認知症Q&A 介護サービスの利用
監修 大場敏明医師
認知症の人が介護サービスを利用する際の注意点を、医療法人「財団アカシア会」(埼玉県三郷市)介護統括部長の高杉春代さんに聞きました。
認知症の人が利用できない介護サービスは、介護保険の制度上はありません。ただ、実際には介護事業所側が、認知症の人を受け入れられるか否かを決めているケースが多いようです。利用の際はあらかじめ、介護事業所に確かめましょう。
認知症を専門にした介護事業所として、通所施設の認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)や、認知症共同生活介護(グループホーム)があります。認知症デイはまだまだ少なく、多くの人は一般のデイサービスなどを利用しています。
介護サービスの利用にあたっては、介護保険料の他に家計の中で介護に使うことができる金額を計算しておくこと、本人の生活への思いや意向を知っておくこと、認知症の程度や症状、家族の介護できる範囲を明らかにしておくことが必要です。
介護保険制度は在宅で暮らし続けることが目的ですが、家庭の介護力が低い場合、在宅介護は困難を伴うことも多く、その場合は施設入所も選択肢の一つになります。
介護サービスの利用には、利用限度額が介護度ごとに決められており、1~2割の自己負担が発生します。さらに利用限度額を超えると、超えた分の全額が自己負担になります。あらかじめ利用料を確認してから、サービスを利用しましょう。
大切な馴染みの関係
次に、介護事業所について説明します。訪問介護やデイサービス、ショートステイなど在宅介護サービスを選ぶ際は、認知症の人のケアを専門的に提供している事業所をお勧めします。特に妄想や徘徊などの行動・心理症状が出ている人の場合は、一般の事業所では対応できないケースもあります。
認知症の人はコミュニケーション障害がある場合が多く、小規模で穏やかな雰囲気の事業所が適しています。また認知機能の低下によって、人や場所が変わると混乱する人もいるので、安心できる人と場所が必要です。馴染みの関係がとても大切ですので、複数の事業所を掛け持ちして利用することはなるべく避けましょう。
認知症の初期はさまざまなことが自分でできるので、自立した生活を重視する介護事業所が適しています。また、初期の若い人の中には、「働きたい」という人もいます。ボランティアでの受け入れや、働くことをプログラムとして提供する介護事業所もあります。
認知症の症状や本人の要望に応じて、適した事業所は違います。ケアマネジャーや地域包括支援センターなどに相談してください。
介護事業所を決める際には、家族や本人が事業所へ足を運び見学することをお勧めします。経営母体や施設長・スタッフの対応、利用者に笑顔や穏やかな表情が見られるか、などをチェックしましょう。認知症の人にとっては医療とともに適切なケアが大切です。不適切なケアは、認知症の進行を早めかねません。
認知症の人の中には、デイサービスに通うことを嫌がる人が少なからずいます。そんな時は「デイでボランティアをやってみませんか」など、介護を受ける立場ではなく、そこで必要とされている人として声をかけてみることも試してみましょう。
また、地域に関わる第一歩として「オレンジカフェ」(認知症の人と地域住民が気軽に集い交流する場)に参加し、外出機会を増やすこともお勧めです。
【お詫びと訂正】
前号の表「介護度に応じたサービスの種類」で、問い合わせ先が間違っていました。正しくは要支援1~2が「地域包括支援センター」、要介護1~5が「居宅介護支援事業所または地域包括支援センター」です。
お詫びして訂正します。(編集部)
いつでも元気 2017.12 No.314