支え合いまちづくり 「夏休みに昼食を」市内初、子ども食堂スタート 茨城保健生協
文・寺田希望(編集部) 写真・野田雅也
茨城保健生協は小・中学生の夏休みが始まる7月21日から、水戸市内で初めての子ども食堂「にこにこ食堂」を始めました。
6月上旬の提起から1カ月半でスタートした緊急企画。
そこには組合員たちの強い思いがありました。
にこにこ食堂の会場は茨城保健生協会館の組合員ホール(水戸市)。会場に近づくと、おいしそうな香りが外まで漂ってきます。取材した8月17日のメニューはドライカレー、プチトマトを添えたスパニッシュオムレツ、みそ汁、スイカ。
メニューを考えるのは、同保健生協理事でにこにこ食堂事務局の岡部佳代子さん。以前は栄養士として働いていた岡部さんのメニューは、栄養バランスもしっかり考えられています。料金は子どもや保護者は100円です。
毎週水曜日の午前10時頃からボランティアが集まり調理を開始。子どもたちは11時半~1時にやって来ます。ボランティアが声をかけながら楽しく食事をして、食べ終わった食器は子どもたち自身で片付けます。食事後はスタッフと折り紙などで遊ぶことも。
地域の子どもの貧困を知って
同保健生協副理事長の大内孝夫さんは、以前から子どもの貧困問題で自分たちにできることはないかと考えていました。岡部さんも「近くに住む理事さんのもとに『おばちゃん何か食べるものない?』と子どもだけで訪ねてきたことがあるそうです。そういう話を聞いて何かできないかと思っていました」と言います。以前から高齢者向けの食事会を開いていた同保健生協みどり支部の塙直子支部長も、子どもの貧
困問題の講演会に参加して「子どものための食事会を開くならここで」と思うように。
大内さんは6月上旬、「給食がなくなる夏休みに、体重ががくっと落ちる子どもがいる。なんとかして夏休み中に子ども食堂を始められないか」と、塙さんと岡部さんに相談しました。
つながりを生かす
それからは急ピッチで準備が始まりました。場所は法人の協力を得て組合員ホールを使えることに。食器類は職員や組合員が持ち寄りました。
食材については「水戸は農産地ですから、家庭菜園をしている組合員も多いんですよ。その人たちに野菜や米を持ってきてもらったり、県の生協連を通じて農協から余っている野菜を譲ってもらっています」と塙さん。提供してもらうことが難しい肉や魚は、毎回の食事代やカンパなどで購入しています。
ボランティアは組合員以外にもつながりのある人に声をかけ、現在23人が登録しています。その中には小学6年生の女の子も。将来の夢はパティシエだと言い、職員である父親から勧められて参加しています。
必要としている子に情報を
事前の宣伝にも力を入れました。水戸市教育委員会に許可を得て、会場のある校区の小中学校に1000枚のチラシを配りました。市役所では子ども課と生活福祉課にチラシを渡し、対象となる人たちに届けてもらうことに。さらに、大内さんが会場周辺の家にも500枚ほどチラシを配って歩きました。
食堂を始めると、あちこちから情報が入ってくるようになりました。ある職員からは「ドラッグストアで買い物をしていたら、店員が子どもの後ろをついて店内を回っていた。どうやら、お腹をすかせて万引きをしてしまう子どもをチェックしているらしい」という話が。職員から話を聞いた地域にも、新たにチラシを配りました。
「いま水戸市内で子ども食堂をやっているのは私たちだけ。遠くてここまで来られない子もいます。もっと子ども食堂が増えてくれたら。そのために行政にも支援してほしいです」と岡部さん。
「最近は両親が共働きで、一人で食事をする子も増えています。そういう子たちの居場所を作りたい。いずれは無料塾もやりたいですよね」と続けます。
9月からは毎月第1、第3土曜日に開催。岡部さんは「10月には収穫祭も兼ねて大々的に開催する予定です。冬休みや春休みには特別企画もしたいですね」と話します。
いつでも元気 2016.10 No.300