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いつでも元気

いつでも元気

心をつづって

楽しみにしていたおふろの時間

 転任して迎えた四月、始業式での担任発表。二クラスとも担任が代わった六年生は特にざわついていた。多少は子どもを知っている二組の担任が「集合」の号令をかけると、ゆっくりではあるが六年生が集まってくる。景太は大声でしゃべりまくり、集まろうとしない。
 二組の担任から「早く集まりなさい」と言われ、「オレ、先生の組とちゃうもん!」と険しい表情で言う。後日、引き継ぎ事務で来校した前任の校長が給食当番の景太とすれ違い、「景太くん、元気にしてるか?」と声をかけてくれた。景太は大声で「あんた誰? さわらんといて。はげがうつる!」と言う。
 修学旅行当日。行きの新幹線の車内で、「もう少し静かにしてもらえますか」と車掌から再三、注意を受けた。広島に到着、平和記念公園へ。「原爆の子の像」前での集会は、司会の声も歌声も小さく盛り上がらない。しかし平和記念資料館に入った子どもたちは、多くの展示物を熱心に見ていた。
 早く出ようとする子は一人もおらず、予定時間を少しオーバーする。その後の平和記念公園内のグループ行動でも、精力的に歩き回っていた。写真を撮っていた私に、景太は「オレら全部回ったで」と誇らしげだった。
 宿に到着し、夕食、入浴。男子風呂の脱衣所にいると、あまりに中が騒がしい。洗い場の戸を開けると、バシャーと水をかけられ脱衣所も水浸しになった。すぐに雑巾を持ってきて床を拭く。

宿のおふろで 直人
 四月十九日水曜日、京都から電車などを乗りつぎ、広島から船で十分ぐらいで宮島についた。とまる宿につくと、入所式をして、宿の中に入ると、まず部屋でふろの用いをして、ちょっとだけあそんで、夕食をとりにいくと、ばんごはんはけっこうごうかで味もよかった。
 そして、もっとも楽しみにしていたおふろの時間になった。なぜかというと吉本君と田丸君と西川君で、『水をかけられてどんだけたえられるか』ゲームをする約束だったからです。
 おふろに入ると、一番にチームをきめました。チームは、ぼくと吉本君で、田丸君と西川君でした。ぼくがはじめようとした時、吉本君がそっこー仲まわれをしてきたからびっくりしました。でもさいしゅうてきに、決ちゃくはつかず、おわってしまいました。つぎ、『水をかけられてどんだけたえられるか』ゲームをするとしたら勝ちたいです。

 「修学旅行で一番心に残ったことを書こう」と言って、クラスの直人が書いた作文である。男子風呂の水かけ騒動には、景太もいたにちがいない。もちろん、広島の平和記念資料館のことを書いた子も多かったし、学校へ帰ってからの全校朝会では、その子たちが作文を発表したのだが。
 その日の夜は、久しぶりの徹夜となった。


得丸浩一(とくまる・こういち)
1957年生まれ。京都市の小学校教師。京都市教職員組合執行委員長、日本作文の会副委員長。
著書に『おもしろいけど 疲れる日々』(本の泉社)

いつでも元気 2020.1 No.339