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いつでも元気

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けんこう教室 
化学物質過敏症とは

 芳香剤や柔軟剤といった化学物質が原因で、頭痛や吐き気などの症状が出る化学物質過敏症。
 コロナ禍で使用が増えた消毒薬がリスクになるケースも増えています。
 ふくずみアレルギー科(大阪市)で診療にあたる吹角隆之医師にうかがいました。

大阪・ふくずみアレルギー科
吹角 隆之

Q:化学物質過敏症とはどんな病気ですか?
A:化学物質過敏症(CS/Chemical Sensitivity)は、空気中を漂う化学物質を吸い込むことにより症状が出る病気です。患者さんの4分の3は女性で、30代から50代に多く見られます。
 発症や悪化の原因になりうる化学物質を資料1に示しました。これらの化学物質を短期間に大量に吸い込んだり、あるいは少量でも長期間吸い続けると発症します。
 もちろん、化学物質を吸い込んだ誰もが発症するわけではありません。アルコール(お酒)の代謝に個人差があるように、化学物質を代謝する能力にも個人差が大きいからです。個人の体質を風呂おけの大きさに見立てて、発症のしくみを説明することもあります(資料2「風呂おけモデル」)。
 いったん発症すると、少しの量を吸い込むだけで症状が出てしまうようになります。さらに別の種類の化学物質でも症状が出たり、反応する化学物質が次々と増えていく場合があり、これをMCS(多種類化学物質過敏症)と呼びます。


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Q:どのような症状が出ますか?
A:症状は多彩で、化学物質により、あるいは人によって異なります。
 主な症状を資料3に示しました。頭が痛い、疲れやすい、風邪をひきやすいなどの症状から始まって徐々に症状がひどくなり、複数の症状が出たり、頻度も増えていきます。
 化学物質過敏症で特に困るのは、診断に至るまでに相当の時間がかかることです。ほとんどの場合、原因が分からないまま、いろいろな診療科や病院を転々とします。医療関係者もこの疾患について理解がないため、はっきり診断が出ることは稀です。
 更年期障害や自律神経失調症、うつ病、パニック障害と診断されることも少なくありません。原因が分からないまま患者さんが孤立してしまうこともあり、日常生活でさまざまな困難を抱えます(資料4)。


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Q:診断と治療について教えてください。
A:診断のためには詳細な問診、全身の観察、血液検査、眼科的検査、神経学的検査が重要です。併せて精神的な調査や呼吸機能、自律神経機能検査も有用です。
 最も重要なのは、疾患がどのようにして起こったのかを調べることです。症状や経過、居住歴、住環境、職業歴、職場(または学校)の環境、趣味や嗜好など、詳細な問診で原因を絞ります。
 治療のためには、原因となる物質を吸い込まないことが一番です。患者自身がこの疾患を理解し、どのように治っていくのかを見通すことができれば、不安が解消されて着実に治癒に向かう軌道に乗ります。
 次に重要なのが家族と職場(または学校)の理解と協力です。疾患への理解や治療への協力の姿勢を示すだけでも、患者の気持ちはずいぶん楽になります。
 具体的な環境整備としては、原因となる物質を徹底的に排除した安全な1部屋(場所)を家(職場・学校)に確保します(オアシス作戦)。1つの部屋を空にして、床に問題があれば活性炭シートやポリエチレンシートなどをかぶせます。次に布団などを1品ずつ持ち込み、大丈夫かどうか確認しながら、安心して息が吸える環境を整えます。
 薬物療法については、薬も化学物質なので安易に使うと体調が悪化するおそれがあります。解毒剤やビタミン剤の内服だけでも、症状が軽くなることが少なくありません。
Q:実は知られていないポイントや読者へのメッセージがあれば、お願いします。
A:化学物質過敏症の潜在的な患者さんは意外に多いと実感しています。症状が長く続いても、診断がつけられていない方が多くいるのではないでしょうか。
 この疾患を治りにくくするのは、患者さんの不安感と恐怖感です。患者さん自身がよく理解して治療に取り組むのはもちろん、周囲の理解と協力も欠かせません。
 また食生活を変えると、症状が軽くなる場合が少なくありません。コーヒーや牛乳、パンや砂糖、豚肉など、多量に摂取しているものが原因のこともあります。資料5として、治療に役立つ食生活の10箇条を挙げました。
 最後に、化学物質過敏症は治る病気です。治療を始めて一定期間経った患者さんには、治るコツを伝授しています。治った人のアンケートから作成した「治った人からの治るための10箇条」(資料6)を紹介しますので、よく味わって治療に活かしてください。

いつでも元気 2022.1 No.362