• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

いつでも元気

いつでも元気

元気スペシャル 原発事故から2年 被災者たちの不安に寄り添う 全日本民医連が双葉町民の甲状腺検査を実地

 小名浜生協病院(福島県いわき市)で三月二~三日、同県・双葉町民の甲状腺エコー検査がおこなわれました。全日本民医連も医師五人、検査技師三人を派遣し、四四人が受診しました。(文・安井圭太記者)

genki259_01_01
不安そうに母親を見つめる女の子。
母親は「大丈夫」と言うように手をにぎった

 福島県は福島第一原発事故後、放射性物質汚染による健康被害を不安視する声に応え、「県民健康管理調査」(甲状腺エコー検査など)をおこなっています。この検査は、事故当時〇~一八歳だった県民に限られており、二〇歳までは二年に一度、それ以降は五年に一度の計画です。
 双葉町は「もっと多くの町民の不安を解消したい」と、事故当時一九~三九歳だった町民も対象に甲状腺エコー検査を独自に検討。これを引き受けたのが全日本民医連でした。そして、昨年一二月より、検査を開始しました。

不安を抱えながら受診

genki259_01_02
甲状腺エコー検査をおこなう検査技師

 「以前から検査を受けたいと思っていた」と話すのは、現在いわき市で避難生活を送る女性(20 代)です。女性の姉は甲状腺エコー検査で、所見を認められていました。「まさか自分は──と思いますが、姉のこともあるので少し不安です」と言いながら検 査室へ入っていきました。
 検査後、松本純医師(福島民医連会長)が「小さな結節(しこり)を認めましたが、現在は問題ありません」と結果を説明。「今後大きくなることはあります か」との質問に、松本医師は「大きくなることもありますが、小さくなることもあるんですよ。正式な判定はこの後複数の医師とおこないますが、この大きさで あれば心配いりません」とこたえました。
 松本医師は結果の説明を終えた後も女性の生活状況などを気遣い、「大変でしたね」と声をかけました。判定会の結果、この女性はA2()となりました。

伝える難しさ

genki259_01_03
受診者に結果を説明する松本医師

 全日本民医連・被ばく対策委員の竹内啓哉医師(神奈川・協同ふじさきクリニック)は、 “B判定疑い”(判定会でBと確定)となった受診者の結果説明を担当。結果を伝えられた女性(20代)は思わず「えっ。何かあるの…」と不安の声をもらしました。
 竹内医師は正式な判定は後でおこなうことを伝え、「画像では判断しにくいのですが、結節があるように見えます。あったとしても悪いものである可能性は低 く、少し気になる程度です。でも、念のために二次検査を受けておいた方が安心でしょう」とおだやかに説明しました。
 「受診者さんや患者さんにとって悪いニュースを伝えるのは本当に難しい。何かあると聞いた瞬間に、頭が真っ白になってしまいますから。冷静になるまで 待って、不安に寄り添うように少しずつ丁寧に説明することが大切です」と話しました。

子どもを想う親

genki259_01_04

 

 小さな子どもと妻をもつ男性(20代)は、現在いわき市に住んでいます。子どもたちには県が実施する甲状腺エコー検査を受けさせており、「異常なし」との判定を受けています。しかし、「この子たちが大きくなったときのことを考えると心配です」と話します。
 現在はなるべく室内で遊ばせ、外に出ても短時間で、土や砂はさわらせないようにしていると言います。「本当は前みたいに思いっきり外で遊ばせてあげた い。でも、県外に避難しても仕事を見つけられるかどうかわからないから、ここで暮らすしかないんです」と、うつむきました。

 

長期間の健康管理を

genki259_01_05
結果判定会でエコー写真をもとに意見を交わす医師と検査技師。中央が竹内医師

 今回の検査では、二日間でA1判定一八人、A2一九人、B六人、C一人という結果に。B・C判 定の受診者には専門の医療機関を受診するようにすすめ、後日紹介状を渡しました。 現在、放射性物質汚染による健康への影響は、低線量の場合不確定なこと が多く、長期間にわたる健康管理が必要です。全日本民医連は「双葉町の検査とともに、福島県の調査対象者である約三八万人すべての検査を経年的におこなう ことと、福島県以外にも検査の対象者を広げる必要がある」と訴えています。

消えない「脱原発」の声

──東京・日比谷公園

 3・11から約二年の三月一〇日、“首都圏反原発連合”の主催で、「原発ゼロ・大行動」がおこ なわれ、東京・日比谷公園に「原発ゼロ」を訴える人たちが全国から集まり、あふれかえりました。同公園で午前中に開かれた“原発をなくす全国連絡会”の集 会や午後の“首都圏反原発連合”の集会などとあわせて、のべ四万人が参加しました。
 ミサオ・レッドウルフさん(首都圏反原発連合)は「今年こそは“原発ゼロ”と政府に言わせたい。今日は3・11を忘れさせないためにも、非暴力で訴え、 メディアにアピールしましょう」とあいさつ。ミサオさんが「再稼働反対!」とコールすると、会場の外にあふれた参加者からも、「再稼働反対!」の大きな声 が響きました。

genki259_01_06
「脱原発!」。国会に向けて請願デモ

 全日本民医連事務局長・長瀬文雄さん(原発をなくす全国連絡会)も「今日を『あの日の私たちの 行動が原発ゼロのスタートになった』──そんな日にしましょう。原発の問題は思想・信条の問題ではなく、いのちの問題です。いのちを守るために思いを一つ にして、がんばりましょう」と力強く発言。
 民医連の職員や共同組織も大勢参加しました。参加者の木許裕介さん(代々木病院・事務)は「原発事故から二年が経っても、被災者たちの仕事や住宅の問題 など、まだまだ解決していない。これでは収束とは言えない。国や東電は、責任を持って支援すべきだ」と話しました。
 集会後は国会に向けて請願デモ。途中、東電前では、「すべての原発を廃炉に」と、大きな声を上げました。デモの後も、首相官邸前や国会議事堂前などで、一九時まで抗議行動がおこなわれました。
写真・五味明憲

いつでも元気 2013.5 No.259