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いつでも元気

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元気スペシャル オスプレイ配備1年半 沖縄の「負担軽減」どころか… 写真家・森住 卓

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普天間基地に着陸するC-130輸送機。民家の屋根ぎりぎりだ。「墜落が心配で、孫も泊められない」と金城和政さん(宜野湾市上大謝名、2014年1月24日)

 米軍基地はいらない──。一月の名護市長選挙で、改めて明らかになった沖縄県 民の意志。ところが安倍政権は、辺野古「移設」強行をはかるばかりか、沖縄の「負担軽減」を名目に、本土各地で海兵隊輸送機オスプレイを使った日米共同訓 練を計画、実施している。沖縄は今…。

宜野湾市 耳から離れない低周波音

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 宜野湾市にある米軍普天間基地。住宅密集地のど真ん中に広がる「世界一危険な基地」だ。視察した米国のラムズフェルド元国防長官が、「こんなところで事故が起きない方が不思議だ」と言ったのは二〇〇三年だが、一〇年たった今も、危険を抱えたまま居座っている。
 名護市長選挙の数日後、普天間基地南側の上大謝名地区で取材した。上大謝名自治会長の大城ちえ子さんの自宅は、滑走路南端から五〇〇メートル地点にある。
 「名護の選挙は良かったですよ。国は沖縄県民をバカにしている。私たちは、普天間でいつ事故が起きるかと一日中緊張しています。一日も早くどこかに行っ てほしいけど、辺野古に押しつけるのは反対。私たちの苦しみを押しつけることになるから。沖縄から基地は出て行って」
 民家の屋根すれすれに米軍機が離着陸し、騒音で会話が中断する。夜、ホテルに帰ってからも、エンジンやプロペラの回転で発生する低周波音が、耳について 離れなかった。

宜野座村 夜中も家の真上に米軍機が

 オスプレイが普天間基地に配備されたのは二〇一二年一〇月からで、現在二四機体制という。宜野座村城原地区に住む泉忠信さんは、同年一一月二六日からノートをつけ始めた。毎日飛んでくるヘリやオスプレイの飛来時刻と音量が、びっしりと書き込まれている。
 「わざわざ家の真上を選んで通過するようなコースなんですよ。ひどいときは九八・九デシベルです」。これは電車通過中のガード下と同じ騒音だ。泉さんの 家は米軍・中部演習場のヘリパッド(離着陸帯)から三〇〇メートルしか離れていない。
 「夜間も演習のために飛んでくる。まるで家を標的にされているようで怖い。だから夜は、二階の部屋に電灯をつけて民家があることを知らせている。孫たち にも、低周波の影響が出ないか心配です」

金武町 治外法権の米軍基地

 1月16日、山火事発生。オスプレイが大きなバケツをぶら下げ、ダムから水をくみ上げては火元 めがけて撒いていた。米軍キャンプハンセンの訓練場内で起きた火災である。演習で、米兵のたばこの火が燃え移ったか、使った小火器の実弾が燃え移ったか。 基地内は治外法権だ。火事だというのに、消防署さえ立ち入りできない。

伊江島 村も知らぬ間にヘリパッドが

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オスプレイの夜間訓練の光跡。暗い空に無灯火で進入して来るときには不気味な音しか聞こえず、機数は確認できない(伊江島演習場2013年12月3日)

 普天間に配備されて以降、オスプレイが伊江島演習場に飛来した回数は、同村役場が把握しているだけで二〇〇〇回を超える。日中はもとより、早朝・夜間も、離発着訓練や降下訓練がおこなわれている。
 今年一月には、オスプレイからパラシュートで降下訓練中の兵士が、強風であおられ演習場外に降り、畑を荒らした。
 「いつ大惨事になるかわからない。オスプレイは早くいなくなってほしい」と同村村議の名嘉実さんは訴える。
 村当局も知らないうちに、演習場西側にオスプレイのヘリパッドが六カ所も作られた。

1日で3頭も牛の死産

 演習場に近い西崎区で四〇頭の乳牛を飼っている小橋川嘉保さん。牛舎は演習場の滑走路の端からわずか八〇〇メートルのところにある。
 酪農を始めて七年目のとき、伊江島演習場に垂直離発着戦闘機のハリアーが来た。騒音で牛が驚かないように暴風ネットで牛舎を囲い、ハリアーが見えないようにしたが、牛の早産が相次いだ。
 オスプレイで被害はさらに拡大した。昨年六月から年末までに子牛一一頭が産まれたが、五頭が死産だった。一〇月には一日で三頭もの死産があった。「こんなことは初めてだよ」と小橋川さん。
 「まるで牛舎をめがけてのように降りてくる。飛び立つときは、牛舎の真上にパイロットの顔まで見える。怖い。いつ墜落するかもわからない」

低周波音が死産の原因か

 米軍機の騒音のなかでも、低周波音は、人間や動物に不快感や圧迫感をあたえ、頭痛、吐き気などを引き起こすものだが、オスプレイの低周波音は環境基準値を超えている。とくに離着陸時の低周波騒音は深刻だ。
 相次ぐ牛の死産は「オスプレイの発する低周波音が原因ではないか」と琉球大学の渡嘉敷健准教授が調査に乗り出した。
 西崎地区の儀間五子区長のもとには「子どもが騒音におびえて目を覚まし、寝られなくなる」という若いお母さんたちの苦情が数多く寄せられている。

本土各地に日米共同訓練を拡散

本土各地でも 「防災」名目に実戦訓練

 事故が相次ぎ、「未亡人製造機」の異名まで持つオスプレイ。昨年八月にも、アメリカ本国のネバダ州で着陸に失敗し機体炎上という重大事故を起こしている。
 オール沖縄の反対を無視して配備が強行されたが、問題は沖縄だけではない。昨年一〇月、滋賀県饗場野演習場でおこなわれた日米合同演習で、初めてオスプ レイが使われた。さらに防災訓練と称して、高知、福岡、和歌山などで、オスプレイを使った訓練計画が具体化している。
 安倍政権は、本土への拡散を「沖縄の負担軽減だ」という。しかし東村高江には、新たなヘリパッドを建設。沖縄でのオスプレイ訓練も増強しているのだ。
 本土では、沖縄ではできない自衛隊と米軍の合同演習が可能だ。沖縄にはない広い演習場でより実戦的な訓練ができるからだ。

自衛隊もオスプレイ導入

 沖縄県平和委員会の大久保安弘事務局長はこう指摘する。「安倍政権は、二〇一五年から一〇年間で、一七機のオスプレイを導入する計画です。自衛隊が米軍と一緒に海外で戦争できる体制を、さらに強化しようとしているのです」。
 来年度予算では、導入のための調査費一億円が計上された。さらに、米軍岩国基地(山口県)には空中給油機(KC─130)が配備される予定だ。これによ りオスプレイの行動範囲が広がり、全国どこにでも飛んでいけるようになる。
 墜落事故の危険や騒音被害が、日本中に拡がろうとしているのだ。

いつでも元気 2014.4 No.270