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いつでも元気

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医療と介護の倫理 「がん告知時代の倫理(2)」

堀口信(全日本民医連 医療介護倫理委員会 委員長)

 前回に続き、患者さんと家族にとってより良いがん告知について考えてみたいと思います。
 今回のケースは60代の男性患者さんです。進行性の大腸がんが見つかり、本人と家族に告知しました。外科手術と抗がん剤治療を受けましたが、1年後に肝臓への転移が、2年後には肺への転移が見つかりました。見つかった時点で転移について家族には伝えましたが、家族の希望で本人には告知しませんでした。
 徐々に倦怠感が強くなり、手術から2年後に入院。ここで初めて転移について本人に伝えました。このとき家族には余命1~2カ月と説明しましたが、本人には伝えませんでした。
 亡くなる1週間前から本人の不安が強まり、看護師の手を強く握って「もう頑張れない、ここにいてくれ」と懇願したり、壁にミカンを投げつけることもありました。
 後日、遺族に話を聞きました。「本人も告知をされれば残された時間でやりたいこともあるだろうし、治療にも向かっていけると思い、告知に同意した」と話していました。
 病院への希望としては「6人部屋だったが、周りの患者を気にせず家族と本人だけでゆっくり話せる場所が欲しかった。看護師さんが本人とゆっくり話せればいいのだけれど、忙しいからね、仕方ないね」と語っていました。

告知後のサポートも大切

 がんの告知は自分自身のことであれば多くの方が希望しますが、家族ががんの場合はためらいがあります。2007年の厚生労働省の調査では、自分自身ががんになったときの告知希望は8割ですが、家族ががんになったときの告知希望は4割でした。
 本人ががん告知を希望している場合、その意向を最優先すべきです。一方で、告知後の本人をサポートするには家族の協力が欠かせません。本人が告知を希望しているにもかかわらず、家族が本人への告知に同意しない場合、粘り強い話し合いが必要になります。
 告知された後の本人・家族の不安は強く、告知直後のサポートが不十分だと、患者や家族を苦しめてしまう場合もあります。
 がんをはじめ重大な病名の告知を希望するか、もし余命が短くなった場合、残された期間を知りたいかなど、家族や親しい者同士で話し合っておくことも大切でしょう。

告知 10のポイント

 患者と家族にとって、より良いがん告知のためのポイントをまとめてみました。
(1)本人と家族がともに、落ち着いて話ができるような環境整備に努める
(2)本人の意思を最優先し、その確認が難しい場合は家族の意思を尊重する
(3)家族が本人の意思に同意しているかを確認する
(4)本人が告知を希望していて、家族が告知を希望していない場合、本人の意思を家族に伝えて同意してもらう手順を踏む
(5)本人・家族がどの程度まで知りたいのか(あるいは知りたくないのか)を確認する
(6)告知に当たっては、本人・家族の受容する力や、どの程度まで理解しているのかを把握する
(7)非言語的なコミュニケーションも使いながら、分かりやすく丁寧な言葉で対応する
(8)医療者側は、本人・家族の落ち込みをそのまま受け止める姿勢を持つ
(9)できるだけ事実を伝えるよう努力しながら、患者をこれからも支える意思を伝える
(10)告知後も、本人や家族をサポートできるチーム医療が行えるように努力する

いつでも元気 2017.8 No.310