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いつでも元気

いつでも元気

青の森 緑の海

2021年2月 那覇市沖合

2021年2月 那覇市沖合

 冬になると、出産と子育てのためにザトウクジラが沖縄周辺にもやって来る。捕鯨が行われていた昔は一度姿を消したが、30年ほど前から帰って来てくれるようになった。12月から3月のあいだ、海にはこの地球上最大の動物の気配がある。森の新緑が終わり梅雨の匂いのするころ、彼らはアラスカやロシアなど北の国へ、また国境を越えて旅していく。
 沖縄科学技術大学院大学などの調査で、沖縄島周辺の海水に含まれる物質のうち、マイクロプラスチック(粉砕された微粒子)の占める割合が平均17%にものぼることがわかった。またプラスチックが体内に入った海中の小型生物において、光合成と成長率の低下も確認された。
 世界じゅうで海に流れ込むプラスチックゴミは、2040年までにほぼ3倍に増えると予想されている。私たちの体内にも、水や食物を通じてそのプラスチックは取り込まれていく。今年の撮影では海水の濁りにも泣かされた。海を汚す要因は、私たち人間の生活にある。
 悩んでいるとき、落ちこんでいるとき、この海の果てのどこかで、彼らがゆったりと泳いでいる姿を想像すると、気持ちが穏やかに落ち着いていく。
 僕たちの生を別の世界から考えさせてくれる自然の力は、これから先とても重要になるだろう。彼ら野生生物の暮らしを妨げることは、私たち自身の首をゆっくりと絞めていくことだと思う。


【今泉真也/写真家】
1970年神奈川生まれ。中学の時、顔見知りのホームレス男性が同じ中学生に殺害されたことから「子どもにとっての自然の必要性」について考えるようになる。沖縄国際大学で沖縄戦聞き取り調査などを専攻後、一貫して沖縄と琉球弧から人と自然のいのちについて撮影を続ける。2020年には写真集『神人の祝う森』を発表。人間と自然のルーツを深く見つめた内容は高い評価を受けている。

いつでも元気 2021.5 No.354