心をつづって
得丸浩一
自分の気持ちがかわってきたんだと思う
あかねの両親は、あかねが五年生のときの二月に離婚した。六年生の学級開き。ギターで簡単な歌を歌ったが、あかねは机に突っ伏したままこちらを向こうともしなかった。ボランティアで教室に入った学生も含め、男性に対する拒否とも取れる行動が目立った。
五年生は二組あったが、担任はいずれも六年生に持ち上がらなかった。騒々しい教室で、あかねの周りのバリアが少しずつ薄くなっていった。
その頃書かれた、あかねの作文の一部を紹介する。
生活面では、ひっこしてカラお母さんに、洗たく物とか、家の仕事をまかされることが少なくなって、宿題とかもゆっくりできるカラ、前の家のときよりか、すごくらくになった。
夏休み前。まだ私との会話はぎこちなかったけれど、あかねは一学期のことをこうまとめた。
私が自分でダメだったなと思うところは授業中にしゃべってて、よく注意されたりしたところだと思う。
自分でがんばれたなぁと思うところは、勉強のことだと思う。最初分からなかったところも、分かるようになったし、あんまり勉強もイヤじゃなくなった。
自分がかわったなぁと思うところは、学校が一番楽しいところだと思うようになったこと。前までは、勉強はイヤやし、楽しくないから、早く学校が終わってほしいと思ってた。けど今は反対で、早く学校に行って、みんなとあそんだり、しゃべったりしたいなぁと思うようになった。勉強もイヤじゃないから家に帰っても宿題かゲームかメールしかしいひんし、つまんないと思うようになった。
こうゆうふうに思ったのははじめてやし、自分の気持ちがかわってきたんだと思う。
あかねは二学期から、ほとんど出さなかった日記を提出するようになった。
九月十四日
今日はたいへんだった。組体そうの練習で…。
十九人タワーで、手とかたがいたくなって、十人タワーでは手だけいためた…。だからシップはった。かたにはったら、だん×2あつくなってきて、やけてるみたいやった。
大変やけど、うんどう会ではせいこうさせたいし、これからも、もっとがんばっていきたい。
十一月九日
毎日×2駅伝の練習はつかれます。
でも、がんばっているヒトもいるので、迷惑はかけられないから、がんばってやってます。( でも、ホンマはイヤ)
今日は、休み時間にスクワットを、みんなでしりとりをしながら、先生も一緒にやりました。
おもしろかったです。
得丸浩一(とくまる・こういち)
1957年生まれ。京都市の小学校教師。京都市教職員組合執行委員長、日本作文の会副委員長。
著書に『おもしろいけど 疲れる日々』(本の泉社)
いつでも元気 2019.11 No.337
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