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いつでも元気

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いきいきシニアライフ(9) 相続 その2 相続財産の分割は遺族の話し合いで

相続財産と相続税のかかり方

徳田五十六 ライフデザイン社会保障研究会代表。ファイナンシャルプランナー

徳田五十六 ライフデザイン社会保障研究会代表。ファイナンシャルプランナー

 前回は相続人について述べました。相続人の確定と同時にすすめるのが、相続財産(遺産)の確定です。相続財産は、現金や宝石類、土地、建物、預貯金、有価証券、貸付金、自家用車、著作権など(表1)。相続税は、いずれも財産評価額に応じてかかります。
 このほか、死亡保険金、死亡退職金、年金の受給権も相続財産とみなされます。死亡保険金や死亡退職金は、相続人一人当たり五〇〇万円分を差し引いた金額が財産評価額となります。
 死亡前の三年以内に贈与された財産は、相続財産に含まれ相続税がかかるので注意が必要です。借金、未払いの医療費や税金、葬儀費用(返礼品含まず)は、相続財産から控除したうえで相続税の計算をします。
 また、弔慰金やお墓などは非課税で、相続税はかかりません。これまで述べてきた相続財産については、役所や法務局、税務署で証明書をとる必要があります。その際、名義変更の必要書類一式を入手し、手続き方法を聞いておくと手間が省けます。

土地や建物は

 相続財産のうち、土地の財産評価額は時価ではなく、税務署が毎年発表する一平方メートルあたりの路線価で計算します。建物は固定資産税の評価額が基本となります。土地の評価額は、形状や道路に面しているなど条件で異なります。詳細を知りたい方は税務署でお聞きください。
 相続人が居住する三三〇平方メートル以下の居住用宅地や、相続人が事業を継続する四〇〇平方メートル以下の事業用宅地の場合、財産評価額は八割減となります。相続財産の一覧表を作り、相続税を書き出して遺産分割協議と相続税申告に使います。
 債務が不明な場合、前回述べたように「相続放棄」や「限定承認」を選択することもできます。その場合は、三カ月以内に家庭裁判所に申請します。

遺産分割協議

 遺言が無い場合は、相続人全員で「遺産分割協議」をおこないます。協議の場では基本的に法定相続の分割割合(例・子が二分の一を相続など)をベースにしますが、話し合いで全員が合意すれば合意内容が認められます。
 たとえば、親の介護や親の事業の手伝いなどに特別に貢献した場合、「寄与分」を金銭的に評価して、法定相続分に上乗せすることができます。
 これまでの家族の歩みから、長男に多額の教育費を使ったとか、次男の借金を穴埋めしたとか、結婚や住宅購入に際して援助したなど、「特別な受益」で得た分を相続財産から差し引くこともできます。しかし、その判断はなかなか難しく話し合いで納得できるかが課題です。
 各人の思惑から分割協議がまとまらないこともありますが、相続人同士でよく話し合うことが、“争続”にならない最良の方法です。
 専門家と言われる弁護士、税理士、銀行なども、必ずしも相続に詳しいとは限りません。専門家のアドバイスが遺族の要望に沿わないことも多く、相談はしても安易に相続全般を頼まず、基本は家族でまとめていくことが大切です。
 話がまとまれば、「遺産分割協議書」(表2)を作成します。形式は問いませんが、財産明細と分割方法、日付、相続人全員の署名と実印での捺印が必要です。また、全員の印鑑証明書を添付します。
 相続人が未成年の時は代理人を、認知症や知的障害の場合は成年後見人を選任し、代理人も成年後見人も印鑑証明書を添付し署名捺印が必要です。

故人の思いを残す遺言

 故人(被相続人)の意志を大切にするとの考え方から、遺言が法定相続より優先されます。遺言は法定相続分の不都合を調整できるので、故人の思いを伝える意味でも書き残したいものです。
 世話になった義理の娘や息子(例・長男の嫁)、友人や団体、内縁の妻など法定相続人以外の人にも、本人の望み通り相続財産の分配ができます。遺言書には、遺言の執行人として信頼できる人を指名することもできます。
 遺言は得てして遺産分割の“道具”と思われがちですが、親の子に対する思い、家族への今後の生き方の提示、遺族や関係者への謝辞を「遺言の趣旨」「付帯事項」として書くことができます。家族への思いや遺産分与の真意が伝わることで、遺産分割協議を円満にすすめることができます。
 生きているうちに子どもたちに伝えたことは、忘れられてしまうことが多いものですが、遺言に書いた親の考えや家族への感謝の気持ちは、特別なものとして生涯残ります。正月に毎年、遺言を書き替えている人もいます。
 次回は遺言の具体的な書き方について説明します。

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いつでも元気 2016.9 No.299