お金をかけない健康法
コロナウイルスの家庭内感染が増えています。感染力が強いデルタ株が流行するなか、若い世代を中心に感染が拡大しました。
もの忘れ外来に通院するAさん(女性・80代)一家は、同居家族5人のうちAさん以外の4人が感染。息子夫婦2人が重い症状で入院し、症状が軽い20代の孫B君とCさんは、前後して1週間ほどホテル療養となりました。ワクチン接種済みのAさんだけは感染を免れましたが、通所介護は利用できなくなりました。
認知症があるAさんには家族介護が不可欠で、最初のPCR検査で陰性のCさん頼みでした。ところが2回目のPCR検査でCさんも陽性になり、介護がピンチに。その頃、先にホテル療養していたB君が帰宅できることになり、家族介護を継続できたのです。
そもそも家庭にコロナウイルスが持ち込まれた※1のは、都内の大学に通うB君からでした。ワクチン未接種で友人関係の集まりに参加し、クラスターに巻き込まれたのです。B君のPCR検査陽性が確認されると、すぐに家族は通所介護利用中のAさんを迎えに来て、感染を広げないようにしました。
しかし感染拡大のスピードは速く、翌日にはワクチン接種1回の息子さん夫婦が陽性に。その2日後には陰性だったはずのCさんに症状が出始め、土日を挟んで週明けに陽性が確認されました。
ワクチンを2回接種していれば、感染を免れるか、感染しても症状は軽くてすみます。しかし1回接種の場合には、感染や重症化を予防する力は弱いのです。
振り返ると、Aさん一家の感染予防対策には弱点があったようです。帰宅時の手洗い、食事時の注意点、定期的な換気などが守られていませんでした。※2
現在、通所介護に復帰されたAさんは、私が昼食時にお伺いすると、にこやかに出迎えてくれます。
※1
家の中にウイルスを持ち込まないために
帰宅後の手洗いは水と石けんで丁寧に行う。手指消毒は指先から手首まで全体によく擦りこむ。少し窓を開け、こまめに換気する。
※2
家庭内で陽性者が出たあとの注意事項
(1)部屋は可能な限り分ける(2)介護者はできるだけ限られた人数で分担(3)全員がマスク使用(4)うがい・手洗い励行(5)日中はできるだけ換気(6)取っ手やノブなど共用部分の消毒(7)汚れたリネンや衣服の洗濯(8)ゴミは密閉して捨てる
大場敏明
おおば・としあき
1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒、内科医。船橋二和病院、東葛病院、みさと協立病院などを経て、クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市)院長。著書に『ともに歩む認知症医療とケア』(現代書林)、『ドクター大場の未病対策Q&A』(幻冬舎)、『かかりつけ医による「もの忘れ外来」のすすめ』(現代書林)
いつでも元気 2021.12 No.361
- 記事関連ワード
- お金をかけない健康法介護大場敏明検査症状