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いつでも元気

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けんこう教室 
まばたきできていますか? 眼瞼けいれん

岩手・川久保病院
眼科科長
及川拓

 多くの人は日常生活を送る上で、まぶた(眼瞼)やまばたきを特別意識することはないと思います。しかし、まぶたには多彩な病態・病気が存在します。その中には、一目で確認できる病気もあれば、詳しく問診と観察をしないと分からない病気もあります。
 今回紹介する「眼瞼けいれん」は、症状や所見そのものは、まぶたとその周辺に現れます。しかし、まぶたそのものの病気ではないため、まさに問診と観察が重要な病気です。

眼瞼けいれんとは

 近年、テレビ番組でも眼瞼けいれんを取り扱うようになりました。しかし、一般にはまだなじみがなく、「聞いたことがない」という人も多いのではないでしょうか。
 「けいれん」と言えば、「ぴくぴくする」というのが一般的なイメージです。普段の眼科診療でも、「まぶたがけいれんする」「まぶたがぴくぴくする」という症状の患者さんを見かけますが、この場合のほとんどは眼瞼けいれんではありません。
 眼瞼けいれんは、重症化するとまぶたの開閉に関わる筋肉(主に眼輪筋)が持続的で過度な収縮を起こします。まぶたを自由に開け閉めしにくくなり、「目の開け閉めのスイッチが故障した状態」となります。時には口や舌、喉や首にまでけいれんが及び、これを「メイジュ症候群」と呼びます。
 40歳以降に発症しやすく、女性は男性に比べて2~2・5倍の患者がいます。日本だけでも30~50万人の患者がいると推定されています。

まばたきの役割

 まばたきはまぶたの大事な機能の1つ。健康な成人では、1分間に12~20回くらい繰り返しています。
 まばたきの役割は、異物の侵入を防いだり、涙を目の表面に行き渡らせたり排泄させたりして、目の乾燥を防止するなど、目の機能を保つことにあります。

原因

 発症の原因は、まばたきをコントロールしている脳です。大脳基底核や視床、脳幹などの機能低下や活動異常が原因だという説がありますが、詳細はいまだ明らかになっていません。
 パーキンソン病患者にも眼瞼けいれんの症状が現れることがあり、関連性が示唆されています。
 また、薬物との関連も指摘されています。抗不安薬や抗うつ薬などの向精神薬、睡眠導入薬を長期に服用している場合は、40歳未満でも発症することがあります。

症状

 眼瞼けいれんは、通常両目に起こりますが、まれに左右差があります。初期の自覚症状は、「まぶしい」「まばたきが多い」「目が乾く」などです()。
 症状が進行すると、まぶたが頻繁にけいれんを起こします。そのため、目が開けづらくなり、「目が自然に閉じる」ようになります。
さらに進行すると、自分ではまぶたを開けることができず、歩行中に人や物にぶつかったりします。また車の運転中に、電柱や停車中の車に衝突してしまうこともあります。
 ストレスや緊張の程度によって、症状が変動することもあり、「普段は目が開けられないのに、診察室では問題無い」ということも少なくありません。
 これらの症状を自覚したり、気になることがあれば、早いうちに眼科を受診してください。

検査と診断

 眼瞼けいれんの症状は、表のように多彩です。「目が自然に閉じてしまう」「手指を使わないとまぶたが開けられない」という訴えであれば、容易に診断できます。
 しかし、初期に多い「目が乾く」「まぶしい」「目がうっとうしい」「ごろごろする」などの症状を訴えた場合、ドライアイと混同しやすいのです。そのため、どういう状況でそのように訴えているのか、患者さんの言葉を掘り下げて病態や病状を考える必要があります。
 このように問診から眼瞼けいれんが疑われる場合、けいれんを誘発させる瞬目テストを行います。テストは次の3種類です。

●軽瞬テスト
 軽いまばたきをリズムに合わせ、テンポ良く繰り返します。眉毛まで動いてしまう強いまばたきになったり、リズムに合わせられず、早くなったり遅くなったり、途中でできなくなると眼瞼けいれんを疑います。
●速瞬テスト
 できるだけ早いまばたきを10~30秒間続けてもらいます。素早いまばたきができなかったり、まばたきの途中で他の顔面の筋肉に不規則な収縮や、強い収縮を認めたりすると眼瞼けいれんを疑います。
●強瞬テスト
 強く目を閉じた後、素早く目を開く動作を繰り返します。途中でまぶたが開けられなくなったり、目の周囲の顔面筋に強い収縮が見られると眼瞼けいれんを疑います。

 問診とこれらのテスト結果を合わせ、総合的に診断します。ご自分でも簡単にチェックできる重症度判定()もあります。ぜひお試しください。


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ドライアイ

 ドライアイの症状は「目が乾く」「ごろごろする」など、眼瞼けいれんの症状と非常によく似ています。しかも推定患者数は国内で2000万人以上と、眼瞼けいれんの40倍!
 診療現場で眼瞼けいれんが見落とされやすい原因の1つです。

治療について

 眼瞼けいれんの主な治療法は、改善率9割弱と有効性の高いボツリヌス毒素療法です。まぶたの周り6カ所(両目で12カ所)に注射をする治療法です。ただし、効果持続期間は2~4カ月程度なので、数カ月ごとの通院治療が必要です。
 副作用として、薬が効き過ぎると上まぶたが下がったり、下まぶたが閉じにくくなることがありますが、2~4カ月くらいで消失します。
 他に、患者さんの多くがまぶしさを訴えることから、遮光眼鏡(サングラスなどの色付きの眼鏡)やクラッチ眼鏡を用いることがあります。これを装用することで、症状が改善します。

ボツリヌス毒素

 けいれんの治療に使うボツリヌス菌は、食中毒を起こすことで有名な病原微生物です。ボツリヌス菌が産生する毒素はA~G型までの7種類。このうち、A型毒素のみを抽出した「ボトックス」という製品を治療に使用します。
 ボツリヌス毒素の保有・使用・管理に関しては、法律で厳しく定められています。治療にあたる医師は、治療を行う前にあらかじめ講習セミナーを受け、専門の学会が認定する修了証が必要です。
 そのため、眼科の中でも専門性が高く、ボツリヌス毒素治療を積極的に行っている眼科施設が少ない地域もあります。

クラッチ眼鏡

 眉毛付近のまぶたを強く押さえると、まぶたが開きやすくなる“知覚トリック”と呼ばれる現象をご存じですか? これを応用したものが、クラッチ眼鏡(クラッチグラス)です。  通常の眼鏡にシリコンカバーをつけたワイヤーを、まぶたを押し上げるような角度で取り付けたもので、眼瞼下垂の対策などに使われます。一部の眼鏡店で販売されています。

いつでも元気 2018.4 No.318