を引き継いでいます。親子3世代で営む笑顔が絶えない店内は、今日も観光客でにぎわいます。

女だけの文楽一座

 最後にご紹介するのは町に残る伝統芸能。江戸時代に幕府直轄の天領地であった町は、古くから芸能が盛んでした。その一つが直島女文楽で、その昔、網元が豊漁を祈念して淡路島から文楽一座を招致し、南部の琴弾地の浜で興行した際に地元の人々も加わって人形を操ったのが始まりといわれています。
 町民の関心が遠のいた時期もありましたが、1948年に女性3人の手によって再興され、女性だけでつくり上げる文楽として受け継がれています。
 週に2度の練習日に訪ねてみると、「孫に勧められて入ったの」「80になったらやめようと思っていたのにもう84歳よ」など、平均年齢75歳の14人が息を合わせて練習していました。今年は3年に1度開催される瀬戸内国際芸術祭での公演を控え、稽古に力が入ります。
 芸術祭は4月14日に開幕します。町を含めた瀬戸内海の12の島と2つの港を舞台とした現代アートの祭典で、世界中から注目されています。

■次回は富山県朝日町です。

まちのデータ

人口
3010人(1月1日現在)
おすすめの特産品
天日塩(SOLASHIO)、海苔、ハマチ、金
アクセス
岡山県宇野港よりフェリーで約20分。香川県高松港よりフェリーで約50分、高速艇で約30分
問い合わせ先 
直島町役場 まちづくり観光課
087-892-2020

いつでも元気 2022.3 No.364