青の森 緑の海
写真と文 今泉真也
厄除け祈願の神社として、沖縄県民に親しまれている普天間宮は、米軍・普天間基地(宜野湾市)のすぐ近くにある。
本殿のさらに奥にある鍾乳洞は、「奥宮」として大切に拝まれている場所だ。約3000年前、沖縄貝塚時代の人々が暮らした跡が残る文化財でもある。
大昔、沖縄の多くの土地は海面下にあった。およそ250万年前から1万年前にかけて生きていたサンゴや貝などが琉球石灰岩の地層となり、沖縄全体の約3分の1を覆った。糸満市の摩文仁海岸などで見られる険しい崖はその断面だ。島の暮らしは昔も今もサンゴ礁とともにある。
石灰岩は水をよく通す。下層の泥岩との間にたまった地下水は千年、万年という時間をかけて鍾乳洞をつくり、海へと向かう。そのため低い地域には湧水も多い。
石灰岩でろ過された水は島の恵みそのものである。飲み水以外にも子どもたちの大切な遊び場となってきた。
ところが最近、米軍基地などから排出された有機フッ素化合物・PFOSによる地下水汚染が表面化した。脈々と人々の生命を支えてきた湧水に今、子どもたちの声はない。
また、便利さを優先した僕たちの生活からも汚染水は流れていく。百万年単位の太古の時間に、もっと敬意を払わなくてはと思う。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2021.11 No.360