• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

いつでも元気

いつでも元気

たかしん茶屋 
三重

文・奥平亜希子(編集部)  
写真・若橋一三

 三重県津市の高茶屋診療所に隣接する「元気センターたかぢゃや」では、カフェ「たかしん茶屋」が毎日オープン。誰でも参加できる「ドクターズカフェ」も大人気です。コンセプトは「出会いが嬉しい ホット一息 喜楽に集える憩いの場」です。

 1975年に開所した高茶屋診療所は、老朽化した建物を2016年にリニューアル。その際、敷地内にある「デイサービスなずな」と診療所の間に、「元気センターたかぢゃや」というコミュニティースペースをつくりました。
 その場所で17年5月から始まったのが「たかしん茶屋」です。地域の人が気軽に立ち寄れる“居場所”として、平日の午前10時半から午後1時半まで、みえ医療福祉生協の5つの支部が分担してカフェを開いています。
 組合員でセンター長の樋口尚子さんは「曜日を限定せずに『いつでも来てね』と言えるのがいいですよね。診療の待ち時間にお茶を飲みに来てもらったり、将棋を指したり、好きなように過ごしてもらっています。体操や絵手紙、習字やそば打ち、健康麻雀など、このセンターを使って班会も開いているので、毎日のように企画があるんです」と話します。
 なかでもコーラスは20人以上集まる人気企画。隣のデイサービスの利用者も、その楽しげな雰囲気に誘われて一緒に歌うこともあるとか。

研修医も参加する「ドクターズカフェ」

 今年2月から、高茶屋診療所の医師が持ち回りで参加する「ドクターズカフェ」も始まりました(毎週月曜日午後1時半から2時半)。誰でも参加でき、医師と気軽に話ができるとあって、週1回のこの日を楽しみにしている人も多くいます。実はこのドクターズカフェ、「やってみよう」と声を挙げたのは、高茶屋診療所の宮﨑景所長でした。
 「診察室では来院してくださる患者さんにしか出会えない。家庭医は地域を見て、診療所に何が求められているのかを掴む必要がある。情報を得るための“場”があったらいいなと思いました」と宮﨑所長。
 三重家庭医療センターとして、研修医や医学生、看護学生が研修に訪れる高茶屋診療所。知識や技術以外にも、地域医療を担う診療所ならではの“地域の声”を聞くことの大切さを、若い医療者に伝えていきたいという思いも込められています。

ドクターズカフェで司会を務める北尾さん(正面右)

ドクターズカフェで司会を務める北尾さん(正面右)

「楽しいから元気になれる」

 取材をした日の担当は宮﨑所長。会場に入ると「わあ!」と歓声があがり拍手で迎えられました。「耳鳴りはどのタイミングで受診すればいいのか」「スマホなどの電磁波が子どもに与える影響は」「先生の趣味は」などさまざまな質問が。司会を務める組合員の北尾厚子さんのリードもあり、終始和やかな雰囲気です。
 以前は研修医の研修期間が終わると、担当医が代わることで患者が離れてしまうこともありました。今はドクターズカフェで顔を合わせる機会があるため、つながりができ信頼関係も生まれます。
 毎日の「たかしん茶屋」も、毎週の「ドクターズカフェ」も組合員が運営。企画も多いため「大変なのでは…」と伺うと、北尾さんは「楽しいことをやっていますから。みんな元気になれるんですよ」と笑顔。交通手段の確保や、助け合い活動へのつながりなど課題もあると言いますが、ここに集う人たちはみなさん楽しそう。
 取材中「研修医の先生が、いつか戻ってきてくれたら」という声もありました。「医師」と「患者」の関係にとどまらず、このまちに暮らす仲間として、共に地域医療を育む高茶屋地域の挑戦が、力強く動き出しています。

「運営する私たちが気持ちに余裕を持っていきたいですね」と笑顔の樋口さん

「運営する私たちが気持ちに余裕を持っていきたいですね」と笑顔の樋口さん

いつでも元気 2018.8 No.322