認知症Q&A 認知症の予防法(4)
お答え・大場敏明さん(医師)
高血圧や糖尿病との関係
高血圧と糖尿病は、認知症の多くを占める「アルツハイマー型認知症」(AD)と「血管性認知症」(VD)を発症する確率を上昇させる原因(危険因子)になります。
特に糖尿病はAD、VDともに明確な危険因子で、AD発症率が糖尿病でない人に比べて2・1倍、VD発症率は2・7倍になります。一方、高血圧はVDの発症率が実に3~4倍にのぼりますが、ADへの直接的な影響は明らかになっていません。
不健康な生活習慣は、生活習慣病を介して認知症の危険因子になるとともに、直接的な危険因子にもなります。食事・運動・飲酒・喫煙など生活習慣の改善は、生活習慣病と認知症の発症・進行の予防につながります。
要介護疾患の予防を
近年、健康寿命を伸ばすQOL(生活の質)の向上が重要なテーマになっており、その中心課題は「要介護疾患」(介護が必要になる原因)の予防です。
認知症は、要介護疾患の第2位です(表1)。要介護疾患の予防のためには、総合的な生活習慣の改善((1)体重管理(2)食事管理(3)運動(4)節酒(5)禁煙)が必要です。ポイントを表2にまとめました。今回は(4)、(5)について解説します。
日本酒なら1合が目安
高齢のアルコール依存症患者には、物忘れや認知症が高い割合でみられるとの研究結果が出ています。 アルコールを過度に摂取すると、高血圧や糖尿病の生活習慣病はもちろん、多発性脳梗塞などの脳血管障害や肝硬変、栄養障害など認知症の危険因子が大きくなります。
欧米の研究では、「少量から中等量」のアルコール摂取は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを低下させるとのデータもあります。お酒好きの方には朗報のようにも聞こえますが、問題もあります。「少量」の具体的な量が研究によって異なり明らかでないこと、アルコール代謝能力が欧米人より弱い日本人の研究結果がまだ出ていないことです。
飲酒の目安は日本酒なら1合、その他はそれぞれビール中瓶1本、焼酎半合、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯以下です。
喫煙でリスク2倍
九州大学の調査によれば、中年以降に喫煙を続けた人がアルツハイマー型認知症を発症する確率は、吸わない人に比べて2倍という結果でした。一方、老年期に禁煙した人は発症リスクが減少し、吸わない人と同程度になりました。長年の喫煙は認知症の危険因子ですが、老年期であっても禁煙によってリスクを低下させることができます。
禁煙は認知症をはじめ、生活習慣病や脳心血管病の予防として効果的です。認知症を心配されている喫煙者の方には、ぜひとも禁煙をお薦めします。
いつでも元気 2017.2 No.304