青の森 緑の海
写真と文 今泉真也
学生時代、北風の時はダイビング仲間と島の南部によく潜った。仲間には肌が白く眼の青い人もいて、海に潜る僕らを顔に深く皺の刻まれた白髪のおばあさんが、遠くからじっと見つめていた。
仲間は軍人ではなかったが、おばあさんの目には、たった40年ほど前の風景が重なって映っていたのだろう。
76年前、この場所でひめゆりの学徒たちが亡くなった。今、この海に来ることのできる自分。一方で、生き延びた後も、長い間ここに来ることができなかった元学徒もいる。その差を少しでも埋めることはできるのだろうか。
6月。朝の光のなか、若者たちが軽やかに波に乗りはじめる。
【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。
いつでも元気 2021.6 No.355