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いつでも元気

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特集 守りたい9条 対談 東京新聞記者・大田病院看護師

 森友学園問題で政権が揺れる一方、自民党は9条改憲条文案の方向性を決めるなど着々と準備を進めています。
 全日本民医連は2月の第43回定期総会で、「3000万人統一署名で改憲を止めよう」との活動方針を決めました。
 今号の特集は連載「守りたい9条」の拡大版。憲法と子どもの未来について、子育て中の新聞記者と看護師が対談しました。
 ほかに視覚障害者の点字署名にかける思いや、青森から民医連の薬局職員の署名活動を紹介します。

青森・ファルマ弘前薬局の待合室

青森・ファルマ弘前薬局の待合室

聞き手・新井健治(編集部) 写真・亀井正樹

語ろう憲法と子どもの未来

 5月3日は憲法記念日、5日はこどもの日です。
 憲法と子どもの未来について、東京新聞社会部記者の望月衣塑子さんと、病棟看護師の宮脇さおりさんが対談しました。
 望月さんは森友学園問題をはじめ記者会見で厳しく政権を追及。
 宮脇さんは無料低額診療をいち早く始めた大田病院(東京)に勤務しています。

望月衣塑子(東京新聞記者) 対談 宮脇さおり(大田病院看護師)

望月衣塑子(東京新聞記者) 対談 宮脇さおり(大田病院看護師)

産休、育休で社会に取り残され感

―望月さんは6歳と4歳、宮脇さんは4歳と2歳と、ともに2人の子どもを育てています。お二人とも激務の専門職。子育てと仕事の両立で苦労したことは?
宮脇 産休、育休を取ったことで、社会に取り残された感がすごくありました。ブランクを埋めたいと必死に夜勤もこなしましたが、周囲から「子どもがかわいそう」と言われ…。看護師から遠のきたいと思ったことさえありました。
望月 子どもが2歳くらいまではいきなり発熱するなど病気が多く、仕事に集中できないことが辛かったですね。年齢的にも仕事のおもしろさが分かってきて、ばりばり働きたいと思っていた時期でしたから。
宮脇 そうなんですよね。「やるからには、きちんと仕事をしたい」と思っても、思うようにはいかない。
望月 子どもは私たちと違うリズムで生きていますから。宮脇さんは1人目と2人目とでは、育児が違いませんでしたか?
宮脇 2人目の時は、あらかじめ子どもの成長段階が分かっていたので余裕がありました。最初の子の時は、なかなか達成感がなかったですね。

「命をあきらめている」患者さんがたくさんいる 宮脇

事実を通して見えてきたこと

―お子さんができて、世の中に対する見方が変わりましたか。
宮脇 自分より大切な存在ができたことで、日本が平和なままであってほしいと痛切に感じます。
望月 今、日本がアメリカと一体化して海外で戦う国に変わろうとしている。自分の子どもは、平和な時代を生きられないかもしれないという焦りを感じます。
―もともと、憲法や平和については関心があったのでしょうか?
宮脇 民医連に就職するまで憲法は“空気”みたいなものだった。でも職場で憲法学習をしてから、子どもたちが安心して暮らせる未来をつくるために、まずは憲法を知ることが大事と思うようになりました。
望月 こう見えて、私もかつてはノンポリ。取材を通して、憲法9条で守られてきた平和国家のあり方が大きく変えられるかもしれない潮目にいることを実感しています。
―望月さんは首相官邸の記者会見で、菅官房長官に食い下がった気骨のある記者です。
望月 経済部の記者時代に日本政府の武器輸出解禁の動きを取材しました。武器が売れれば、確かに経済は潤うかもしれない。いい服を着て、おいしいご飯を食べて、そんな生活の一方で中東ではたくさんの子どもたちが空爆で殺される。曲がりなりにも平和国家だった日本が、“禁じ手”に手を染めようとしている。自民党はなぜ、執拗に憲法を変えようとするのか。その背景に経済界の要求があることが、事実を通して見えてきました。
―宮脇さんも、患者の実態を通して見えてきたことがあると思います。
宮脇 大田病院には泥だらけの患者さんや、ホームレスの患者さんがたくさん搬送されます。最初はびっくりしましたが、今は慣れました。前に勤務していた病院では、患者さんの入院費まで考えたことはなかった。「会計は事務の仕事」だと。大田病院に入職し、初めて「お金がなくて受診できない人が、こんなにたくさんいるんだ」と知りました。
望月 そういう患者さんは増えているのですか?
宮脇 「経済的な理由で受診ができない人をなくそう」という方針の病院なので、生活に困窮した患者さんが多いです。「借金があって受診できず、救急搬送された時には手遅れだった」という患者さんを通して、どうしたらこうした事例をなくすことができるのか、職員チームで検討しています。

「助けて」と言えない人を助けるのが政治の役割 望月

弱者に共感できない政治家の感覚

望月 政府はトランプ大統領の要求に応じて、高額な武器を“爆買い”しています。新たなミサイル防衛システム「イージス・アショア」は、当初の860億円が次第に値上がりし今や1500億円とも言われています。“アメリカのいいなり”の一方で、生活保護費を年間160億円も削減しようとしている。削減の根拠として、わずか0・4%の不正受給を取り上げたのも問題です。
宮脇 一部の人を取り上げて、大多数の本当に苦しんでいる人に目を向けないのはおかしい。がんの治療も高額で、治療を躊躇する患者さんがたくさんいます。「命をあきらめている」のです。
望月 「助けて」と言えない人を助けるのが政治の役割ではないですか。軍備を拡大するより、弱者に対する優しさが必要。今の政治家の弱者に共感できない感覚がどうしても許せない。
宮脇 苦しんでいる人がたくさんいるのに、必要な医療や介護の予算を削りながら、軍事費が増えていることに心が痛みます。
―自民党は近々、9条改憲案を決めて国会に提出。今年中にも改憲発議をして、国民投票にもっていこうと目論んでいます。
望月 9条を変えて自衛隊を明記したら、米軍と一体化して海外で戦争する軍隊になる。今は災害救援で活躍する自衛隊ですが、その性格が大きく変わることになるでしょう。
宮脇 これまでは、政治のことをあまり考えなくても生活できました。社会が大きく変わるなか、未来を見極めるためにも、さまざまな情報を得て判断しなければならない。今日はたくさんのことを学べました。
望月 人類の英知の結晶が憲法9条。世界では紛争が絶えませんが、だからこそ9条の理想を高く掲げ続けることが必要だと思います。


宮脇さおり
福島県本宮市出身。福島の民間病院を経て、2014年に大田病院入職。循環器病棟看護師。病院の社会保障委員会に所属

望月衣塑子
2000年、東京新聞入社。社会部東京地検特捜部担当。著書に『THE独裁者 国難を呼ぶ男!安倍晋三』(KKベストセラーズ)、『新聞記者』『武器輸出と日本企業』(ともに角川新書)など

いつでも元気 2018.5 No.319