コミュニティーバス くるりん
昨年10月、石川県金沢市でコミュニティーバス「くるりん」が誕生して1年。
健生クリニックの送迎車を利用して、住民の移動する権利を守っています。
石川県健康友の会連合会役員で、くるりん運営委員会事務局の木村吉伸さんの報告です。
コミュニティーバスくるりんが、昨年10月1日から金沢市南部を走り始めました。くるりんの名称は、地域を“くるりとまわる”という意味で、みなさんの投票で決まりました。
くるりんは予約なしで、どなたでも無料で利用できます。健生クリニックの送迎車(10人乗り)の空き時間を利用して、週2回(水・木)午前11時から午後2時まで、1周30分を6便運行しています。運行ルートは県営住宅からスーパーやドラッグストア、銭湯などをまわり、健生クリニックへ戻ります。
住民アンケートを実施
近所にあったスーパーや銭湯がなくなり、高齢者が日常生活に支障をきたす場面が増えています。本来は「誰もが・いつでも・どこでも・自由に」移動する権利が保障されなければならず、自治体や公共交通機関にはそれを実現する責務があります。
地域住民の移動する権利を守ろうと、金沢市南部の野田地域に「コミュニティーバスを走らせる会」が結成されたのは2019年10月のこと。署名を集めて市議会に請願しましたが否決され、市長への要請も担当課から「実現は困難」との回答でした。
そこで町会の回覧板などを通して住民アンケートを実施し、約600世帯が回答。車を運転しない人が不便を感じる外出先は「スーパー」が最も多く、「公共施設」「病院」と続きました。全体の半数以上が「バスが導入されたら利用する」と答え、マイカーがある人も「時々利用したい」「免許返納後に利用する」と回答しました。
利用者から喜びの声
市に対して要求を続けながら、「今すぐバスを実現してほしい」との要望に応えて生まれたのがくるりんです。健生クリニックや健康友の会、地域で送迎や配食などのサービスを担うNPO法人たすけ愛が共同で運営することで実現しました。
運転ボランティアは5人が交替で行い、感染対策にも気をつけています。運行ルートであれば自宅前で乗り降りできるようにするなど、利用をさらに拡大するための工夫も必要です。社会福祉協議会や地域包括支援センターから問い合わせがあり、地域でもくるりんは知られてきています。
利用者からは「お風呂に行けて嬉しい」「JA(農協)直売所で野菜を買えるのが楽しみ」と喜びの声が。ほかにも「これまではタクシーだったので助かる」「買い物へは歩いて行くが、帰りに荷物が重くてもくるりんがあるので安心」など歓迎されています。お友達と誘い合って乗る方もいて、1日35人前後が利用しています。
一人ひとりの願いに応えるくるりんの運行を積み重ねて、つながりを強めながら、市に対して公共バスの実現を迫っていきたいと思います。
いつでも元気 2021.11 No.360