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いつでも元気

いつでも元気

元気スペシャル/無差別・平等のまちづくりを/第12回共同組織活動交流集会 in 近畿

 ドイツの首都ベルリンの夏は、いつになく陽ざしの強い日が続いていました。ナポレオンによって一度はフランスに持ち去られたブランデンブルク門の上のシンボル「四頭立ての馬車に乗った勝利の女神像」が、今にも天空に向かって飛び出していきそうです。
 門の前のパリ広場は、世界からやってきた観光客で賑わっていました。

早期解決を願って

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自らの体験を訴える元「慰安婦」の李玉善さん

 八月一四日、夕方の四時少し前に警察官が数人やって来て広場にスペースをつくると、プラカード や横断幕を持った人びとが次々と集まってきました。ベルリン在住の日本人グループ「ベルリン・女の会」の呼びかけで集まった日本人・韓国人・ドイツ人など 約五〇人。プラカードや横断幕が広場いっぱいに並び、世界各地からやってきた人びとの目を引きます。
 一九九一年八月一四日は、韓国の金学順さんが日本軍「慰安婦」の被害者として名乗り出た特別な日です。毎年八月一四日は、世界各地で「慰安婦」問題の解決をめざす行動が続けられています。
 今年も「ベルリン・女の会」は、国連自由権規約委員会が日本政府に勧告した「慰安婦問題の謝罪と補償」の早期解決を日本政府に訴える行動にとりくみました。
 元「慰安婦」の李玉善さんも、不自由な体で韓国から参加。車椅子に座りながら、集まっている人びとに軍の慰安所で強制された過酷な体験を訴えました。
 足を止めてチラシを受け取る人のなかには、「戦時性暴力は日本だけの問題ではなく、戦争のあるところで起きている世界の問題だからしっかりがんばって」 と励ます人もいれば、「『慰安婦』問題が国連でもっと早く解決されていれば、その後のユーゴ紛争のときに女性が受けた性暴力問題の解決にも大きな力になっ たはず」と話す人もいるなど、その関心の高さに驚かされました。

安倍首相あてに要望書提出

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ベルリンのブランデンブルク門前のパリ広場でおこなわれた「日本軍『慰安婦』メモリアル・デー」で訴える「ベルリン・女の会」のメンバーと賛同者たち(2014年8月14日)

 「ベルリン・女の会」は、外国人男性と日本人女性の間に生まれた子どもが日本国籍を持てない不 条理さに対し、日本の国籍法を学びあうなかで三二年前に生まれました。同じように外国で暮らす女性の立場から、看護師として働きに来ていた韓国の人々とも 交流を持つようになり、「慰安婦」問題を日韓共通の課題としてとらえるようになったのです。最初は韓国の人たちの行動に参加しましたが、やがて共同で開催 するようになり、昨年からは自分たちで主体的に行動しようと計画を立て、ドイツの団体にも参加を呼びかけました。
 呼びかけに応じた賛同者は、日本人・韓国人のほか、ドイツ女性の輪、アムネスティ・インターナショナル・ドイツ支部、キリスト教団体など二六団体と三個 人で、予想以上にドイツ人の関心は高いものでした。賛同者は連名で、安倍首相にあてた問題の早期解決を促す要望書を、日本大使館に届けました。

歴史と向き合うドイツ

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「慰安婦」問題について「ベルリン・女の会」のメンバーの説明に聞き入る人たち

 歴史問題を絶えず検証するドイツ。なかでも、東・西ドイツの統一によって再び首都になったベルリンは最も厳しく歴史と向き合い、ナチス・ドイツの犯した過去を克服し続けて、現在と未来に向けて発信しています。
 一九九三年、ドイツ連邦政府によって設置された国立中央追悼所(ノイエ・ヴァッヘ)は、国家・民族を超えて戦争と暴力による犠牲者を追悼する施設です。 ここには日本語を含む七カ国語の言葉で、次のような追悼文が掲げられています。
 「…我々は戦争で苦しんだ各民族に思いをいたす。我々はそうした民族の一員で迫害され、命を失った人々に思いをいたす。我々は、戦争と戦争の結果によ り、故郷で、捕らわれの身で、また追放の身で、それぞれ命を落とした罪なき人々に思いをいたす」

石碑に込められた願い

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ポツダム市の湖畔に設けられた「ヒロシマ・ナガサキ広場」の追悼碑。追悼文はドイツ語、日本語、英語の3カ国語で書かれている

 ベルリンの西隣、ポツダム市の湖畔には、ポツダム会談(注)に出席したアメリカ大統領のトルー マンが宿泊した邸宅が保存されています。二〇一〇年には邸宅前の「ヒロシマ・ナガサキ広場」に石碑が建てられ、この邸宅でトルーマンが原爆投下を決断した と記されています。ベルリン在住のアメリカ人からは石碑の設置に異論が出ましたが、ポツダム市議会は、「二度とこのような悲惨なことが起きないように平和 を願って碑を造る」との立場を表明し、設置を決めました。

日本は本当に“民主主義国家”か?

 ドイツ国内にはこのほかにも、歴史を刻む記念碑が数多く造られています。強制収容所跡には「加害と被害の記憶を共有する公的な施設」を意味する表示 「Gedenkenstaette」があります。そこには、「たとえドイツにとって負の歴史であっても葬り去るのではなく、次世代に語り継ぐことによって 再び過ちを繰り返さない」という決意が込められています。
 共に敗戦国となったドイツと日本。戦後の再建を果たし、いまや経済大国として国際社会でも責任ある立場にあります。しかし、ドイツが近隣諸国にたいして 「謝罪と和解」の上に信頼を築きヨーロッパ連合(EU)のリーダーとして歩んでいるのに対し、日本はアジア諸国、特に中国・韓国に対する戦争責任問題を解 決しないままギクシャクした関係を続けています。
 昨年の国連演説のなかで、安倍首相は「女性の人権問題」をとりあげ、女性に対する性暴力の被害にあった人々には物心両面で支援をおこなうと明言しまし た。しかし日本軍「慰安婦」の問題は“決着済み”との立場で、公式謝罪も補償も無視する態度をとっています。
 また、国連人種差別撤廃委員会が「国籍や人種を理由に差別をあおるヘイトスピーチ(憎悪表現)を規制するように」と日本政府に勧告する事態になっていま す。東京や大阪などで、在日朝鮮人に対し「殺す」などの暴言を吐くデモや宣伝が、くり返しおこなわれているからです。「日本は本当に人権を尊重する民主主 義国家なのか」と疑問を投げかける世界の厳しい目を、感じないではいられません。

世界の平和に責任を

 この夏、広島に原爆が投下された八月六日に、ベルリンの日本大使館で「平和のためのコンサート」が催されました。あいさつしたドイツ外務省のシュタイン ライン政務次官は、「今、我々の世界で欠けているのは平和です。ヨーロッパではEUの統合で暴力を防ぎ、世界の平和に責任を持たなければなりません。領土 問題などアジアで起きていることを憂慮していますが、大事なのは相互理解の意思で、対話が大切です」と語っていました。
 歴史認識は異なるとしても、問題解決のためには相互に努力しなくてはならない。私はドイツを訪れる度に、そう考えさせられます。

いつでも元気 2014.12 No.278