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いつでも元気

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まちのチカラ

文・写真 橋爪明日香(フォトライター)

「健康いきいき診断プログラム」の立花千春さんと歩く白樺湖 周辺には豊富なウオーキングコースが

「健康いきいき診断プログラム」の立花千春さんと歩く白樺湖 周辺には豊富なウオーキングコースが

 長野県の東部に位置する立科町。
 日本百名山の蓼科山がそびえ立ち、白樺湖や女神湖などリゾート地として知られています。
 野生動物にもひょっこり出会える自然豊かな高原を訪ねました。

十分に感染対策をしたうえで取材しています

 東京から車で約3時間。立科町は南部の高原エリアと北部の里山エリアに分かれます。くねくねと曲がる信州ビーナスラインをドライブすると、森林から鹿の親子が。車に慣れているのか、動じずに澄んだ瞳でこちらを眺めます。
 到着したのは標高1450mの山麓に佇む白樺湖。真夏でも日中の平均気温が25℃と涼しく、周辺にはホテルや遊園地、美術館など観光施設が並びます。車を降りて深呼吸をすると、心地良い森の香りが。水面を渡る風が五感をくすぐります。

休養しながら健康増進

 湖畔で「健康いきいき診断プログラム」という看板を発見。施設に入るとトレーニングマシンや計測装置が並びます。ガラス張りのスタジオからは、広々とした白樺湖の美しい景観を眺めることができます。
 「準高地にある湖周辺は、身体に大きな負担をかけることなく高地トレーニングの効果が得られます。運動には最適な環境なんですよ」と、笑顔で迎えてくれたのは健康運動指導士の立花千春さん。スタジオには4人の健康運動指導士と1人の保健師が常駐。体力測定等を行い、自身のレベルに合った運動メニューを指導してもらえます。宿泊や食事とセットになったプログラムもあり、本格的なヘルスツーリズムが体験できます。
 立花さんは歩幅や姿勢、腕の振り方などウオーキングのコツも教えてくれます。「1周約3・8kmの白樺湖を眺めながら歩けば、あっという間です」。思わず体を動かしたくなる自然の中、リフレッシュとともに普段の生活習慣も見直せます。

学生がアイデア勝負

 立科町に全国から学生が集まり、町を盛り上げるアイデアを出し合う「タテシナソン」が開催され話題を呼んでいます。タテシナソンとは、アイデア×マラソンの「アイデアソン」という造語を立科流にもじったもの。3年前に始まり昨年は9月に行いました。
 28時間という制限時間内に、学生は町民と交流しながら町中を駆け巡り、寝る間も惜しんで町の企業や商店が抱える経営課題を解決するアイデアを議論します。これまでに乳製品の商品化や眠っていた木材での家具作りなど、採用されたアイデアは実際に資金をかけて事業化に取り組んでいます。
 立科町役場企画課の上前知洋さんは「学生たちの熱意に刺激をもらっています。彼らが卒業後、それぞれの道に進んだ時に、また立科町とつながって面白いことが生まれたら」と、将来の展開にも期待しています。

美味しさ広がる信州リンゴ 

 秋から冬の信州の味覚といえばリンゴ。中でも立科町の「ふじ」は最高品質として知られています。おいしさの秘密は昼と夜の寒暖差。日当たりがよく少雨量、強い粘土質の土壌も大切な要素で、蜜がたっぷり詰まりシャキッと歯ごたえのあるリンゴができます。
 「町のリンゴは完熟してから収穫するので、旬は11月末から12月の期間だけ。おいしく味わっていただきたいです」と語るのは「たてしなップル」の市川大樹さん。
 たてしなップルは、1年を通して町のリンゴを味わってもらおうと、リンゴパイやフランス菓子、リンゴジュースなど加工品を販売。国道142号線沿い、リンゴの巨大オブジェが目印です。中でも人気なのはリンゴの発泡酒「シードル」。昨秋には町で最初のワイナリーが誕生、ワインの醸造も始まりました。
 ワイナリーの周囲にはリンゴ畑とワイン用ブドウの圃場が広がり、蓼科山や浅間山の山並みが望める景観。テイスティングルームも近日オープンの予定なので、町の気候風土を感じながら、土地の恵みを味わえます。

第二の人生ワイン造り

 町は移住体験施設やテレワークセンターなども充実、首都圏からの移住者も多く受け入れています。東京から移住しワイン造りをしている方に会いに行きました。
 「都会であくせく働くのではなく、自然豊かな環境で肉体労働をして、夜はワインを嗜む。そんな生活に憧れていました。実際に暮らしてみると“何もない”ゆえの静けさとゆとりがここにはあります」と語るのは、移住4年目の中村大祐さん。
 中村さんは50歳を前に、思い切って「人生の夏休み」を取ったそうです。会社を辞めてワインアカデミーで勉強し、卒業後に町でワイン用ブドウ栽培農家に。現在は近隣ワイナリーに醸造を委託し、「カラリア」(“キャリア”の語源といわれラテン語で“轍”の意)というブランド名でワインを販売しています。将来的には自社ワイナリー建設を目指し、その候補地で農業体験民宿を始めました。
 「シンプルにおいしいと思ってもらえるようなワインを造りたい。ここに集う皆さんの人生の轍が交差するこの場所でワインを楽しんでもらえたら」と、第二の人生にチャレンジしています。
 秋には畑のリンゴやブドウが鮮やかに色づき、白樺湖周辺は黄金アカシアなどの紅葉が眩しい立科町。高原の爽やかな風が、心身ともに優しく癒してくれるでしょう。

■次回は群馬県みなかみ町です。


まちのデータ

人口
6,957人(9月1日現在)
おすすめの特産品
リンゴ、米、信州蓼科牛
アクセス
東京から車で約3時間
新幹線とバスで約2時間半
問い合わせ先
信州たてしな観光協会 
0267-55-6654 
※ホームページに新型コロナに対応した「新しい旅のエチケット」を掲載。参考にしてください。

いつでも元気 2020.10 No.347