まちのチカラ・特別編
横浜ベイエリア 進化し続ける国際都市
文・写真 牧野佳奈子(フォトライター)
ペリー来航から165年。
日本の国際化を先導してきた横浜は、今も新しい文化を生みながら発展し続けています。
今回は特別編。「第14回全日本民医連共同組織活動交流集会in神奈川」(9月9~10日)の会場となる、横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)周辺と、横浜ベイエリアをご紹介します。
再開発が進むみなとみらい
横浜といえば、1983年から再開発が進む「みなとみらい21」地区。横浜駅周辺から関内・伊勢佐木町にかけて、パシフィコ横浜やよこはまコスモワールド、横浜ランドマークタワー、横浜赤レンガ倉庫など様々な施設が立ち並んでいます。この10年でも20以上のビルや施設がオープン。さらに2022年までに新たな大型コンサート施設やリゾートホテルも開業する予定です。
これだけ観光スポットが多いと、「どこから回ればいいか迷ってしまう…」という人も多いはず。そこで「よこはま健康友の会」の事務局長を務める岸本美保さんがオススメの場所を案内してくれました。「昔は横浜といえば山下公園・マリンタワー・氷川丸だけで、みなとみらい周辺は本当に何もなかったんですよ。でも文明を開いた国際港だけあって、外国人が行き来するオシャレなイメージは今も昔も変わりませんね」と岸本さん。
向かった先は、7つの西洋館が点在する山手地区。海沿いの山下公園から約15分歩いた先の丘の上にあり、地元の人たちにとっても格好のデートスポットです。
異国情緒たっぷり横浜山手西洋館
1867年に外国人居留地に定められた山手地区には、大正から昭和初期にかけて外国人が住む洋館が数多く建てられました。無料公開されている7つの西洋館は、個人邸や総領事公邸などを横浜市が買い取り、修復したもの。室内展示だけでなく、喫茶を併設している洋館もあるので、異国情緒を味わいながらゆっくり巡るのがオススメです。
岸本さんと一緒に訪れたのは、元町・中華街駅から徒歩8分、元町公園の一角に静かに佇むエリスマン邸。1階に併設されている「しょうゆ・きゃふぇ」の生プリンが最近話題を集めているというので食べてみることに。低温殺菌牛乳で作られた白いムースの上に、自分で卵黄を落として混ぜ、カラメルソースをかけて食べるという逸品です。先に口に含んだ岸本さんが一言「あ、確かにプリンですね」。ムースと卵黄の絡め具合によって味が変わる、実に濃厚な新感覚スイーツでした。
エリスマン邸から東に7分ほど歩いたところにある「港の見える丘公園」も、ゆっくり散歩するにはオススメの場所。すぐ近くにインターナショナルスクールがあるため、登下校の時間帯にはさまざまな国の子どもたちが行き交います。
帰りは静かな雰囲気が漂う外国人墓地を眺めながら、坂を下って元町商店街へ。創業130年の歴史がある「ウチキパン」や、1970年代後半に流行した「ハマトラ(横浜トラディショナルスタイルの略)」と呼ばれるファッションのブランド店など、昔ながらの良店でショッピングが楽しめます。特に女性にとっては満足度の高い散策コースではないでしょうか。
共存共栄の横浜中華街
元町商店街から歩いて5分、約600店がひしめく横浜中華街に行きました。中華料理はもちろん、雑貨、食材、軽食、土産物など多種多様な店がズラリ。ここ数年は占いの店が増えているということで、手相の看板もよく目に付きます。そこかしこで中国語が飛び交い、雰囲気はもはや中国そのもの。
今や世界最大級の規模を誇る横浜中華街ですが、その発展の歴史は、アメリカやシンガポールなど各国にあるチャイナタウンとは異なります。海外では華僑の生活の場として賑わっていることが多いのに比べ、横浜では戦後、横浜市と商工会議所が中心となり、特色ある街づくりを推進。中華系住民が賛同・協力し、観光振興を目的に整備が進められました。
「先代が土台を築いてくれたお陰で、私たちは国籍やルーツを問わず、うまく共存共栄できていると思います」と話すのは、横浜中華街発展会協同組合の竹本理華さん。朝の清掃活動をはじめ、日本人と中国人が協力し合う光景は日常茶飯事とのこと。今は日本生まれの2世や3世が増え、ますます国籍の区別はなくなってきているそうです。
おいしい中華料理を堪能した後は、色鮮やかな道教寺院・関帝廟への参拝も忘れずに。三国志でも知られている武将・関羽を祀っており、異国で生きる華僑たちの心の拠り所として約150年間守られています。
横浜ならではの発展を遂げている横浜中華街で、アジアのエネルギーを感じてください。
オススメ横浜B級グルメ
ありとあらゆる料理が味わえる横浜で、オススメ料理を選ぶのは極めて難しいこと。そこで、独自性と話題性があり、かつリーズナブルなB級グルメを2つご紹介します。
まずは横浜中華街でひそかな人気を誇る中華粥の店、謝甜記貳号店。朝8時半の開店時から満席になり、週末には長蛇の列ができるほど。大きな丼で食べる本場中国のお粥は、ボリュームも栄養もバッチリです。お店のチラシによると、粥食には「肌つやが良くなる」「寿命を延ばす」「風邪をひかない」など10の利益があるとのこと。中国語で「粥有十利」というそうです。
もう一つは、神奈川発祥の「サンマーメン」。サンマーとは、「生=新鮮でシャキシャキした食感」+「馬=上にのせる」という意味の広東語で、野菜や肉をあんかけにしてラーメンにのせたもの。戦前は調理人のまかない料理だったそうですが、戦後サンマーメンと呼ばれるように。
元祖といわれている店の一つ玉泉亭は、伊勢佐木長者町駅から徒歩約8分。二代目店主の井田辰雄さんが、日本人の舌に合わせ、中華の脂っこい味付けを緩和するためにあんかけ風にしたのだそうです。極細麺にしっかり絡んで食べやすく、やさしい味わいでした。
その他、1876年に日本で初めて作られた“あいすくりん”を再現した「横濱馬車道あいす」、サイコロ状の牛肉を鉄鍋で煮込む「牛鍋」、ホテルニューグランドの総料理長が考案した「ナポリタン」など、横浜発祥のグルメはよりどりみどり。さすが文明開化の地だけあります。
今や横浜を訪れる観光客は、年間3600万人以上。オシャレをして浜風に吹かれるもよし、ロマンチックな夜景に見惚れるもよし、思い思いの横浜を満喫してください。
■次回は鹿児島県南大隅町です
いつでも元気 2018.6 No.320