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いつでも元気

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特集2 むし歯予防 歯ブラシの選び方と正しい磨き方

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碓井芳枝
大分・けんせい歯科クリニック
(所長)

不健康な歯でハ(歯)ッピーな毎日を

 6月4~10日は、むし歯予防週間(歯の衛生週間)です。
 普段何気なく当たり前に使っている歯ですが、欧米では「歯を1本失うことは、手の指を1本失うことに等しい」と言われるほどです。
 人生80年の時代。今回は、生きいきとした自分らしい生活を送るために欠かすことのできない歯の健康について、お話ししたいと思います。

むし歯ができるのは

 日本人の歯科疾患の統計によると、20代、30代、40代と年齢を重ねるごとにむし歯が増加し、歯を失う大きな原因となっています。 
 図1を見てください。むし歯は、食べ物・細菌・宿主(歯・唾液などの生体側の要因)の3つの要素がそろったときにできます。このなかで、もっとも影響が大きいのが、砂糖だと言われています。
 むし歯菌も、「競争社会」のなかで必死に生き抜こうとしています。そこで砂糖をエサにして自分を守るための強力なバリア(バイオフィルム)をつくって身 を守り、歯の表面に居座ります。そのときに細菌が出す排泄物(酸)が歯を溶かしてできるのが、むし歯なのです。
 現在の食環境は、砂糖と切っても切れない関係にあります。お菓子やジュースだけではなく、料理や薬(ドライシロップなど)にまで使われています。おいしいものには、ほぼ砂糖が入っているといっても言いくらいです(表1)。もともと成人が1日に摂取する糖分の適量は50グラム(角砂糖16個分)と言われています。
 なるべく砂糖を使わず、素材を活かした、手作りのものをバランスよくいただくというのが理想的です。

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むし歯にならないために

 とは言え、砂糖は人間にとって効率のよい貴重なエネルギー源でもあります。筆者の私自身にとっても、「スイーツなしの人生」など考えることもできません。とすると、むし歯菌そのものを口の中から追い出すことも考えなければなりません。
 診察室では、「むし歯にならないために、1日に何回歯を磨いたらいいでしょうか」という質問をよく受けます。歯の大敵であるバイオフィルムができるまで には、砂糖を食べてから18時間かかることが明らかになっているので、答えは「1日1回、バイオフィルムをつくらないように丁寧に磨くことができればよ い」です。

磨き方のポイント

 次に、歯ブラシの選び方と歯磨きのポイントについてお話しします。
●歯ブラシの選び方
 日本で1年間に消費される歯ブラシはおよそ2億本なのだそうです。一人あたり年間2本、つまり平均して半年間に1回交換しているということになります。
 ところで、お店や歯科医院には、さまざまなタイプの歯ブラシが並んでいるため、歯ブラシ選びに迷ってしまうことはありませんか?
 表2や歯ブラシの選び方(図2)を 参考に、ご自身がどれにあてはまるか選んでみてください。ときどき、お口の小さいおとなの方が「磨きやすいから」と子ども用の歯ブラシを使われているケー スをお見かけします。子ども用の歯ブラシは、たしかにヘッド部分が小さく小回りがききます。しかし、おとなにできやすい歯の根元のむし歯や歯周病を予防す る磨き方(後述する「バス法」)をするには硬すぎて、歯ぐきを傷つけてしまう恐れがありますので、あまりおすすめできません。
 歯ブラシは歯を磨いたり水で洗ったりするために、湿気を持っています。そのため細菌が繁殖しやすく、せっかく歯を磨いても、お口のなかに細菌を戻してし まいかねません。湿気を予防する点では、ナイロン製のものがおすすめです。
 また、近頃は品質が格段に向上し毛先が広がりにくくなっていますが、それでも毛先が消耗し、汚れを落としにくくなっていきます。
 おろしたての歯ブラシで磨く感覚がなくなってきたころ、できれば1カ月に1度を目安に交換するとよいでしょう。高級な歯ブラシを半年間使うよりも、一般 的なお手頃価格の歯ブラシをこまめに交換する方が、むし歯予防には効果的です。
 歯ブラシの保管方法は図3を参考にしてください。
●正しい磨き方
 歯ブラシや歯みがき粉の品質が向上したことで、今ではスクラビング法やバス法という磨き方がすすめられるようになりました。子どもとおとなではむし歯のできやすい場所がことなるので、磨き方も違います。ぜひ図4・5を参考にしてください。
 診察室では「食後は、すぐ磨くのが正しいのか正しくないのか」「いちばん効果的なのは、夜寝る前か朝起きてすぐか」という質問もよく受けます。私は、 「いつが効果的か」よりも、一日一回、ご自身の生活スタイルのなかでもっともゆとりが持てる時間帯に、できれば鏡を見ながら1本1本丁寧に磨くことが大切 だと考えています。
 みなさん一人ひとりに適した磨き方があります。また、歯の形は非常に複雑なため、どんな人にも必ず歯ブラシが届かない場所があります。磨き残した場所の 細菌が増えて悪さをはじめるギリギリのタイムリミットは3~4カ月です。
 歯科には、医師だけでなく歯科衛生士がいます。実はこの歯科衛生士は、歯ブラシや補助用具の選び方、正しい磨き方、磨き残した場所の細菌を取り除くスペ シャリストです。民医連の歯科は、歯科衛生士の人数が非常に多いことが特長です。
 受診の際には、ぜひ歯科衛生士と歯磨きについて話し合う機会をもち、スペシャリストによるクリーニングを定期的に受けることをおすすめします。クリーニ ング後の歯のツルツルとした感じやお口のなかの爽快感を、毎日の歯磨きによって維持することが、健康な歯を保ついちばんの秘けつです。

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年に1回は受診を

 みなさんには、少なくても1年に1回は歯科を受診して、むし歯や歯ぐきの状態をチェックしていただきたいと思います。
 しかし、多忙だったり、「痛みを感じないから大丈夫」という方も多いでしょう。しかし、歯の病気というのは意外と自覚症状が現れにくい場合が多いため、 痛くなってからの治療では手遅れや、治療回数・内容・費用の点からも、患者さんの負担が大きくなりがちです。以下のチェック項目にあてはまる場合、むし歯 になっていることが考えられます。
(1)歯がしみる
(2)歯の色が濃くなった
(3)詰め物の周りが変色したり欠けたりしている
(4)かぶせ物のキワが変色している
(5)歯にものがはさまりやすい
(6)ものを噛むときに頬をかむ
 最近は、しっかり噛むことができる健康な歯が、脳や全身の健康にも大きく影響することが、次々と明らかになっています。ちょっとしたことでも気軽に相談 できるかかりつけ医をもち、みなさんがハ(歯)ッピーな毎日を送られることを心から願っています。

イラスト・井上ひいろ

いつでも元気 2013.6 No.260