みんなで作った無低診の看板
文・新井健治(編集部)
「誰もが安心して受診できる病院に」―。泉病院※(宮城県仙台市)と泉病院友の会が無料低額診療事業(無低診)※をアピールする看板を手作りした。
幅約8.2mと巨大な看板作りには職員35人、友の会員17人の計52人が参加。
コロナ禍で地域活動が制限されるなか、職員と友の会の交流にもなった。
※泉病院 宮城民医連の脳卒中センターとして1982年に開設。ベッド数は94床。脳神経内科、脳神経外科、内科、リハビリテーション科、放射線科。現在、病院リニューアルを計画中
※無料低額診療事業 収入などが一定の要件を満たせば医療費が無料または低額になる制度。医療機関では全国で703事業所が実施し、うち民医連は409事業所と約6割を占める(2020年)
泉病院は2011年から無低診を始め、当時の利用者は1037人。その後、17年は1318人、18年は1148人と毎年1000人程度で推移していた。
泉病院外来運営委員会の佐藤芳恵事務局長(診療サービス課)は「医療費が心配で受診できない人はたくさんいるが、患者さんに無低診が知られていない。コロナ禍で生活が困窮する人は増えており、制度をアピールしようと看板作りを提案しました」と振り返る。
看板は6~7月に職員と友の会員がボランティアで製作。雨風に耐えられるよう、ベニヤ板に防水や防腐加工をした本格的なもの。多くの人の目に触れるよう、交通量の多い県道に面した駐車場のフェンスに設置した。
毎年7~8月は子ども病院探検や青年ジャンボリー、原水禁世界大会壮行会など、友の会と職員で協力して行う行事がたくさんあるが、いずれもコロナ禍で中止に。
泉病院友の会の佐藤峰夫事務局長は「職員と交流することも少なくなっていたので、看板作りは絶好の機会。地域住民に頼ってもらえる友の会づくりの一環にもなった」と語った。
無低診の学習会も
泉病院は看板以外にも無低診を知らせる活動を展開している。仙台市の各区役所など行政窓口にチラシを置かせてもらい、診療圏の富谷市の広報誌に無低診の記事が掲載された。地域の関係機関が集まる会議の場などで、無低診の学習会の機会を設けている。
同院の花木かよ子事務長は「こうした活動を通して地域包括支援センターや路上生活者の支援団体から患者の紹介がありました。全日本民医連のいのちの相談所の提起もあり、職員の間でも人権のアンテナの感度が高まって、無低診を活用する機運が盛り上がっています」と指摘する。
看板作りの先頭に立った長谷部誠院長は「病院内にいるだけでは見えてこない患者さんをどのようにして見つけるのか。それが私たちの課題のひとつ。無低診は受診をためらう患者さんに対するアプローチの柱です」と話した。
泉病院友の会幹事・菅原進さん
文字の切り抜き作業が大変だった。
看板表面の防水対策は屋外の作業だったので梅雨空と相談しながら行った。
立派にできて良かった。
泉病院作業療法士・安達理紗さん
入職1年目、こんな活動がある病院は楽しい。
普段はあまり話すことがない他職種の人と交流する機会にもなりました。
泉病院友の会前会長・千葉勝利さん
コロナ禍で仲間を増やす機会が制約されて厳しいが大事な病院を支えるためにも友の会員を増やしたい。
■ 看板製作の日程
6月7日~7月23日
文字の切り抜き(できる人ができる時間帯で実施)
7月1日
看板を設置するフェンスの補強
7月6、16、20日
看板表面の防水、防虫、防腐加工
7月24日
塗料スプレーによる文字の色塗り
7月31日
看板設置(結束バンドでフェンスにくくりつける)
■ 看板製作の費用
約4万5000円
(ベニヤ板、ペンキ、杭
結束バンドなど材料費のみ)
いつでも元気 2021.10 No.359