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いつでも元気

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認知症Q&A 運転免許の更新

お答え・大場敏明さん(医師)

Q 76歳の父は自動車の運転が大好きです。免許証の更新を控えていますが、最近、もの忘れが増えたうえ車にもどこかにこすったような小さな傷が目立ちます。認知症の診断は受けていません。父は「まだ大丈夫」と言いますが、運転をやめさせたほうがいいでしょうか。

 結論から先に言えば、免許証の自主返納を検討すべきです。本人は運転を続けたいでしょうが、家族の努力で自主返納へ誘導してください。

免許証の自主返納の検討を

 本人に「もの忘れが増え」、「車にも小さな傷が目立つ」ようだと、いつ大きな事故を起こすか分かりません。たとえ現在認知症と診断されていなくても、事故を起こす前に、運転をやめさせることも検討すべきだと考えます。
 75歳以上の運転者は、3年に1回の免許証更新時に判断力などをチェックする「認知機能検査」を受けます。今年3月に「改正道路交通法」が施行され、認知症の交通事故対策がより厳しくなりました。
 改正前は、認知機能検査で「認知症のおそれ」と判定された人のうち、3年間に信号無視など一定の違反行為をした場合に医師の診断を受けました。改正後は「認知症のおそれ」と判定された場合は違反の有無にかかわらず、医師の診断を受けることが義務づけられました。医師の診断の結果、認知症とされると免許取り消しか停止になります。
 認知機能検査は「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描画」などを調べ、検査結果は次の3段階に分類されます。なお、検査は認知症の診断をするものではありません。
(2)認知症のおそれ 記憶力・判断力が低下しており、医師の診断が必要です。100点満点中49点未満を、認知症のおそれと分類しています。
(2)認知機能の低下のおそれ 記憶力・判断力が少し低くなっている場合、3時間の高齢者講習(個別指導60分も新規追加)の受講が義務付けられています。受講すれば免許証は更新できます。
(3)認知機能の心配なし 記憶力・判断力に問題がない場合、2時間の高齢者講習(個別指導はなし)が義務付けられています。

運転経歴証明書とは?

 ご質問のような状態で認知機能検査を受けた場合、「認知症のおそれ」と判定される可能性が濃厚です。もし、本人の強い希望で免許の更新に行き認知機能検査を受け、その後に医師から認知症と診断されると免許が取り消される可能性が高くなります。
 免許が取り消されると、自主返納の資格を失います。この資格を失うと「運転経歴証明書」の交付を受けることができません。
 運転経歴証明書は身分証明書の代わりになります。また多くの地域で、証明書の所有者にタクシーやバスの割引料金が適用されています。自分で運転できなくなる代わりに、移動手段を安く提供してもらえるのです。
 免許証の返納は本人が運転免許センターや最寄りの警察署の窓口に出向くことが原則です。家族が代行できる自治体はごく一部のため、本人が返納に納得して動かなければなりません。
 自主返納を納得してもらうためにも、事前にかかりつけ医に認知機能の状態を検査してもらったり、認知症の診断を受けることをお勧めします。理解があるかかりつけ医なら、一緒に本人を説得してくれるかもしれません。
 とはいえ本人が車好きだったり、「自分はまだ大丈夫」と思い込んでいる場合、納得することはなかなか難しいかもしれません。「自主返納への誘導」については、次号で触れます。
 なお、車がなければふだんの買い物や通院が著しく困難な地域もあります。高齢者の交通問題は当事者だけでなく、自治体や国としても考えなければいけない課題でしょう。

いつでも元気 2017.9 No.311