お金をかけない健康法
「マスクを取ってはダメよ」。
娘さんのややきつい言葉に、怪訝そうな顔のお年寄り。半ば強引にマスクを着けられるのを嫌がりながら、「マスクを着けていては失礼かと思って」とつぶやく。
私は二人の様子を見ながら応じます。「マスクはエチケットです。今コロナが世界的に大流行しています。コロナにはかかりたくないですよね。ご高齢の方や慢性疾患をお持ちの方は重症化しやすく、亡くなる方も増えています。予防につながることは皆で取り組みましょう」。
娘さんが「先生にも、うつしたくないですしね」と、すかさずフォローする。
「コロナ予防の第一は、皆がマスクを着けることです。毎年流行るインフルエンザ予防でもマスクは必須ですね。コロナの場合は感染しても最初は症状が出ず、発症2日前に他人に感染させるリスクがピークになるのです」と私。
「でも先生、ウイルスは電子顕微鏡でしか見えないほど小さくて、マスクなどは通りすぎてしまうのでしょう。その効果は本当なのですか?」と、患者さんから突っ込みが入る。
「根拠について議論があることは事実です。しかし、昨年秋頃から医学研究論文などで、飛沫感染を防ぐマスクの効果が証明されてきています。ただ、欧米では変異したコロナウイルスが猛威を振るっており、実にやっかいなウイルスです。一人一人ができる努力とともに、政府・自治体での早期検査・早期対応、医療体制強化、補償を伴う営業の制限など、ぜひ実行してもらいたいですよね」。
娘さんは心配そうに「70代のトランプ米大統領(当時)がマスク嫌いで、感染症対策にも不熱心でコロナにかかったわよね。迅速な治療で助かったけれど、数日遅れれば命が危なかったかもしれない」と語る。
「マスクとともに、手洗い・うがいの励行、そして3密(密閉・密集・密接)を避けることも重要です。皆さんで注意して、コロナにかからないようにしていきましょう。どうぞ、お大事に」。
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今月号からしばらくの間、新型コロナに関する不安や疑問について、大場医師が診察室の風景を交えてお答えします。
いつでも元気 2021.3 No.352
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