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いつでも元気

いつでも元気

けんこう教室 
コロナ禍と熱中症

東京勤労者医療会 東葛病院
髙橋 賢亮

 コロナ禍のもとで迎える初めての夏です。
 マスク着用や換気が推奨されるなか、例年以上に心配されるのが熱中症。
 コロナ感染を予防しながら取り組む熱中症対策について
 Q&A形式で考えます。

問1  熱中症とは?

 熱中症とは高温多湿な環境に長くいることで、徐々に身体の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなって体内に熱がこもった状態です。

問2  どんな症状が出るの?

 暑い環境に身体が馴染めず、さまざまな身体の不調が出てきます。症状は重症度によって3段階に分かれます。
 最も軽い重症度Iは、大量に汗が出たり、めまいやふらつき、筋肉のこむら返りなどが起こります。
 重症度IIは頭痛、吐き気や嘔吐、倦怠感や集中力の低下、意識が朦朧とするなどの症状が起こります。
 もっとも重い重症度IIIは、意識障害やけいれん、手足の運動障害などが起こります。
 重症度に応じた対処法をイラストで示しました。あくまで参考ですので、受診が必要と判断した場合は、無理せず医療機関へ相談もしくは救急車を呼んでください。

問3  外出を自粛しています。家にいれば大丈夫でしょうか?

 熱中症による死亡数を年齢別・男女別で累積したデータ(環境省熱中症環境保健マニュアル)を見ると、全体の約半分が65歳以上の高齢者です。どのような状況で熱中症になったのかを調べると、高齢者は労働中や運動中に加えて、日常生活の中で熱中症になることが多いという結果でした。
 2016年のデータでは、熱中症により死亡した高齢者の38・8%は自宅にいたという報告が出ています。外出を自粛して、自宅で安静にしていれば大丈夫というわけではありません。そこが熱中症の怖いところです。
 自分の身をしっかり守るために、身体の不調を感じた際には決して我慢せず、早めに家族や近所の方に連絡をして受診しましょう。

問4  自分でできる対策はありますか?

 上手に暑さと付き合うことができれば熱中症を防ぐことができます。大事なことは次の2点です。
 まず、暑い時は屋外に出ないことです。太陽が燦々と輝く日中は、屋内の涼しい環境で過ごしましょう。外出は早朝や夕方の比較的気温が下がり、人通りも少ない時間帯に済ませることで“3密”(密閉・密集・密接)も同時に避けることができます。
 外出自粛が続くなか運動不足になりがちですが、1日に1回は外に出て身体を動かす習慣をつけましょう。足腰の弱い方は屋内で少し身体を動かすだけでも構いません。いすに座ってできる簡単な体操もあります。
 2つ目はこまめな水分補給です。スポーツドリンクや経口補水液(OS-1など)が販売されていますが、自宅で簡単に作ることもできます。水1リットルに砂糖40グラム、塩3グラムを加えるだけです。手作りなら経済的です。お好みでレモンやシークヮーサーなどを加えて風味を変えることで、飽きずに水分補給できるのでオススメです。おいしく夏を乗り切りましょう。

問5  夜は熱中症の心配はしなくていいですか? 

 実は夏の熱中症の約4割は夜間に発症していると言われます。理由は主に2点あります。
 1つは、昼間に壁や天井が暖められ、蓄えられた熱が夜に放射熱となって室温が上昇するためです。2つ目は、就寝中は水分が補給されず汗として排出されるだけなので脱水状態になりやすいためです。
 さらに就寝中は症状を自覚しにくいため、重篤な状態に陥る場合があります。日中だけでなく、夜間や就寝中の熱中症対策も非常に重要です。
 具体的な対策としては、室内の温度を下げるために、夜間でも無理せずエアコンや扇風機を使いましょう。人が快適に眠るには、温度26度以下、湿度50~60%の環境が良いとされています。この環境を保つためには、エアコンがあるご家庭では扇風機よりもエアコンをお勧めします。また夜間の脱水を防ぐために、入眠時と起床時にそれぞれコップ1杯の水を飲みましょう。

◇最後に

 石けんによる手洗いやアルコールによる消毒など、最近は特に手指衛生を心がけている方が多いと思います。この夏も引き続き継続しましょう。手指衛生は新型コロナ対策として有効なだけでなく、食中毒を含むすべての感染症対策の基本です。
 熱中症とコロナ感染を防ぎ、元気に夏を乗り切りましょう!


【マスクと熱中症】

 飛沫の拡散を防ぐため、マスク着用が勧められています。マスクを着用すると口元の温度が3度ほど上がり、マスクの内側に熱がこもって体感温度が上がります。また呼吸数や心拍数が増えて、熱中症になるリスクが高まります。
 さらにマスクをしていると、のどの渇きを感じにくく、適切な水分補給を怠ってしまうことも考えられます。
 いつも以上に水分補給を心がけ、周囲の人と十分な距離(2m以上)が確保できる場所ではマスクを外しましょう。外出が長引いた際には、周囲の人との距離をとった上でマスクを外して休憩することも必要です。

【換気と熱中症】

 コロナ感染予防のために部屋の換気が推奨されています(1時間に10分ほど)。実は一般的な家庭用エアコンは空気を循環させるだけで換気はしていません。
 電気代は気になりますが、こまめに窓を開けたり換気扇を使いましょう。換気の際にはエアコンの設定温度を少し高くして、電源は切らないことです。
 窓の開け方は、部屋の対角線上に空気の通り道をつくるのが理想です。窓が1つしかない場合、窓を開けた上で扇風機を外に向けて回すと部屋の空気を排出できます。

いつでも元気 2020.8 No.345