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いつでも元気

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特集1/新基地建設着工に抗議/怒りの島・沖縄

写真家・森住 卓

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新基地建設反対行動の参加者=8月14日、キャンプシュワブゲート前

 ご存じだろうか。「固き土を破りて、民族の怒りに燃ゆる島 沖縄よ」という歌詞で始まる「沖縄 を返せ」(作詞・全司法福岡高裁支部、作曲・荒木栄)という歌を。沖縄の本土復帰(一九七二年)運動でさかんに歌われた歌だ。新基地建設反対のたたかいの 現場にいると、この歌詞がリアルに胸に迫ってくる。
 第二次世界大戦では日本で唯一の地上戦がおこなわれ、県民の四人に一人が犠牲になった沖縄。戦後も六九年間、米軍基地の重圧にさらされてきた。
 そして今、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の「移転」と称して、新たな米軍基地が米海兵隊基地キャンプシュワブ(同県名護市辺野古)の沿岸部に建設さ れようとしている。日本政府の沖縄への仕打ちに「もう我慢ならん」と、沖縄中が怒りに燃えている。

ふくれあがる抗議者

 県民の辺野古新基地建設反対は七四%(「琉球新報」今年五月五日付)で、民意は明確だ。それにもかかわらず、仲井真弘多県知事は昨年末、安倍内閣の圧力 に屈して「県外移設」の公約を投げ捨て、新基地建設に向けた周辺海域の埋め立てを承認した。
 そして七月早々、基地関連工事が始まった。八月一八日には埋め立てに先立つ海底ボーリング調査(掘削調査)も始まったが、掘削機の台船は小型化され、掘 削箇所も予定より大幅に減らされた。政府は調査の格好だけを取り繕って、先を急いでいる。「工事は進んでいる」と県民をあきらめさせ、沖縄県知事選挙(今 年一一月一六日投票)で現知事が負けても後戻りできないようにする作戦だ。
 しかし着工後も、新基地建設に反対する市民の数はふくれあがっている。七月末には、キャンプシュワブゲート前で「二度も三度も日本のために命を捨てるわ けにはいかない。なぜ沖縄だけ」と涙ながらに訴える辺野古の老婆の姿が地元マスコミで報道された。これに共感した県民など、連日二〇〇人を超す人々が炎天 下、抗議の声をあげている。

「怒りのマグマが噴き出ている」

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埋め立て準備の作業中、米海兵隊の演習が始まった。付近の海底にはジュゴンのエサの海草藻場があり、たくさんの食み痕が確認されたところだ=7月23日、キャンプシュワブ

 時折強い雨に見舞われた八月一八日午後、同ゲート前で年配の女性がマイクを握った。大浦湾を挟んでキャンプシュワブの対岸に面している名護市汀間在住の松田藤子さん(74)だ。
 「いちばん被害を受ける地元住民が声をあげなければ(基地建設を)認めたことになる。無力感、あきらめは敵。県民無視、沖縄の人たちへの軽べつ、基地計 画の後出し、ごまかしが許せない。心の底から怒りのマグマが噴き出てきていますよ。ワジワジ(腹が立つ)しますね」
 大浦湾に面した二見区・瀬嵩区・汀間区など一〇区の行政区を「二見以北」と呼ぶ。一〇区の住民は「辺野古・大浦湾に新基地つくらせない二見以北住民の 会」を結成し、六月二七日、県知事と沖縄防衛局に住民一四〇〇人中九八一人の反対意見を集めた署名を提出した。
 その会長になったのが松田さんだ。松田さんは戦争で父を亡くし、戦後、母子家庭で育った。父親のいない家庭の貧乏と惨めさを味わい、母親が身を削るよう に働く姿を見て成長した。だから「戦争は絶対ダメだ」と強く思っている。
 松田さんは大学卒業後、沖縄で教師になった。彼女がいた教員組合のスローガンは「教え子を再び戦場に送るな」だった。集団的自衛権行使容認の閣議決定や 秘密保護法など、日本が「戦争する国」になろうとしている今、「現実味のあるスローガンになってしまった」と危機感を募らせる。だからこそ、なおさら「戦 争につながる新基地建設は許されない」との訴えに力がこもる。

県民の屈服ねらう警備体制

 工事関係車両が激しく出入りするキャンプシュワブゲート前では、米軍が雇った基地警備員、日本の沖縄防衛局職員・県警機動隊や民間警備会社の警備員が 物々しく警備している。新基地建設に反対する市民を排除するため、何重にも配備されている。
 海でも、海上保安庁が巡視船一九隻・ゴムボート四〇隻以上・小型警備艇数隻など圧倒的な体制と機動力で反対の声を押さえつけている。過剰警備だと猛烈な批判を浴びているが、政府は自衛艦派遣も視野に入れている。
 「琉球新報」(八月一八日)は、社説で次のように書いた。
 「住民を丸ごと、力ずくで屈服させようとする政府の意思が、これほどあらわになったことがあっただろうか。確かに抵抗運動への弾圧は過去にも散見され る。だが辺野古移設は県民の七四%が反対する事案だ。一県の圧倒的多数の民意を踏みにじって強行した例が他にあるか。百姓一揆弾圧を想起させるが、近代以 降なら『琉球処分』と『軍官民共生共死』を強いた沖縄戦しかあるまい。沖縄にしか例がないなら構造的差別の表れに他ならない。国際的にも恥ずべき蛮行だ」

反対する市民を実力で排除

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侵入禁止海域を示すフロートよりはるかに離れたところにいる「平和丸」を、海上保安庁のゴムボート2隻が挟み撃ちに。海上保安官は「平和丸」に乗り込んできてエンジンキーを抜き、船長(中央)を拘束した。法的根拠もなく、令状もない=辺野古沖(8月15日)

 日本中が平和の祈りに包まれた終戦記念日の八月一五日早朝、海上保安庁は一三隻の大型巡視艇で辺野古の海を取り囲み、真っ黒い数人乗りのゴムボート四〇 隻を投入して、工事作業海域から新基地建設に反対する市民らが乗るカヌーやボートを実力で排除した。非暴力の原則を守りながら反対を訴えていた市民らは、 国家の暴力の前にひとたまりもなかった。
 辺野古では朝日が昇ると、午前中は逆光になり、景色がモノクロに見える。巡視艇やゴムボート、沖縄防衛局にチャーターされた漁船など一〇〇隻近くの船が 不気味なシルエットで見える。合計一〇〇隻以上の船で辺野古の海が埋まってしまった。沖縄戦のとき、米艦船が集結したようすを撮影したモノクロ写真を見て いるようだった。「今、この沖縄は日本政府によって攻撃されている」と実感した。

止められない「オール沖縄」の奔流

 昨年一月、沖縄県内の全市町村長が署名し、「オスプレイ配備撤回、米軍普天間基地の撤去・県内移設断念」を迫る建白書が、政府に提出された。このときの 首長らを中心に七月二七日、沖縄経済界関係者も参加した「島ぐるみ会議」が結成された。保守も革新もいっしょになった、かつての祖国復帰運動のような島ぐ るみのたたかいが始まっている。
 島ぐるみ会議結成大会であいさつした同会議共同代表の金秀グループ(建設・小売り業)の呉屋守将会長は「経済活動も大事だが、ウチナンチュー(沖縄県 民)の尊厳や人権、平和な暮らしを守ることはもっと重要だ」と発言した。「オール沖縄」の動きは、新基地建設反対・基地依存型社会からの脱却と同時に、奪 われてきたウチナー(沖縄)の誇りとアイデンティティーを取り戻す運動でもある。
 政府が強権を使って基地押しつけを続けるなら、沖縄との関係は抜き差しならないものになっていくだろう。一一月の沖縄県知事選挙で、基地に頼らずに生き ることを選択した人々のうねりが、押しとどめることのできない奔流となって、本土政府に迫っていくに違いない。噴き出す怒りのマグマは、もう止められな い。