昔ばなし苦労話自慢話
「川遊び」
回想のヒント
裸で川遊びをする子どもたち。
後列のお姉ちゃんの中に一人だけ、あるものを着ている子がいます。それは何かな?
上の句で思い出す
ある介護施設に、ほとんどしゃべらないお爺さんがいました。施設の職員はあの手この手で会話を試みますが、なかなかうまくいきません。ある時、私が耳元で「ここはお国を何百里~」とささやいてみたら、「離れて遠き満州の」と低い声が返ってきました。これはしめたと思い「赤い夕日に照らされて~」と歌うと、また次の歌詞が。手を握りながら二人で合唱し、すっかり仲良しになりました。
軍歌だけでなく、昔の演歌の出だしやサビの部分も試してみましょう。春日八郎の『お富さん』なら「死んだはずだよ~」、三橋美智也の『リンゴ村から』なら「覚えているかい~」など。70歳を超えていれば、青春の記憶がよみがえるはずです。
女性なら百人一首もお勧め。「ちぎりきな~」「わが袖は~」と問いかけてみれば、きっと女学校時代を思い出すはず。でも、小野小町の歌は要注意ですよ。「花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身よにふる 眺めせしまに」なんて歌も。そんな時は相手の手をそっと握り、「美しい手ですね」との褒め言葉をお忘れなく。
鈴木正典
島根・出雲市民病院麻酔科医。1947年、福井県生まれ。鳥取大学医学部卒。著書に『認知症予防のための回想法』(日本看護協会出版会)、『想い出かたり』(かもがわ出版)など
いつでも元気 2018.8 No.322
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