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いつでも元気

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伊藤悟のひょうたん島便り Vol.15 まやかしの視聴率

 最近、テレビの視聴率を比較する番組や記事が増えてきた。「めったに20%を超えなくなった」とテレビ離れを嘆いたり、ドラマの初回視聴率を比べたり…。その数字には絶対的信頼があるかのようだ。
 視聴率を調査しているのはビデオリサーチ社。1962年からデータを提供している。自分がテレビを観たら、自動的に視聴率に算入されると思い込んでいる人は少なくない。「欠かさず観て、視聴率を上げて応援しなくちゃ」などと言って。
 残念ながらこれは誤りだ。ビデオリサーチ社から測定器を付けることを依頼されない限り、自分が観たか観ないかは視聴率にいっさい関係ない。
 だが、測定器を付けた経験がある人にはなかなか出会わない。それもそのはずで、関東地区では900世帯しかサンプルがない。総世帯数1835万のわずか0・005%、2万世帯にひとつだ。
 ビデオリサーチ社は、それでも統計学的には正確で「誤差は2~3%」と自社サイトに書いている。うーん、でも信じ難い。少なくとも誤差があるのだから「20・8%のドラマが20・6%のドラマより人気だ」と言われても虚しいではないか。
 視聴率は、民放ではスポンサーの機嫌に影響する。NHKさえ視聴率を強烈に意識している。なのに問題は、数字の信ぴょう性だけではない。
 測定器の性質上、テレビがついていれば誰も観ていなくてもカウントされる。録画視聴はまったくカウントされない。なぜか全国平均が算出されず、視聴率ランキングはたいてい関東地方のデータだけで決められる。納得できないことだらけだ。
 さすがにビデオリサーチ社も10月に改革案を発表した。数年かけて測定器を取り替え、「タイムシフト視聴率」を算出するそうだ。つまり録画された番組を観た場合も、数字化できるようにするというわけ。それをサイトで誇示しているのだが、遅きに失しているのではないか。
 10月に放映が終わったNHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」には、ネット上で批判が集中した。「主人公がいじめや嫌がらせを受けても、うやむやに終わる展開が理不尽」「エピソードが細切れでバラエティーのよう」。女性蔑視や脇役使い捨てなど、もっともな意見も多い。
 しかし、メディアで取り上げられるのは視聴率が良かったことばかり。番組のモチーフになった『暮しの手帖』の元編集者が「事実を歪め過ぎている」と告発した記事が『週刊朝日』に載ったくらいで、内容は検証されないまま終わりそうだ。
 「視聴率がいい=素晴らしい」という公式を外して見ないと、テレビのレベルは下がっていく一方ではないか。


いとう・さとる 作家、音楽評論家。『大人にも読める思春期ガイダンス』(明石書店)など著書多数

いつでも元気 2016.12 No.302

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