Dr.小池の世直し奮戦記 “アベノミクス”に未来はあるのか
“アベノミクス”がもてはやされていますが、景気回復の実感はあるでしょうか。
株高で、わずか五カ月の間に一〇〇億円以上もの資産を増やした企業経営者・オーナー株主が数十人にものぼっています。一方で多くの国民にとっては、輸入 食料品や原油・原材料の高騰で、家計は苦しくなるばかり。黒田東彦・日銀総裁は「次元の違う金融緩和」でこれまでの二倍の二七〇兆円ものお金を銀行に流す と言っています。しかし内需が冷え込んでいるために貸出先がなく、結局は投機マネーに。政府と日銀が「投機とバブル」をあおる「禁じ手」に手を出す、危険 で無責任な経済政策です。
「3本の矢」──実は5本の毒矢
アベノミクスの「三本の矢」は、いずれも危険なものです。第一の矢の「大胆な金融緩和」は、前述の通り、「投機とバブル」に突っ込むもので、いずれバブル破裂の大破たんがやってくるでしょう。
第二の矢は「機動的な財政出動」ですが、やろうとしているのは「国土強靭化」。かつてのように、ゼネコン向け大型開発をばらまくだけで、残るのは借金の山です。
第三の矢は「成長戦略」ですが、規制緩和の矛先を正社員に。「限定正社員」の名で首切り自由の正社員をつくり、それ以外の正社員に「ホワイトカラー・エ グゼンプション」(労働時間規制の適用除外)──残業代なしの長時間労働を強いるのです。
実はこの三本以外にも、アベノミクスには隠れた二本の矢があります。
第四の矢は消費税増税です。二年間で今の二倍の一〇%に引き上げることで、国民の負担は一三・五兆円も増えます。くらしや景気をいっそう冷え込ませるた め、結果として消費税以外の税収が減り、国の財政にも深刻な打撃をあたえるでしょう。
第五の矢が社会保障削減です。生活保護切り捨て、年金引き下げ、医療・介護の負担増などが計画されています。
ただの矢ではありません。「五本の毒矢」が今、国民のくらしに襲いかかろうとしているのです。
求められる内需活性化の矢
その一方、アベノミクスには、内需を活性化する矢が一本もありません。そもそも「デフレ不況」の根本原因は、働く人の所得が減り続けていることです。だから消費も増えず、内需が落ち込み、企業の業績が悪化する悪循環が続いてきたのです。
日本共産党は「デフレ脱却の決定打は賃上げだ」と主張してきました。「物価が上がっているのだから給料も上げろ」という世論や運動も広がりました。これ らの声におされて安倍首相も「共産党の指摘もあり、経済団体に申し入れた」と答弁せざるをえませんでした。しかしアベノミクスは、こうしたわずかな賃上 げ・景気回復の動きさえも、根底からひっくり返してしまうのです。
賃上げの大波で景気回復を
私たちは、具体的な提案もしています。大企業の内部留保二六〇兆円のうち、たとえば一%を使うだけで、約八割の大企業で月一万円の賃上げができるので す。労働者への配分を増やすことで内需をあたためることが、大企業も含めた日本の経済活動を活性化します。それは、企業の社会的責任でもあると考えていま す。
「バブルと増税」の先に日本経済の希望ある再生などあり得ません。賃上げの大波を起こし、まともな雇用を実現して、地に足をつけた景気回復の道を進みましょう。
いつでも元気 2013.6 No.260