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いつでも元気

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けんこう教室 骨粗しょう症

埼玉協同病院 整形外科・関節治療センター 遠藤 大輔

埼玉協同病院
整形外科・関節治療センター
遠藤 大輔

 私たちの骨は皮膚などと同じように新陳代謝をしています。新しい骨が作られて古い骨が吸収されることで、常に新しい骨が体を支えています。また、常に同じ骨の量が維持されるように制御されています。
 骨粗しょう症はこの代謝のバランスが崩れ、骨が作られる量よりも吸収される量が多くなってしまった結果、骨の量が少なくなって起こる病気です。
 骨粗しょう症は症状がなく進行することが多々あります。本人の気づかないうちに骨がもろくなっていき、ちょっとつまずいたりくしゃみをした程度で、大腿骨や腰椎などを骨折することもあります(骨脆弱性骨折)。骨折を繰り返したり、歩行困難に陥ることもあるため、高齢者は特に注意が必要です。
 骨粗しょう症と骨折の関係が、高血圧から脳出血に至る関係に似ているため、高齢者の骨折を最近は“骨卒中”と呼んでいます。

原因

 骨粗しょう症の原因は、大きく2つに分けられます(表1)。1つは加齢に伴って骨の代謝のバランスが悪くなることで起こる「原発性骨粗しょう症」です。もう1つは、何かしらの持病から骨粗しょう症を発症する「続発性骨粗しょう症」です。
 原発性骨粗しょう症は加齢や遺伝のほか、骨の代謝に必要なカルシウムやビタミンの摂取不足、運動不足などによって起こります。痩せすぎや喫煙、アルコールの多量摂取も原因になると言われています。女性の場合は、閉経による女性ホルモンの減少が骨の代謝に影響を与え、骨粗しょう症の原因となることがあります。
 続発性骨粗しょう症を起こす病気には、関節リウマチや副甲状腺機能亢進症があります。糖尿病や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腎機能障害、動脈硬化など、いわゆる生活習慣病も含まれています。

予防

 骨粗しょう症予防の基本は食事と運動です。特に日本人はカルシウムの摂取量が必要量に足りていない方が多く、意識的に摂取を心がけることが大事です。カルシウムは牛乳などの乳製品、豆腐や納豆などの大豆製品、骨ごと食べられる小魚、ひじき・わかめ・のりなどの海藻類、小松菜やちんげん菜などの緑黄色野菜に含まれます(表2)。
 ビタミンDやビタミンKも骨にとって重要な栄養素です。ビタミンDは魚類やキノコ類に多く含まれ(表3)、ビタミンKは緑黄色野菜や鶏肉、納豆などに多く含まれます(表4)。
 ビタミンDは日光を浴びることで活性化され、骨の代謝に役立つ状態になるので、日光浴も骨粗しょう症の予防には必要です。
 運動も大切です。骨は刺激を加えると、新しい骨を作る力が強くなることが知られています。特に足底に衝撃を加えることが大事と言われています。
 健康な方であれば、散歩など歩くことが刺激になります。長い距離を歩くのが難しい場合は、座った状態でつま先を立ててかかとを浮かせ、地面に落とすような運動をすることで刺激を加えることができます。また、下肢の筋力を維持することは転倒予防にもつながり、骨折のリスクを減らすことができます。

診断

 骨粗しょう症の診断には問診に加え、骨密度測定検査やレントゲン検査、血液検査などを用います。
 問診では過去の骨折や内科的な病気の有無、現在使っている薬の履歴、女性であれば閉経の時期などを伺います。骨密度測定検査にはいくつかの方法があり、病院によってさまざまです。血液検査では先ほどお話しした内科的な病気に関わる検査を行ったり、骨の形成と吸収のマーカーを測定したりします。

治療

 骨粗しょう症治療の最終目標は、骨脆弱性骨折を予防することです。
 すでに骨脆弱性骨折をしたことがある方は、すぐに骨粗しょう症治療の対象になります。そのほか骨密度の値が低かったり、WHO(世界保健機関)が開発した「骨脆弱性骨折リスク評価ツール(FRAX)」で、10年以内の骨折リスクが15%を超える方などが対象になります。FRAXについてはインターネットでもご覧いただけます。
 骨粗しょう症の治療は薬物療法が中心です。骨脆弱性骨折に対する予防効果が認められている薬はいくつかありますが、以下の4つに分類されます。
(1)女性ホルモン薬
 閉経後に骨粗しょう症になった女性に使用されます。閉経によって減少した女性ホルモンを補充することで、骨密度を上昇させる治療です。ただし純粋な女性ホルモンでは血栓や女性器悪性腫瘍のリスクが高いため、これらの副作用が起こる可能性を抑えた薬を使います。
(2)骨吸収抑制薬
 骨粗しょう症は骨の形成より吸収される量のほうが多くなっているために、骨密度が低下します。薬によって骨の吸収を抑制することで、骨密度を上昇させる効果が期待できます。毎日飲む薬から1カ月に1度の内服や、1カ月に1度の点滴、6カ月ごとの皮下注射などさまざまです。
(3)副甲状腺ホルモン薬
 比較的最近になって登場した薬です。骨吸収抑制薬とは反対に、骨の形成を促進することで骨密度を上昇させる薬です。
(4)抗スクレロスチン抗体製剤
 最近発売された薬です。骨の代謝に関係するたんぱく質の働きを抑え込むことで効果を発揮します。骨の形成と吸収の両方に働きかける薬で、注目されています。

最後に

 日本人の平均寿命は世界一長く、男性は81・0歳、女性は87・1歳です(2016年)。しかし健康寿命となると、男性72・1歳、女性74・8歳と、男性で8・9年、女性では12・3年分の差が生じています。
 この差の原因の1つとして骨折があげられており、骨粗しょう症の予防や治療によって健康寿命を延ばすことができると考えられています。今回のお話を参考に、元気に長生きして楽しい人生を送っていただければと思います。

いつでも元気 2020.1 No.339