心をつづって
あやまりたいけど
あやまるのがこわい
四年生の教室。一人一人がそれぞれの十年を生きてきて、さまざまな家族関係の交差する家から学校へやって来る。いつも機嫌良く過ごせるわけではない。みおが、あやかのことを言いに来て、作文にもそのことを書いた日。あやかもみおのことを書いていた。
あやかにむかついた日 みお
昨日の朝休みに、あやかたちと鬼ごっこをしていました。あやかと私が鬼で、あやかが鬼からはずれたら、私はあやかをタッチしました。するとあやかは、「え~。」と言いました。私は、(しょうがないやん。)と思いました。そしたら、中かん休みと昼休みに、まおと私に、やつあたりしてきました。私とまおは、すごく気が悪かったです。
そのあとに絵をかいていたら、じゃましてきたり、私のかいた絵を捨ててしまいました。そしてチャイムがなったら、私のセロテープを落としたりしました。すごーく気が悪いです。私は「先生に言わへん?あや、すごくウットシイし、ケンカもしてへんのにやつあたりしてくるし。」と言ったら、まおが、「うん。いいよー。いきなり絵かいてるじゃまするしいやや。」と言って、先生に言いに行きました。あやかがすごくうっとしい二日間です。
くやしくて悲しかった あやか
私はきのうの昼休みに、まおさんとみおさんと絵をかいていました。私はまおさんのことが好きなので、みおさんにまおさんをとられたように感じて、少しくやしかったので私は、みおさんがかいている絵を見て「何それ。」と、いやな言いかたをしてしまいました。するとまおさんが私に、「そんなことゆってあげんときや。」と言ったので、私はびっくりしました。
なぜかというと、まおさんは関係ないのに、みおさんの味方みたいな言い方をされたからです。私は(まおにきらわれてんのかな。)と、変なことを考えてしまいました。そんなことを考えたら、悲しくなってきて、なみだが出てきました。なみだが出てきたので、ずっとトイレで泣いていました。泣きやんで教室にもどったら、自分でかいた絵を全部ぐしゃぐしゃにして捨てました。そして、みおさんにわざとぶつかったり、みおさんのランドセルをけったりしてしまいました。
私は、きのうの夜、あやまったらゆるしてくれるかなぁと考えすぎて寝られませんでした。私はとても悪いことをしたと思っているので、あやまりにくいです。あやまりたいけど、あやまるのがこわいです。
二人の作文を一枚文集に載せて、クラス全員で読み合った。何があったのか、事実が少しずつ見えてくる。二人の気持ちも分かってくる。そして「私もそんなことがあった」と、子どもたちは自分の経験を語り始めた。少しずつ、もつれた糸がほどけていく。
得丸浩一(とくまる・こういち)
1957年生まれ。京都市の小学校教師。京都市教職員組合執行委員長、日本作文の会副委員長。
著書に『おもしろいけど 疲れる日々』(本の泉社)
いつでも元気 2020.4 No.342
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