新ほっと介護
車いすの介助
全日本民医連介護職委員会委員/北海道・道東勤医協ヘルパーステーションすこやか
伊東義光(介護福祉士)
一見簡単そうに見える車いすの介助も、正しい方法を知らないと、転倒や介助する人もけがをする危険があります。今回は車いすの使い方や注意点を紹介します。
【操作のポイント】
(1) 移動時以外はブレーキをかける
立つ、座る時にブレーキをかけていないと転倒などの事故につながります。また、地面に傾斜がある場合、動き出してしまうこともあります。かけ忘れが心配な方には自動でブレーキがかかる車いすもあります。
(2) 「少しゆっくり」を心掛ける
車いすに座っていると視線が低いので、乗っている人は立って歩く以上に速く感じます。道路では振動の衝撃も感じるので、少しゆっくり歩きましょう。
車いすに乗っている人からは介助者が見えないため、不安です。小まめに声をかけるようにしてください。
(3) 坂道や砂利道は後ろ向き
上りは前向きで進みます。下り坂では前向きで進むと、乗っている人はそのまま転がり落ちる感覚になるため、基本は後ろ向きで進みます。介助者用のブレーキがついている場合は、ブレーキを少し掛けながら進みましょう。
砂利道やでこぼこが多い道では、後ろ向きで進むとタイヤが埋まらずに進めます。
(4) 段差があるところの移動
段差を1段だけ登る時は、ティッピングレバー(図1)を踏みながら、手押しハンドルを押し下げると前輪が上がります(図2・(1))。
その状態で前輪を段差の上にゆっくり乗せます。その後、後ろのタイヤを段差に付けて乗り上げるように後ろから押します(図2・(2))。後輪を段差に付けないで持ち上げると、前輪が横に動いて危険です。
2段以上の段差は2~4人で、図1のの部分を持ち、車いすを水平に保ちながらゆっくり上げ下げします。
【介助時の注意点】
(1) 手や足の巻き込み
乗っている人の手がタイヤに巻き込まれたり、足が足置きから落ちて挟まる危険があります。移動中は常に手と足を確認しながら介助します。麻痺などで足が足置きに乗らない人には、足を安定させる福祉用具を活用すると安全です。
(2) 座り過ぎに注意
長時間車いすに座っていると、重みや振動でお尻に床ずれができることがあります。床ずれ防止には、体が滑らず体圧分散性の高いクッションの使用をお勧めします。
(3) 坂や段差は特に慎重に
下り坂や段差は勢いがつくため、慎重に移動しましょう。また、坂道ではブレーキをかけても動き出すことがあるので、絶対に坂の途中で止めないようにします。車いすを止める場合は平らな場所を選んでください。
(4) パンクしていないか必ず確認
後輪がパンクしていると、車いすが少し動くだけで転倒や転落につながったり、車輪止めのブレーキが効かず、動き出す可能性があります。パンクした場合は、自転車屋での修理が可能です。レンタルの場合は、レンタル元に連絡すると対応してくれます。
【車いす選びのポイント】
(1) 本人の身体状況に合わせて
けがや事故を防ぐためにも、正しい姿勢で座ることが大切です(図3)。サイズが合わないものを使い続けると、身体の変形や床ずれの原因にもなります。
座位が安定しない方には、座面や背もたれの角度を調整できる機能のついたものが便利です。また、痩せている人や姿勢が崩れやすい人は専用のクッションを使うとよいでしょう。福祉用具の事業所やケアマネジャーに相談してください。
(2) 住環境に合わせて
家の中で使うなら、小回りの利くものが便利です。ベッドから車いすへの移乗が大変な場合は、肘掛けや足置き(図1)が取れる、もしくは動くタイプのものを使うと移乗しやすくなります。外出が多い方や、坂道の多い地域にお住まいの方は、介助者用ブレーキが付いているものを選びましょう。
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車いすのレンタルは介護保険が使えます。最近は、福祉用具専門員の資格を持ったスタッフが福祉用具のレンタル会社に配置されていることも多くなりました。お近くのケアマネジャーや福祉用具の事業所にご相談ください。
実際に車いすで外出すると、エレベーターの設置されていない場所や超えられない段差、車いすに対応したトイレの有無など、地域の状況に気付くことがあります。自治体や社会福祉協議会などで「車いす講習」を行っているところもありますので、実際に車いすを使い、乗り心地や介助のポイントを体験してみることも大切ですね。
いつでも元気 2018.1 No.315