安心して住み続けられるまちづくり・岡山 楽しく育児ができるまちに
文・宮武真希(編集部)/写真・牧野佳奈子
さまざまな子育て応援行事に取り組む岡山医療生協。
昨年9月の全日本民医連共同組織活動交流集会では、子育て世代の活発な活動を報告し、注目を浴びました。このたび「岡山市くらしやすい福祉のまちづくり」の取り組みとして表彰されることに。毎月1回水曜日に開催している「母と子のタッチケア」を取材しました。
「母と子のタッチケア」は、お母さんが赤ちゃんのマッサージ法を学ぶ講座で、12年前から開催しています。「赤ちゃんと見つめ合ったり、話しかけたり、マッサージをするといったスキンシップをとることで、お母さんにリラックスしてもらうことが目的」と話すのは、久世恵美子さん(元・岡山協立病院の助産師)。
「育児に不安を抱くお母さんたちに『何かできることはないか』と始めました。出産後にうつ症状が出る方もいますからね、サポートしたいと思って」と、開催当時を振り返ります。
お母さんも喜ぶ講座
日射しが温かい11月16日午後1時、ベビーカーを押したお母さんたちが岡山医療生協コムコム別館にやってきました。ここは岡山協立病院から徒歩5分ほど、数年前まで保育園だった建物です。
2階の受付で、職員や医療生協の理事、運営委員さんがお出迎え。赤ちゃんの兄姉は向かいのスペースで預かり、運営委員さんが見守ります。地域(三勲支部)の運営委員・白砂純子さんは、岡山医療生協の子育てサポーター養成講座を受講して見守りを担当している1人。「タッチケアはお母さんたちに喜んでもらえる行事。今日は新しい人が参加してくれて嬉しいわ」と話します。
母も子もうっとりと
受付をすませたら、まず、お母さんの手をアロマオイルでマッサージ。「お母さんの手が冷たいと、赤ちゃんがびっくりしますからね。血行を良くしましょう」と話しかけるのは高下千尋さん(岡山協立病院小児科・看護師)。昨年、ハンドマッサージの資格を取得しました。マッサージを受けたお母さんは「こんなに自分に時間をかけたのは久しぶり。ホッとします」と、うっとり。
ハンドマッサージが終わると、親子が円座に。保育士がわらべうたを歌い、お母さんと赤ちゃんのスキンシップをリードします。部屋の雰囲気に慣れたところで、赤ちゃんの服を脱がせてタッチケアのスタート。お母さんの温かい手が体に触れて、笑顔を見せる子、不思議そうに周りを見つめる子、気持ちよくて眠ってしまう子など、みなそれぞれ。部屋中に、あたたかい時間がゆったりと流れます。
岡山協立病院の近くに住む山口由優子さんは、今回2度目の参加。前回は公園で出会ったママに教えてもらって、今回は同じ社宅に住むママ友を誘いました。「上の子もいるので、なかなか赤ちゃんだけにゆっくり時間をかけられないのですが、教えてもらったタッチケアを思い出して時々お風呂上がりにやっていました。ここは自分もマッサージしてもらえるし、とても良いですね」と話します。
つながりが一番大事
岡山医療生協の子育て応援行事には、子育て中の“現役お母さん”が積極的に関わっていることが特徴。離乳食講座やママ,Sカフェなど9つの行事に関わっています。支部運営委員の大西佳子さん(38)もその一人で、タッチケアに参加した経験をもちます。「私が2人目を出産した頃は上の子の見守りがなく、残念ながら参加できませんでした。今は兄姉がいても一緒に参加できるようになって本当によかった」。
理事の中山千春さん(37)も3人の子育てまっただ中。同世代4人の支部運営委員と「こんな行事があったらいいな」という思いから発案した行事を子育て世代の組合員に担い手を広げながら進めています。
中山さんは「子育て中って、顔見知りができることが一番大事。私自身、地域に知り合いができてから、ようやく育児を楽しめるようになりました。『ちょっとうちの子を見とってくれん?』と預けられるつながりがあることが、“安心して住める、楽しく子育てできるまち”じゃないかな」と目を輝かせます。
いつでも元気 2017.2 No.304