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いつでも元気

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くすりの話 157 今、注目のiPS細胞

Q:最近よく聞くiPS細胞って?

A:iPS細胞は、正式には人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells)と言います。「幹細胞」は分裂して体内のさまざまな組織・臓器をつくる細胞に変化しますが、ヒトの体の大部分を占める「体細胞」は、分裂して も“皮膚から皮膚”のように、特定の組織にしかなりません。
 この体細胞に少数の遺伝子を入れて培養することで、幹細胞を人工的につくったものがiPS細胞です。そしてこの技術を世界で初めて開発したのが、昨年のノーベル医学・生理学賞を受賞した、京都大学の山中伸弥教授です。
 iPS細胞は損傷を受けた臓器を修復する再生医療や、新薬の開発などに活用できるのではないかと注目されています。今年に入り理化学研究所が世界に先駆 けて、眼球の「加齢黄斑変性」(加齢によってものがゆがんだり、ぼやけて見えたりする病気)にiPSを用いる臨床研究を開始し、大きな期待が高まっていま す。

Q:ES細胞というのも聞いたことがあるけど

genki260_04_01A:iPS細胞が発明されるまで、再生医療の分野ではES細胞(胚性幹細胞)が注目されていました。ES細胞もさまざまな組織をつくる細胞に変化する性質を持っていますが、ES細胞をつくるには、受精卵か受精卵より細胞分裂が進んだ段階の細胞が必要となります。
 そのため、「ヒトになりうる受精卵を破壊する」という倫理問題があるのです。アメリカでは、公費によるヒトES細胞の研究が禁止されています。それにく らべてiPS細胞は、皮膚などの体細胞からでも幹細胞をつくり出せ、再生医療にも応用できる可能性が高いため、画期的な技術として期待されているのです。

Q:新薬の開発にはどう使われるの?

A:新薬は、薬のもととなる化学物質が発見されてから開発されるまで 約10年間かかり、多くの研究費が必要になります。また、医薬品はいくら高い有効性が確認されても、副作用が強ければ薬にはできません。薬害を防ぐために も、開発の段階で将来的に予想される副作用を見つけ出すことが求められています。そこでiPS細胞が注目されているのです。
 現在はまだ「ヒトの体細胞からできたiPS細胞から、完全に生体内と同じ細胞がつくれるかどうか」という課題が残されていますが、ヒトiPS細胞を使っ て心臓や肝臓などの細胞をつくることができれば、その細胞を用いて、薬が人体に及ぼす影響をより早く知ることができると考えられています。
 また、新薬をつくる前の化学物質の段階で有効性を確かめたり、難治性の病気を持つ患者さんの体細胞からiPS細胞をつくり、病気の原因を研究したりできるなどの期待もあります。
 現在、政府も山中教授などの研究を支援・推進しています。

いつでも元気 2013.6 No.260