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いつでも元気

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特集1 介護保険制度 「要支援」切り捨てに「生活できない」の声

 施行当時から「保険あって介護なし」と批判されてきた介護保険制度。「社会保障と税の一体改革」で社会保障の公費負担削減をねらう政府は、さらなる制度改悪を検討しています。
 そのなかには、「要支援1・2」に対するサービスを介護報酬と国の基準にもとづいた全国一律の制度ではなく、「自治体独自の基準と責任」でおこなうよう 求める変更も含まれています。「要支援」を切り捨てる内容に、利用者・事業者からは「生活できない」との声があがっています。

 「要支援」は、二〇〇六年に導入された要介護認定の基準で、「要介護状態に陥らないよう予防する」ことが目的とされています。
 現在、要支援認定を受けているのは約一五〇万人。そのうちサービスを受けているのは約九六万人です。「居宅(在宅)介護予防サービス」として、デイサー ビスやデイケア、訪問看護、家事援助などのホームヘルプサービス、車いす・介護用ベッドなどの福祉用具貸与などを受けることができます。利用者にとって は、自宅での暮らしを支える“要”となる制度です。
 「要支援」の打ち切りにより、これまで国の責任で実施していた居宅(在宅)介護予防サービスは「市町村の事業」となります。事業内容は市町村の裁量にま かされることになるため、「住んでいる地域によってサービスの内容がちがう」「これまでと同じサービスは受けられない」などの問題が生じることは避けられ ません。

「この先どうしよう」募る不安

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台所に立つ和子さん。「今はリハビリのおかげで何とか生活できているのに…」

 東京都江戸川区で暮らしている和子さん(86)は要支援1です。腰椎脊柱管狭窄症と脊椎症をかかえています。
 一〇年前に脳腫瘍の手術をしており、その後遺症もあって、右足が不自由です。週一回のデイサービスを利用し、車いすの貸与を受けていますが、「自分の足 で歩きたい」との強い思いで、杖をついて歩くことを心がけ、車いすは長時間の移動時のみ利用しています。
 「要支援」のサービスが自治体の裁量にまかされた場合、和子さんは今と同じサービスを受けることができなくなる可能性があります。そうなれば、生活自体が維持できなくなります。
 和子さんの介護保険料は月額七二〇〇円、利用料は約二七〇〇円です。車いすの貸与料は五〇〇円。近医のリハビリテーション科に週二回、心療内科に月一回通院しているために医療費もかかります。
 「年金は下がるのに介護保険料は上がっていくし、四月からは消費税が増税される。この先どうしようと考えることばかりです」と和子さん。医療・介護費用 は今でも大きな負担で、“これ以上お金がかかるなら、あきらめるしかない”のが実状です。
 「これまで、なるべく人に頼らず、自分でできることは自分でしようという思いで生きてきた」と言う和子さん。
「いま通っている事業所でリハビリを受けられなくなったら、私はどうしたらいいのでしょう。お金があればどうにかなるのかもしれないけれど、年金生活ですからね…本当に困ります」と表情をくもらせます。

事業者・自治体の声は

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全日本民医連作成のチラシ

 和子さんの介護保険利用計画(ケアプラン)を作成したのは、南葛勤医協・ケアサポート一之江の久手堅るみ子所長です。
 「デイサービスに通ったり、リハビリをおこなったりといろんな人と関わるなかで、和子さんは以前に比べて前向きになられました。“自分で動ける”という ことは、とても大切なこと。リハビリが受けられなくなり、足の状態が悪化して動けなくなったら、自宅に閉じこもり、行き場を失ってしまうのではないか」と 危惧します。
 国から事業を「丸投げ」される市町村も、困惑しています。北海道勤医協労働組合は、今年八月末から二カ月にわたり道内四〇市町村と懇談しました。同組合 の室岡昇副委員長は、「自治体の担当者は非常に困っていた。『受け皿を準備できない』『自治体独自では難しい』など、どう対応すればいいのか悩んでいる自 治体ばかりだった」と話します。「ほかの自治体と足並みをそろえなくていいのか」「予算はどうするのか」──自治体の本音がみえます。

改悪許さない運動を

 全日本民医連は一〇月、介護保険制度改悪の内容を知らせるチラシを作成。さらに来年の通常国会 にむけて「要支援者のサービスは市町村の事業に移さず、内容を充実させること」「利用料の引き上げを実施しないこと」などを求める署名を、介護保険の利用 者や家族、地域に大きく広げる運動を開始しました。
 政府は二〇一二年に可決された社会保障制度改革推進法で、介護サービスの「効率化及び重点化を図る」ことを強調。利用料引き上げやサービスの保険はずし をすすめ、「介護サービスを産業化して企業が儲けられる市場」とする方向で介護保険制度を改悪しようと検討しています。来年、改悪法案を国会に上程し二〇 一五年四月からの実施をめざしているとされています。
 全日本民医連の林泰則常駐理事(介護・福祉部)は、「“いつでも、どこでも、誰でも”必要な介護が保障される介護保険制度にすべきです。改悪法案をつく らせない、国会に提出させないために、署名や自治体との交渉、国会議員への要請などのとりくみを進めたい」と話します。署名は年内に二〇万筆が目標です。

文・宮武真希記者/写真・酒井 猛

サービスなくなれば「代わりがない」

─介護保障を求めるひろしまの会 アンケート結果報告書より

 今年八月、「介護保障を求めるひろしまの会」(広島県)はアンケートを実施しました。「要支援 1・2の利用者がどんな状況でサービスを利用されているのか」「サービスが受けられなくなったらどんな困難が生まれるのか」の実態を明らかにすることが目 的。寄せられた四三九人の声のなかから、結果報告書でまとめられている内容の一部を紹介します。

■利用しているサービスは「ヘルパー」「デイサービス・デイケア」が約9割

 家事や健康悪化への不安を抱える方が多く、「それらを改善したい」という思いが反映していると言えます。

■もっとも役立った・助かったサービスも「ヘルパー」「デイサービス・デイケア」

 高齢者の生活をささえる重要なサービスであることがわかります。

■良かったこと・改善したことは「家事に不足がなくなり、生活が安定」「定期的に運動することで元気になった」「相談相手が増えた」

 生活不安の改善や健康維持に、大きく役立っていることがわかります。さらに、友人や相談相手ができることで、閉じこもりや孤立を予防する効果があることもあらわれています。

■今の制度が利用できなくなったら「代わりになるものがない」が7割以上

 三一四人が「利用できなくなったとしても、代わりになるものがない」と答えており、代わりとなる受け皿がないという厳しい実態を示しています。
 「介護保障を求めるひろしまの会」の大畠順一事務局長は、「国はヘルパーがおこなっている業務の専門性を理解しておらず、その役割も軽視している」と指 摘。「ヘルパーは、利用者さんの体調や状態をみながら、適確に家事や買い物の援助をしている。利用者が意欲をもって生きていくための大きな精神的ささえに なっている」と言います。
 同会は広島市に対し、「『軽度認定を介護保険からはずすな』『介護を安上がりにするな。利用者の命綱を切るな』と、来年の通常国会に法案が上程される前 に自治体として声をあげること」を求める要望書を提出しています。

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いつでも元気 2013.12 No.266