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いつでも元気

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支え合い まちづくり 人をつなぐ虹の架け橋に 愛媛 生協農園レインボーファーム来住

 えひめ医療生協・愛媛生協病院ブロックは今年二月、同病院裏手で生協農園を立ち上げました。農園の名前は、病院のある松山市来住町にちなんで「レインボーファーム来住」です。ほとんどの人が農作業経験の無いなかでの運営。初めは農園をしている人に手伝ってもらいながらでしたが、今では医療生協独自の活動になりました。

(文・井口誠二記者/写真・酒井猛)

農作業に集まった組合員さんたち。前列左から2人目が伊勢暉昭さん、右隣に加代子さん、右端に石川さん。後列左端に村中さん

農作業に集まった組合員さんたち。前列左から2人目が伊勢暉昭さん、右隣に加代子さん、右端に石川さん。後列左端に村中さん

 

共同運営が始まり

地図 えひめ医療生協の支部長会議では「退職後の男性が家に閉じこもりがちになるので、何とかしたい」という話題がたびたび上がっていました。そこで愛媛生協病院ブロック・つばき支部の支部長・池本猛さんが「農園をやろう」と発案し、病院と相談して実施が決まりました。しかし、肝心の農地となる土地が見つかりません。
 そのころ、病院内にあるコミュニティカフェ「ら・ぽーる」を医療生協と共同運営しているNPO法人ワーカーズコープでは、カフェで出す料理に自家製野菜を使おうと、農園プロジェクトをおこなっていました。プロジェクトを始めたワーカーズコープの大森哲也さんから「いっしょにやろう」と池本さんに声がかかり、病院裏手の大森さんの知人の土地を借りられることに。「農薬・化学肥料・除草剤を使わない」というルールを決め、農園プロジェクトと共同しての生協農園が始まりました。

農園はオーナー制度

 池本さんと大森さん二人で呼びかけて、いっしょに農作業をする仲間とオーナーを募りました。一〇〇〇円の加入金を支払うとオーナーになることができ、収穫した野菜が配られる、収穫祭に招かれるといった特典があります。この加入金で種や苗、肥料などを買い揃えて農園を始めようという試みでした。
 病院の職員にも呼び掛けると、オーナーは二五人、そのなかで「農作業も手伝う」と言ってくれた仲間も一〇人前後が集まりました。元病院職員の矢田泰彦さんは「草むしりくらいはできるかなと思い参加しました。退職後は暇だろう、なんて誘われたけれど、生協活動に関わっていると、まったくそんなことはないですね」と笑います。
 また「組織課職員としてぜひ関わらねば」と参加した病院職員の村中恵さんは農作業にはあまり参加できないものの、事務仕事を一手に引き受けています。「今は、組織課だから、というよりは一組合員として参加していますね」と話します。
 農作業は無理せず行けるときに行く、というのが生協農園のスタンスです。都合がつかないと二週間誰も農園に行かないということもありましたが、最初に植えた七五本のジャガイモは大きく実り、コンテナ六杯分にもなりました。
 味も上々で、支部長をしている妻に誘われて農園に参加したという伊勢暉昭さんは「友達にわけたら大好評で、次に採れるのいつですかって予約をもらっているんですよ」と目を細めます。

楽しみと反省と

 「農作業は良い気分転換」と話してくれたのは暉昭さんの妻・伊勢加代子さん。興味はあっても、個人でやるには敷居が高い農園。共同農園は一人で背負うものが少なく参加しやすいようです。
 「医療生協の活動は屋内での会議が多いけど、農園に来ると外の風を感じられる。暑いときは大変だけれど、土や草を感じるのは、身体が解放されるようでいいなぁと思います」と加代子さん。
 一方で、気ままな運営に反省も。家庭菜園をしている組合員さんからは「生き物なんだからね」と叱られました。「植物も生き物であり、作って育てる以上、しっかり管理して収穫しなければいけない。当たり前のようなことだけど、農園運営を通じて本当に実感しました」と理事の青木一子さんは言います。

収穫祭、そして独立

 八月一日、生協農園最大のイベント・収穫祭がおこなわれました。オーナーや近所の人たちも集まり、農園で収穫したトマトをソースや具に使った手作りピザや枝豆などが振る舞われ、大盛況。料理に使わなかった野菜は、一袋一〇〇円で販売しほぼ完売。この売り上げでこれまでの費用が回収でき、「農園運営のサイクルができた」と池本さんは話します。
 この収穫祭を機に、生協農園はワーカーズコープとの共同運営から独立し、初めて医療生協独自の農園となりました。これからが本番となる生協農園、まずは継続そのものが課題です。また、同じ土地で農地を耕している病院の精神科デイケアの利用者さんたちと、交流を持ちたいという新たな目標も生まれています。
 「ゆくゆくはさまざまな支部や町のレインボーファームを作りたい」と、理事の石川志朗さんは語ります。地域をつなぐ虹の架け橋に、その歩みはまだ始まったばかりです。

いつでも元気 2015.12 No.290