• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

いつでも元気

いつでも元気

緊急レポート 南スーダンは今

 内戦が続く南スーダン。昨年7月には首都ジュバで大規模な戦闘が起こり、日本では自衛隊の「駆けつけ警護」が大きな議論を呼んでいます。
 現地はどういう状況にあるのか。日本国際ボランティアセンター(JVC)スーダン現地代表の今井高樹さんの報告です。

genki304_36_01 私は支援活動のため、昨年9月と11月の2回にわたって南スーダンの首都ジュバを訪問しました。「ジュバは落ち着いている」という日本政府の説明とは違い、人々は「また、殺し合いが始まるのではないか」と怯えていました。
 10月のある日、「大統領死亡」の噂がジュバ市内を駆け巡りました。人々は「後継者争いで戦闘になる」「住民の虐殺が始まる」とパニックに陥って家に閉じこもり、大統領が姿を見せるまでの3日間、街から人影が消えました。「民族間の敵対感情が高まり、大量殺人の危険がある」という国連調査団の指摘は間違いではありません。
 ある友人が言いました。「次は自分が標的になるかも知れない。早くジュバを離れたい」。
 ジュバ以外の地域でも、兵士や武装集団による略奪やレイプ、殺戮が相次いでいます。避難民たちからは「故郷の村ではニワトリのように子どもが次々と殺されている」「兵士が家々を焼き討ちし、男たちを切り刻んで燃える家の中に放り込んでいた」という証言も聞きました。

足りない薬

 7月に激しい戦闘が行われたジュバの西部では家々が破壊され、多くの住民が安全を求めてナイル川を渡りました。対岸に位置するグンボ地区では、そうした人々が難民キャンプや親戚の家で生活しています。
 数km四方に及ぶグンボ地区で、公設の診療所はたった1カ所。この診療所を支援できないかと打診され、訪問しました。
 順番待ちの列が診療所を取り囲んでいました。ほとんどは小さな子どもを抱えた母親です。「以前の患者数は1日に50人ほど。でも、避難民が押し寄せてから、今は毎日300人を超えています」と診療所責任者のレモ医師。
 南スーダン保健省が運営するこの診療所では、現地通貨(南スーダンポンド、以下ポンド)で受診料5ポンド(日本円で約6円)を払えば、医薬品が無償で提供されます。厳しい生活を送る人々にとって、なくてはならない存在です。
 しかし国家財政は破綻状態、保健省から医薬品が届くことはありません。医薬品どころか、公務員の給与も3カ月間支払いが止まっています。
 「私の給料もです」と苦笑するレモ医師。「問題は薬です。援助団体から時々医薬品の支援があるのですが、患者さんの数が増えているので、とても足りません」。
 薬局の棚はガラガラでした。私たちはレモ医師と相談して、3カ月分の医薬品と注射針などの医療器具を提供しました。

「診療所に来てもいつも薬がない」と訴えるアスンタさん(右)赤ん坊を抱えたまま7月の戦闘で夫を失った

「診療所に来てもいつも薬がない」と訴えるアスンタさん(右)赤ん坊を抱えたまま7月の戦闘で夫を失った

 

1日働いてカップ2杯

 診療所で順番待ちしている人たちに話を聞きました。「昨日から子どもの具合が悪くて、マラリアかと思って連れてきたの」と、赤ん坊に授乳している母親。7月の戦闘で夫を亡くしていました。
 「食べものだって足りないのよ。栄養が摂れないから、マラリアが治らない」「診療所に来ても、薬がないからって処方箋だけもらって帰ることも多いんです」。
 処方箋を持って一般の薬局に行けば、自分で支払わなくてはなりません。「薬の値段? どんどん上がっているわ。風邪薬で200ポンド、マラリアだと500ポンドもする」。
 聞くと母親だけの世帯、夫が休職中、公務員なので給料は未払いなど、安定した収入がある家族をもつ人は誰もいません。最大の収入源は薪拾いでした。
 「朝から晩まで薪を拾って、翌朝に50ポンドで売って…、それでやっと(主食の)トウモロコシの粉がカップ1杯か2杯買える」。薬を買うには、数日分もの稼ぎを費やさねばなりません。
 「薪拾いも安全じゃない。森の近くに軍の施設があって、時々銃を撃ってくるのよ」「この前、1人撃たれて死んでしまった。まだ若い母親なのに、小さな赤ん坊を残して」。
 これが、南スーダンの現実です。

自衛隊ではない支援を

 日本では話題の自衛隊派遣ですが、ジュバの人たちにはあまり知られていません。自衛隊は国連平和維持部隊(PKO)の一部でしかなく、国連PKOが市民を守ってくれると期待している人もいません。PKOは、7月の戦闘を止めることができませんでした。市民は皆、自分で身を守るしかないと思い、その日を生きることに必死なのです。
 南スーダンでは270万人もの人々が避難生活を強いられ、国民の半数以上が食料不足に直面しています。紛争当事者になりかねない駆けつけ警護の自衛隊派遣ではなく、人々の生活を支える支援や、社会の安定のため和平に向けた取り組みが求められているのです。JVCは今後も食料や医薬品の支援を続けていきます。


JVC南スーダン
緊急支援にご協力ください

「4000円で1家族1ヵ月分の食料」
「2000円で5人分のマラリア治療薬」
の支援が可能です。
皆さまのご協力をお願いいたします。
■郵便局から募金する
郵便局口座番号:00190-9-27495
加入者名:JVC東京事務所
※通信欄に「南スーダンいつでも元気」とご記入ください。
※寄付金の20%は管理費に充てさせていただ きます。
※クレジットカードでの募金もあります。
■本件についてのお問い合わせ
JVC広報担当:大村
TEL:03-3834-2388
MAIL: info@ngo-jvc.net

JVCホームページ:http://www.ngo-jvc.net/

いつでも元気 2017.2 No.304