Dr.小池の世直し奮戦記 「新システム」で子育ての不安は解消する?
九月末に、保育所の「待機児童」数が発表されました。二万四八二五人という高水準。しかも以前(二〇〇三年まで)は、“認可外保育所に入りながら 認可保育所の入所を待っている児童”も待機児童として数えられていましたが、今は除外されています。入所をあきらめて申し込んでいない児童の数も含まれて いません。実際の待機児童数は数十万人規模に及ぶとも言われています。
こうした中で「社会保障と税の一体改革」の“目玉”とされる「子ども・子育て新システム」は、二〇一五年四月から実施される予定です。これで子育ての不安は解消されるのでしょうか。
待機児童解消には役立たない
「新システム」は幼稚園と保育園の機能をあわせもった「認定こども園」を拡充し、株式会社の参入をすすめることで待機児童解消をめざすとしています。し かし認定こども園には、待機児童の八割をしめる三歳未満の保育実施義務がありません。
しかも現在、自治体には待機児童解消計画の作成が義務づけられていますが、新システムでは“努力義務”に後退。自治体が待機児童数をつかむ必要もなくな ることが、小宮山洋子前厚労大臣の国会答弁で明らかになりました。これでは待機児童がまともに解消されるはずがありません。
“保活”も激化
保育所探しも変わります。今の制度では認可保育所に入る場合、自治体に対して希望する保育所を申請し、空きがあれば入所が決まります。
新システムではまず、保護者が市町村に申請して「保育の必要量」の認定を受けます。そして保護者がその認定証をもって直接施設に申し込み、契約しなけれ ばならないため、就活ならぬ“保活”が激化します。当面「市町村が窓口になって入所を調整する」ことになっていますが、これを持続させなければなりませ ん。
保育料では、今まで通り「収入に応じた負担」となりますが、就労が長いフルタイムで一一時間保育、パートなどの短時間労働で六時間保育という二つの枠組 みが検討されており、この時間を超えた分は実費です。今は「すべての子どもに一日の保育を保障する」との考え方ですが、これが保護者の就労時間で区切った 「保育の必要量」だけを保障するという考え方になります。実際に保育を必要とする時間とは関係なく、「保護者がパート労働だから、六時間保育しか認めな い」ということが起こります。
認可保育所の緊急増設こそ必要
子育て世代は、どんな保育制度を望んでいるでしょうか。第一生命経済研究所が私立保育所・幼稚 園の園長と三歳以上の保育所・幼稚園に通う母親を対象にした調査(二〇一一年、複数回答)では、保育所(〇~五歳児)の増設五七・八%(〇~二歳児の保育 所増設は三九%)が多数で、「認定こども園」などの幼保一体施設は二八・五%にとどまります。
待機児童解消にもっとも役立つのは、認可保育所をつくることです。日本共産党の試算では、一四〇〇億円の財源があれば一〇万人分の認可保育所をつくれま す。保育所建設工事は地域密着型の公共事業ですから、中小企業にも仕事がまわります。保育士などの安定的な雇用にもつながります。仕事と子育てが両立でき る社会にするために、認可保育所の緊急増設を国や自治体に求め、実現させましょう。
いつでも元気 2012.12 No.254
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