巻頭エッセイ 少女から搾取しない社会へ 仁藤夢乃 一般社団法人Colabo代表
私が代表を務める「Colabo」は、中高生世代の女子を支える活動を行っている。夜の街での巡回や声掛け。食事や風呂、衣類の提供。児童相談所や役所、警察、病院、学校などへの同行支援。虐待や児童買春などで暴力を受けた少女のための一時シェルターや、自助グループの運営、支援者向けに少女を取り巻く実態を伝える夜の街歩き研修なども行っている。
10年前、私も高校生だった頃、街を徘徊する生活を送っていた。家では暴力が飛び交うため、ファストフード店や漫画喫茶、居酒屋、カラオケ店、ビルの屋上で一夜を明かした。不安を抱えながらも、頼れる大人はいなかった。
声をかけて来るのは買春者か、違法な仕事を斡旋するスカウトばかりだった。今でも、そうした少年少女に路上やSNSで声をかけるのは、子どもを利用しようとする大人ばかりだ。困っている子どもが、支援につながる前に危険に取り込まれている。
体調が悪くても「親に怒られるから病院に行けない」「保険証を親に管理されている」という人や、栄養のある食事を摂れていない人、歯磨きや体の洗い方を教わらずに育った人がいる。性的虐待を受けた少女たちはトラウマを抱えており、安全を手に入れてからも中長期的な関わりが必要だが、カウンセリングのための援助を受けられず苦しんでいる。
貧困や虐待を背景に、学校で必要な上履きや文具、給食費、修学旅行費を手に入れるため売春する中高生もいる。世間は「家出少女」「非行少年」「援助交際」などの言葉で、子ども自身に問題があるかのように語る。しかしそれは子どものSOSであり、背景には子どもへの人権侵害がある。
ある夜、街で声をかけた少女から「(児童相談所の)保護じゃないよね?」と、怯えた様子で言われた。家庭や学校などで不適切な対応を繰り返されてきた経験から、大人への不信感を抱え、「助けて」と言えない子どもたちがいる。少女たちは「どうしたい?」と問われても、自分の意思や、どんな選択肢があるのかがわからない。私はそうした子どもたちの背景を理解し、信頼関係を築き、共に歩める伴走者でありたい。
いつでも元気 2016.12 No.302
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