おやくにたてれば市
文・新井健治(編集部) 写真・野田雅也
千葉健生病院健康友の会(千葉市花見川区)が2月17日、地域住民を対象に無料で食材や生活必需品を提供する「おやくにたてれば市」を開いた。
また、病院をはじめ花見川区の民医連事業所に、会員からの応援メッセージとカンパも届けた。
コロナ禍が長引くなか、内と外に向けた共同組織の奮闘が続く。
おやくにたてれば市は昨年12月に続き2回目。会員や職員が寄付した食材と、マスクや毛布、洗剤など生活必需品を提供。13人が訪れ、思い思いの品をリュックや箱に詰めて持ち帰った。重くて持ち帰れない人には、翌日に職員が車で届けた。
友の会の鈴木春夫会長は「コロナで困っている人が大勢いることを改めて実感した。サークルや班会はなかなか開けないが、こうした取り組みで友の会の存在意義を発信できれば」と話す。
食材は調理不要のものに人気が。「火を使うのが怖い」との理由でカップ麺より缶詰やレトルトカレー、鰹節、ふりかけがあっという間になくなった。
当初は会員向けに開く予定だったが、「友の会の年会費1000円を払えない人もいる」との意見から、幅広く地域で困っている人を対象に。当日は千葉健生病院職員が無料低額診療の説明を担当、老人保健施設・まくはりの郷と千葉市あんしんケアセンター(地域包括支援センター)幕張の職員が生活相談に応じた。
「お父さんも喜ぶ」
おやくにたてれば市で、真っ先に暖かそうな毛布を手にした70代の女性は「これでお父さんも喜ぶ」と笑顔。要介護4の夫と2人暮らし、年金は2カ月で8000円だけ。「食材は閉店間際の半額セールでしか買えない」と話す。
千葉市あんしんケアセンター幕張の山口順子センター長は、「迷惑がかかるからとギリギリまで我慢し、大ごとになってから初めて声をあげる人が多い」と言う。
トイレがあふれたお宅を訪問すると「前から壊れていたが、世の中が大変な時に修理をお願いできない」と躊躇していた。
感染を恐れて介護サービスの利用を拒む人や、全く外に出ない人もいる。「こうした場所に出て来られない人に、どのように支援を届けるのか。それが課題です」と山口さんは指摘する。
ピンチをチャンスに
友の会は昨年11月、コロナ禍のなか奮闘する職員を励まそうと、カンパと応援メッセージを募集。機関紙と一緒に一言欄を設けた郵便振替用紙を同封、2月中旬までに232人から191万円が集まった。カンパを受け取った千葉健生病院の岡田朝志院長は「職員一同、大いに励まされています。力を合わせ、この難局を乗り切りましょう」と話した。
郵便振替用紙の一言欄には「地域の大事な病院」「緊張の日々、どうかお体を大切に」「皆さんの技術と愛情に助けられています」など、たくさんの感謝の言葉が。メッセージと職員からのお礼の言葉は、病院隣のまくはり診療所待合室に貼り出されている。
「長く地域医療を守ってきた病院の歴史に対して、会員の感謝の気持ちが自然に出てきたと思う」と話すのは、友の会副会長の南雲一吉さん。
応援プロジェクトを発案した友の会事務局長の古澤祐子さんは「たった一度の呼びかけでこんなにカンパが集まるとは。職員が喜んでいてくれるのが何より嬉しい」と言う。
おやくにたてれば市は今後も2カ月に一度開く予定。南雲さんは「今まさに、友の会の助け合いの精神を発揮するとき。こうした取り組みを通じて友の会と事業所、地域の交流が深まれば、ピンチをチャンスに変えることができます」と強調した。
いつでも元気 2021.4 No.353
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