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いつでも元気

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安心して暮らせる世界へ(4) アフガニスタンII 村人の力で健康な暮らしをつくる

 アフガニスタンの医療事情と日本国際ボランティアセンター(JVC)の支援について、JVCアフガニスタン事業担当の加藤真希さんが報告します。

学校を健康教育の拠点に

学校を健康教育の拠点に

 2001年に米国同時多発攻撃「9・11」が起き、アフガニスタンがアメリカなどによる報復攻撃を受けました。その直後から、緊急支援で現地に入って14年。JVCは保健と教育を中心とした活動を続けています。
 現在は、アフガニスタン東部のジャララバード市近郊にあるシェワという農村部で診療所を運営しつつ、多くの病気が家庭の衛生状態や生活習慣に起因することから、病気予防にとりくんでいます。

長老の保健委員会

 私たちJVCはあくまで外から来たNGOです。どんな活動も、まずは地域に受け入れられるよう、村の名士や宗教指導者など、人びとの尊敬を集める“長老”たちの理解を得ることから始めます。
 JVCは彼らが村人たちを引っ張り、村全体で病気予防をすすめるため、長老をメンバーとする「保健委員会」を立ち上げました。「定期的に集まること」「記録を残すこと」など“グループ”としての保健活動に必要なノウハウを伝え、繰り返し対話と研修の場を設けました。その結果、これまで保健委員会によって、ゴミ処理、井戸の衛生改善、保健関連資料室の設置などがおこなわれました。
 当初は定期的に集まることすら難しく、JVCに対する資金や物資の要求ばかりが目立ちましたが、次第に「自分たちが何かしよう」という意識が高まってきました。2014年には彼らの発案で、村の青年ボランティアに呼びかけてマラリア患者の早期発見キャンペーンを実施するという、画期的な進展も見られました。

家族を守るお母さん

 アフガニスタンの妊産婦死亡率や乳幼児死亡率は未だ世界最悪レベルにあり、母子保健は最重要課題の一つです。元気な子どもを育て家族が安心して暮らしていくためには、健康なお母さんの存在が欠かせません。
 活動地では、女性が親族以外の男性に顔を見せない習慣があるため、JVCも女性だけのグループを各村に作り、安全なお産や家庭での衛生改善などについて学ぶ母親教室を開いてきました。村のお母さんたちは文字の読み書きを学ぶ機会がなかったため、教材は全てイラストで説明しています。JVCは今後に向けて、母親教室の参加者がともに学び、互いの実践を共有しながら、地域の課題について考え行動する自助グループへと発展していくようサポートしています。

学校は大事な健康教育の拠点

 人びとが健康意識を高める効果的な場所の一つが学校です。JVCは教員たちと協力して、子どもたちが健康的な習慣を身につけ、家庭にも伝えられるよう、学校での健康教育を促進しています。
 これまで、教員・生徒それぞれに向けた応急処置の研修を重ねてきました。特に医療施設にかかることが難しい僻地の村では、適切な応急処置が命にかかわるため、この研修は効果を上げています。参加した生徒からは「今までケガの対処は医者の仕事だと思っていたけれど、自分でもできるんだと実感した」という声も。
 現在は、形骸化している学校の“保健教員グループ制度”を活性化させるべく、意志を持つ教員を選出し、校内健康キャンペーンなどを企画しています。

 これらの活動は、治安が悪いと言われて久しいアフガニスタンで途切れることなく、段階的に発展してきました。幸いにもJVCの活動地は、脅迫など他で見られるような危機から免れ、国内で最も平穏な地域の一つになっています。
 それはまさに、私たちが草の根のNGOとして、どんな時も中立な立場から診療所で人びとを診ながら、長老や母親、教員たちと対話を重ねて培ってきた信頼によるものだと確信しています。

復興への道のりは長く遠い

 世界から薄れていくアフガニスタンへの関心と、この国にまとわりついてしまった紛争国としての悲しいイメージ。何十年もの間、絶え間ない混乱のなかで過ごしてきた多くの人びとは慢性的な人道危機に瀕し、今日でも難民・国内避難民問題が続いています。
 ある時、現地職員のもらした言葉が、私の心に突き刺さりました。
 「家を出る時、玄関先で子どもたちに『お父さん、危険だから行かないで』と泣かれるんだ」。
 私たちは無意識のうちに、彼らがまるで爆撃や地雷などの脅威に慣れているかのように感じていたのかもしれません。しかし、当たり前に不安の中で涙を流し、家族の健康を守るため必死で日々を生きているのです。仲間のそんな現実を知るとき、活動を通じて生活のなかに安心を生み出したい、そして日本にいる者としてこれを広く発信していかねば、という思いをいっそう強くします。
 JVCは“人びとが持つ力を引き出す”をモットーに、アフガニスタンの人びとの力を信じ、復興支援に携わっています。復興支援とは、紛争によって破壊された生活基盤と傷ついた心が、もう二度と壊されてしまわないよう、丁寧に修復していく息の長い営みなのです。


◆現場から◆

 アフガニスタンでは、顔から下が布と紐でぐるぐる巻きに包まれている赤ちゃんをよく見かけます。初めて見た時はびっくりしたのですが、現地の人が「しっかりと縛られていると安心して落ち着くのかぐっすり眠るんだよ」と教えてくれました。

いつでも元気 2016.2 No.292