新ほっと介護
薬の管理と服薬の介助
全日本民医連介護職委員会委員/広島中央保健生協ヘルパーステーション
田頭嘉直(介護福祉士)
介護が必要になった人が住み慣れた自宅で暮らしていくためには、薬と正しく付き合うことがとても大切です。
今回は薬の管理と服薬の介助について説明します。
薬は決まった時間に用法・用量を間違えずに飲むことが大切ですが、物忘れや認知症の症状により、適切な服用ができなくなることがあります。また、複数の病院にかかっていたり、処方される量が多くなると、介護者の負担も増えます。
薬を飲み忘れることでの病状悪化、飲み過ぎによる副作用や事故を防ぐためにも、要介護者の生活環境に合わせた適切な介助が必要です。
薬の管理方法
薬には同じ名前でも成分量の異なるものがあります。どこの医療機関からいつどんな薬が処方されたのか、情報を正しく把握するために「お薬手帳」があると便利です。無い場合には、薬の袋を1つにまとめて管理する方法も有効です。
自宅での薬の管理は、「お薬カレンダー」が主流です。ポケットのついたカレンダーにその日飲む分の薬を入れて、飲み忘れや飲み過ぎを防ぐものです。薬局だけでなく、最近では100円ショップなどでも販売しています。壁掛けタイプや、フタのついたプラスチックケースのものなどありますので、生活や介護の状況に合わせて選んでください。
服薬のタイミング(表)は薬によって異なります。1回分に分けるとき、飲み方の違う薬を同じ袋に入れないよう、注意してください。
飲むタイミングごとに薬を分けて、包装するサービスを行っている薬局もあります。有料の場合もあるので、薬局で確認してください。
目薬や座薬などは冷蔵庫での保存が必要なものがあります。誤って飲まないように食べ物とは分けておきましょう。
介護の程度は人それぞれです。「飲み忘れないように声をかければ飲める」「1回分に分けてあれば飲める」など、要介護者の状態に合わせ、本人の「できる」「する」ことを残しておくことも大事です。
介助するときの注意点
誤嚥させない工夫を
服薬の介助は、基本は食事の介助と同じで、薬や水を誤嚥させないよう注意が必要です。
口の中が乾いているようなら、水や濡らしたガーゼで湿らせてから服薬しましょう。あごが上がった状態では誤嚥しやすくなります。薬と水を口に含んだら、少し下を向いて飲み込むと食道を通りやすくなります。飲み込むことが難しい方には、ゼリーに包むことで飲み込みやすくする商品も出ていますので、薬局などで相談してください。
麻痺がある場合
口の中に麻痺がある方は、麻痺している側に薬が残ることがあります。麻痺しているため本人は気づきにくく、食後のうがいなどで薬が出てしまうこともあります。麻痺がない方向から薬を入れたり、口の中に薬が残っていないか確認するなど、注意が必要です。
認知症の場合
認知症状が出始めると、人を疑うことがあります。「物を盗られた」「食事を食べさせてもらえない」などの妄想もそうですが、私が担当した方の中には薬も同様に、「嫁が毒を飲ませている」と言い、毎日けんかになっているご家族もいました。服薬を優先するあまり無理矢理飲ませようとすると、互いにうまくいかないこともあります。本人も「飲まされる」という不安やストレスを抱えてしまうかもしれません。
一方、家族が飲ませようとすると拒否するのに、デイサービスなどで第三者が促すとトラブルなく飲める場合もあります。
本人の健康も大事ですが、介護者自身のストレスを減らすことも大切です。無理せずかかりつけの医師や薬剤師、看護師、ケアマネジャーに相談してください。飲みやすい形状の薬に変更したり、症状に合わせた興奮を和らげる薬が処方されたり、第三者の介助で内服のストレスが軽減した例もあります。
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民医連の事業所・薬局では定期的に「健康相談会」を実施しているところがあります。また健康まつりや、共同組織の班やサークルで開く学習会に医療・介護の職員が参加することもあります。日頃から顔を合わせ、地域の仲間にも声をかけるなど相談しやすい環境を作っておくことも、いざというとき役に立つと思います。
薬のことで困ったときには、個人で判断せず薬剤師や訪問看護師に相談してください。介護する側が疲れ果てて生活の継続ができなくなることにならないように、ケアマネジャーとも相談しながら、医療・介護のチームで一緒に手段を考えていきましょう。
いつでも元気 2017.12 No.314