ガザで緊急医療支援
パレスチナ自治区にあるガザ地区で、非暴力の民衆デモをイスラエル軍が攻撃。半年で約2万人の死傷者が出ています。医療従事者やジャーナリストも標的にされる異常事態に抗議しつつ、日本国際ボランティアセンター(JVC)は緊急医療支援のための募金を呼びかけています。JVCパレスチナ事業担当の並木麻衣さんに聞きました。
約194万人が暮らすガザ地区は2007年から封鎖され、「世界最大の野外監獄」と呼ばれています。失業率は53%に上り、水の95%は汚染されて飲用に適さず、電気は1日5時間しか供給されません。
ガザ地区が封鎖された直接の原因は、06年の立法評議会選挙。与党だったファタハが汚職・腐敗の批判もあって敗れ、対イスラエル強硬派のハマースが過半数の議席を獲得。ところがハマースはイスラエルや欧米諸国からテロ組織と見なされているため海外からの援助が止められ、政情は不安定に。ハマースはガザ地区を実質支配し、イスラエルが「テロリストを抑えるため」と称して封鎖する事態になりました。
今年3月から毎週末、ガザ地区の人々が続けるデモは、イスラエルに故郷の土地を奪われた憤りに加え、「この封鎖と生活苦にもう耐えられない」という不満が爆発したものです。多くの若者が将来の夢を描けない状況の中で、「人間らしく生きさせろ」「黙って餓死するよりはまし」と生命の危険を冒してデモに参加しています。大多数が一般の市民や大学生で、ハマースやテロ組織とは関係ありません。
治療が追いつかず
それに対し、圧倒的な軍事力を誇るイスラエル軍は、非人道兵器として禁止されている蝶型爆弾※なども使ってデモを攻撃。けが人はガザ地区の病院に運び込まれますが、医療設備や医薬品も足りず、治療が追いつきません。手術で治せたはずの手足を切断せざるをえない状況に追い込まれた患者も多数います。
JVCに寄せられた募金は、非営利組織によって運営されているエル・ワファ病院で主に活用されます。別の病院には7月、北海道民医連の猫塚義夫医師(勤医協札幌病院)も支援に入り、手術や治療にあたりました。
ガザ地区の人々は、米国を後ろ盾にしたイスラエルの横暴に悔しい思いをしながら、「国際社会から見向きもされない」と孤立感を深めています。国際世論が関心を持つことで、情勢が少しでも良い方向に動くことを願っています。
※蝶型爆弾 着弾と同時に蝶のように開いて回転するため、人体に当たると骨や血管、神経を修復不可能なほどに切り裂く
〈緊急医療支援募金〉
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口座番号:00190-9-27495
加入者名:JVC東京事務所
※通信欄に「パレスチナ人道支援」とご記入ください
※「JVCウェブサイト」からも寄付できます
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[問い合わせ]Tel:03-3834-2388
いつでも元気 2018.11 No.325