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いつでも元気

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Dr.小池の世直し奮戦記 「リンカーン」と日本国憲法

 安倍晋三首相が、映画「リンカーン」を見たそうです。
 しかし「憲法改正を政治目標に掲げる首相は大いに共感した様子(『読売』)」という報道には首をかしげてしまいました。安倍首相は、きちんと目を開けて、この映画を見たのだろうか──。

映画「リンカーン」が描いたもの

 映画「リンカーン」は、第一六代アメリカ大統領リンカーンが、奴隷制廃止のための合衆国憲法修正第一三条を米議会下院で可決させ、南北戦争を終結させるまでの苦闘を描いた映画です。
 映画の一番の見どころと言えば、議会での白熱した論戦ですが、その焦点は「いかに三分の二以上の議員の賛成票を獲得するか」です。なんてタイムリーな映画でしょうか。
 日本では自民党や維新の会などが、憲法九六条の「両院の三分の二以上の賛成で憲法改正を発議する」という規定を「過半数」に変えようと主張しています。 日本の規定が「世界でも指折りの改正困難な硬性憲法」だからというのがその理由です。
 しかし、アメリカでも憲法改定には上下両院の三分の二以上の賛成が必要だということを、「リンカーン」はリアルに描いています。安倍首相は、どんな思いでこのシーンを見ていたのでしょうか。

自民党改憲案は歴史への逆行

 しかも、リンカーンが求めた憲法の修正は、奴隷制度廃止という基本的人権の実現に向けたものでした。
 一方、日本で自民党がねらっている改憲案は、世界の平和の指針となる憲法九条を壊すものである上に、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」とした憲法九七条を全面削除する内容です。
 さらに表現の自由、結社の自由などを「公益及び公の秩序」に反しないものしか認めない憲法にしようとしています。これでは戦前の「大日本帝国憲法」に逆 戻りです。基本的人権を根こそぎ否定するような、時代錯誤と言わざるを得ません。
 憲法は、国民の基本的人権を守るために国家権力の横暴を抑えるものです。だからこそ、時の権力が好き勝手に変えられないように、改憲には高いハードルが設けられているのです。
 そして、奴隷制度廃止という人権を守るための当然の要求であっても、議会での三分の二以上の賛成が必要だというのが合衆国憲法の規定でした。こうした必 死の努力の末に議会の圧倒的多数の賛成を獲得したからこそ、リンカーンの奴隷解放は歴史に残る偉業となったのです。

自由と人権求めた先人に学んで

 ところが日本では、これとはまったく逆の動きが起こっています。自民党改憲案のように、人権に 制約を加える歴史逆行のために、改憲規定のハードルを下げようとしているのです。なんと恥知らずなことでしょうか。リンカーンが聞いたら怒り、厳しく糾弾 するのではないでしょうか。
 日本の政治家が、侵略戦争や日本軍「慰安婦」を正当化する発言を繰り返し、世界から批判の声が上がっています。こんな人たちが憲法を変えてしまったら、いったいどうなるのか。
 歴史への逆行など断じて許せません。自由と人権を求めた先人に学び、日本でのたたかいをさらに前進させ、憲法を生かした政治を実現するときです。

いつでも元気 2013.7 No.261