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いつでも元気

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介護事業所はいま

全日本民医連事務局次長 林泰則

 11月11日は「介護の日」。
 コロナ禍における介護事業所の実態について、全日本民医連事務局次長の林泰則さんが報告。
 併せて地域の介護事情について千葉勤労者福祉会介護部長の門脇めぐみさんに聞きました。

 緊急事態宣言が解除された6月以降、各地の介護事業所ではサービスの利用が再開されるなど平時に戻りつつあります。しかし衛生用品・感染防護具の不足、大幅な減収、人手不足の進行などコロナ禍で生じたさまざまな困難は解消されておらず、依然として先を見通せない状況が続いています。
 全日本民医連は6月に緊急調査を実施。全国の76法人679事業所から回答がありました。調査結果から介護事業所の実態を報告します。

調査結果は全日本民医連のホームページで。
 トップページから「介護ウエーブ」をクリック、学習・宣伝物ダウンロードに掲載

厳しい経営状況

 介護事業所は基礎疾患のある高齢者が利用・入所していることに加え、食事介助や入浴介助など身体的な接触を伴うことが多く、感染のリスクが高い環境です。職員は「いつ感染するか」「感染させてしまわないか」という不安と緊張を抱えながら介護にあたっており、マスクや手袋、ガウンなど物資不足がそうした不安と緊張をさらに高めています。調査では「マスクの利用枚数を制限している」「今は足りているが、今後不足する見込み」などの回答が多く寄せられました。
 感染が拡大した3~5月、高齢者の利用控えや事業所での受け入れ数の縮小などが続き、事業所は大幅な減収に見舞われました。支出は感染予防のために逆に増えており、多くの事業所がこれまでにない厳しい経営状況です。昨年4月との比較で過半数の法人で収益が減少(グラフ)、経常利益率も15%低下しました。地域では事業を再開できず、廃業するところも出始めています。
 調査から改めて浮き彫りになったのは、現場の人手不足です。発熱などによる自宅待機、消毒といった業務の過重化、陽性者・濃厚接触者への対応、感染を不安視した退職などにより、普段から十分とはいえない職員体制が、いっそう余裕のないものになっています。厚労省はデイサービスの代わりに訪問介護の利用を認めましたが、ヘルパーの体制がとれず、対応が困難な事業所が数多くありました。

請願署名に協力を

 高齢者施設や介護事業所での感染、クラスターが各地で報じられています。高齢のコロナ陽性者は入院が原則とされていますが、空きベッドの状況や本人・家族の事情などで、高齢者施設内で陽性者に対応せざるを得ないケースが多くあります。
 しかし、施設では医療機関と同様の感染対策を講じることが困難です。施設での感染拡大・重症化は地域の入院体制をひっ迫させ、医療崩壊を招くことにもつながります。調査では利用者の中に陽性者・濃厚接触者が生じた場合の事業所としての対応について、不安や疑問の声が多くあがりました。
 事業所がこうした状況におかれている一方、感染対策や減収分への補填など政府の財政支援は不十分なまま。コロナ禍で事業所が抱える困難を早急に打開し、今後の感染拡大や長期化に対する備えを政府の責任で行うよう求めていく必要があります。
 新型コロナは介護保障の基盤の劣化を浮き彫りにしました。これは政府が進めてきた、給付抑制を先行させる介護保険制度の見直しが原因です。一方で高齢者の生活を支える介護の仕事の重要性と、その担い手の処遇と社会的地位の低さが再認識されています。
 大幅な処遇改善と介護報酬の引き上げ、利用者負担の軽減をはじめとする介護保険の抜本的な改善によって、行き届いた介護と、感染症など不測の事態に対応できるゆとりのある介護の実現を求める運動が必要です。
 全日本民医連は15万筆を目標に、介護の請願署名「STOP介護崩壊」に取り組んでいます。署名は来年1月末まで集め、2月の通常国会に提出する予定です。皆さんのご協力をお願いします。


介護サービスは心の支え

文・新井健治(編集部)

 コロナ禍における地域の介護状況について、千葉勤労者福祉会介護部長の門脇めぐみさんに聞きました。

 コロナ禍で実感したことは、外出自粛はたとえ短期間でも利用者さんに与える影響が大きいということ。運動不足で自宅で転倒するケースが増え、本人からも「前より動くのがおっくうになった」という声が届いています。
 利用者さんは近所との交流が減ったうえ、県外の家族と会うこともできない。一人で自宅にこもっていると不安ばかりが募ります。こんな時だからこそヘルパーが訪問したり、デイサービスに行くことで安心感と情報が得られます。介護サービスは利用者と家族にとって“ライフライン”であることが鮮明になりました。
 一方、もともと人手不足だった介護事業所は、コロナ禍でより厳しくなっています。千葉勤労者福祉会はデイサービスセンター「からたち」(千葉市花見川区)のほか、ヘルパーステーションやグループホームも運営していますが、ヘルパーの平均年齢は62歳。主に70歳以上のヘルパーさん8人が、コロナへの不安からやめてしまいました。
 地域には利用者の減少だけでなく、人手不足で廃業や休止をする事業所も。利用者さんにとって信頼できるヘルパーは家族と同じで、事業所は“心の支え”。存続するためにも、国の責任で具体的な対策を示してほしい。
 「からたち」はコロナ禍のなかでも密にならないよう定員30人を20人に減らして開設を続けました。地域には一人暮らしや家族が仕事をしている世帯も多く、「デイは絶対に休まないでほしい」との声が強かったからです。常時マスクをしていることで利用者さん同士の会話が少なくなり、次第に表情から活気が失われました。これではいけないと距離をとりながら体操をしたり、アクリル板を設置して顔を見て話ができるようにしました。経営的には持ち直していますが、冬に向けて不安が募ります。

いつでも元気 2020.11 No.348