新ほっと介護
起き上がりと移乗の介助
全日本民医連介護職委員会委員/石川勤労者医療協会 おたっしゃホーム城北
島西真弓
介護のさまざまな場面で欠かせない動作が「移動」です。今回はベッドからの起き上がりと、車いすへの移乗のポイントを図で解説します。
ベッドからの起き上がり
1 ひざを立てる
寝返りがしやすくなるように、ひざを立てる。
2 横向きにする
介助される人の肩とひざに手をあて、起き上がる方向に横向きにする。この時、介助される人に腕を組んでもらうと、重心の移動がしやすくなる。
3 足をベッドから下ろす
体は寝かせたまま、腕を介助される人の首の下から差し入れ、もう片方の手でひざの辺りを持ち、両足をベッドから下ろす。
4 体を手前に引いて起こす
介助される人のおしりを軸にして頭が弧を描くようなイメージで。
5 体を安定させる
転倒する危険があるので、手を体に添えたまま様子を見る。
◎ポイント
体を横向きにしないまま起こすと、介助者の腕や腰に大きな負担がかかります。体の大きさにかかわらず、1から5の順序で安全に起こしてください。
介助のときに大切なのは、身体の状態を良く知ることです。動かしにくい部分や、痛みなどを感じるところがあるかもしれないので、始める前に本人と目を合わせ「体の調子はいかがですか」と声をかけることもポイントです。
ベッドから車いすへの移乗
1 車いすを準備
車いすはベッドの側面に約30度の角度で設置。必ずブレーキをかけ、足置きを上げておく。
2 立ちやすい位置に
介助される人の足が床に着くように、浅く座ってもらう。
3 体重を足に移す
介助者は両足を前後に大きく開いて腰を落とし、両腕を腰に回す。介助される人の両腕を、介助者の肩に回してもらう。介助者は引くように体重を足に移動させる。
4 体の向きを変えゆっくり腰を下ろす
介助者は、車いすに近い方の足を軸にして、車いすの方向へ介助される人の体を向ける。
脇を支えながらゆっくりと、車いすに移乗する。ブレーキをかけていても、車いすに体がぶつかって動いてしまうことがあるので、注意を払う。
◎ポイント
介助は、「身体を起こす」、「支える」といった体重のかかる動作の繰り返しで、見た目以上に負担がかかります。介助される人の安全を守るためにも、介助者の体も痛めないように心掛けてください。
また、介助される人によってできること・できないことは異なります。身体機能の維持向上のためにも、できる範囲のことは本人の力でしてもらえるようにサポートすることが大切です。
体の状態、生活環境に合わせて、さまざまな介護用具も利用することができます。適切な利用ができるよう、介護事業所、ケアマネジャーなどに相談してください。
立ち上がりのイメージ
お辞儀をするように頭を下げると、体の重心がおしりから足へと移り、少ない力で立ち上がることができます。体が不安定な場合は手すりや壁につかまりながら立ちましょう。いきなり真上に立ち上がろうとすると膝や腰に負担がかかります。
ベッドだけでなく、いすやトイレから立ち上がる時などにも、この動きをイメージしてください。
いつでも元気 2018.2 No.316