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いつでも元気

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特集1 消費税、後期 高齢など裏切りの数々 「政権交代」 「選挙公約」を振り返る

 二〇〇九年の総選挙で「国民の生活が第一」を掲げ、多くの国民の願いを反映した政策を公約とした民主党政権。
 あれから三年、国民生活はどうなったのか、私たちにできる事は──近づく総選挙を前に、三年前の総選挙時の公約を振り返ってみます。(多田重正記者)

genki254_02_01■消費税■

【3年前】「任期中は上げない」
【現 在】消費税10%を決定

 最大の裏切りは、消費税増税です。総選挙で「任期中は消費税を上げない」と公約しながら、一年も経たないうちに増税の必要性を言い出しました。
 そして今年八月に消費税増税(五%→一〇%)法案を強行採決し、野田首相が記者会見で国民に「お詫び」。
 しかし、謝っても国民の怒りはおさまりません。大手マスコミがこぞって増税のキャンペーンを張るなかでも、成立直後の八月一一・一二日に共同通信社がお こなった世論調査では増税反対が五六・一%で、過半数を超えました。

■後期高齢者医療制度■

【3年前】廃止
【現 在】制度を温存

 後期高齢者医療制度には「高齢者差別だ」「戦争をくぐり抜け、戦後日本の復興・成長を支えた私たちを切り捨てるのか」など、高齢者の怒りが集中しました。
 民主党政権はこの制度の廃止の願いにも背きました。総選挙後、「廃止は四年後」と言い出し、七五歳以上だけが加入する国保を新設する「新制度」構想を発 表。「制度の名前を変えただけ」と批判されました。その新制度も、自民党に消費税増税法案に賛成する見返りとして撤回するよう求められて棚上げ。一方で凍 結されている七〇~七四歳の医療費自己負担の二倍化(一割→二割)の実施を民主党政権は検討しています。

「国民の生活が第一」はどうなった?

■労働者派遣法■

【3年前】抜本見直し
【現 在】派遣労働を温存

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派遣村に当時の野党代表が勢揃い。民主党・菅代表代行(当時)の姿も(2009年1月4日、日比谷公園)

 民主党政権誕生の原動力になった一つに派遣労働問題が。製造業の派遣労働解禁(二〇〇四年) 後、貧困が急速に拡大し、「派遣労働を原則禁止に」「ワーキングプアをなくせ」という「反貧困」の運動や世論が「派遣労働者の雇用安定」「製造業の派遣禁 止」などを掲げた民主党を躍進させました。
 ところが、今年三月に採択された労働者派遣法の「改正」では「三〇日以内の日雇い派遣を禁止する」というだけで、主婦や高齢者は禁止対象から除外。大問 題となった製造業や登録型の派遣は禁止されずに残りました。不安定雇用の元凶である派遣労働は温存されたままです。

悪政を後押しする自・公

 自民党と公明党は、民主党が前回総選挙で掲げた国民生活を守る公約を投げ捨てるよ うに迫ってきた。谷垣禎一総裁(当時)は党首討論(今年4月11日)で、消費税増税は「待ったなしだという問題意識は共有」していると言い、公明党の山口 那津男代表も「先送りを絶対しないという意気込みで審議を進める覚悟はあるのか」と増税を迫った。
 今年3月に採択された労働者派遣法の改定でも、当初案に盛り込まれていた製造業・登録型派遣の「原則禁止」という文言を削除させたのは、自民党・公明党だった。
 国民に痛みを押しつける構造改革路線や、アメリカ追従の政治が政権転落の理由になったというのに、自民党・公明党はまったく反省していない。これらの政党に国民の願いを託すのは、時代に逆行している。

■普天間基地■

【3年前】国外または県外
【現 在】辺野古「移設」

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民主党政権の裏切りに抗議し、普天間基地の県内移設の結論に抗議する沖縄県民大会。9万人が集まった(2010年4月、読谷村)

 「普天間基地の県内移設は許さない」との世論に押され、沖縄の米軍普天間基地(宜野湾市)の国 外・県外移設を掲げた民主党。ところがアメリカに辺野古への「移設」を要求され、国内で辺野古以外の受け入れ先を探して打診するも、各地で地元住民の反発 を受けて、鳩山首相(当時)は右往左往。結局、出した答えは自民党と同じ辺野古への「移設」で、「国民が聞く耳を持っていない」からと責任転嫁し、首相を 辞任。基地提供義務を定めた日米安保条約に固執するあまり、基地の「撤去」ではなく「移設」しか考えられなかったための限界でした。
 今日、民主党政権は事故多発の欠陥機・オスプレイの普天間基地配備を認め、同県内の東村高江にあるヤンバルの森を切りさいて、米軍が使用するヘリパッド工事の建設まで強行しています。

■医療費■

【3年前】OECD平均並みに増やす
【現 在】抑制

 小泉内閣以来、自民党政権が削った診療報酬(公的保険上の医療行為・医薬品などの価格)は約八%で、医療崩壊を招く要因となりました。
 民主党は医療崩壊打開のために、〇九年九月の政権合意でも、GDP(国内総生産)比約八%の医療費を経済開発協力機構(OECD)加盟国平均並みに増や すことを掲げました。しかし二年に一度の診療報酬改定では、二〇一〇年プラス〇・一九%、二〇一二年プラス〇・〇〇四%で、 ほぼ引き上げゼロに等しく、医療崩壊打開にはほど遠い改定率になりました。
 さらに自民党・公明党との談合で国会に突然、社会保障制度改革推進法案を提出し、今年八月、採決を強行。同法にはマニフェストに掲げた「国民皆保険制度 を守る」との文言はなく、公的医療保険に「原則として全ての国民が加入する」(傍点は編集部)と後退。「医療保険制度については…保険料に係る国民の負担 に関する公平の確保、保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等を図る」など、いっそうの保険料上昇や公的保険で受けられる医療を狭める医療制度「改革」 に道を開きました。

領土問題先送りの本家

 尖閣諸島・竹島問題で、領土を「譲る気がない」と主張する自民党に期待する国民の声もある。だが、領土問題の解決を先送りしてきた本家は自民党だ。
 尖閣諸島では1971年、中国が尖閣諸島を「日本が不当に奪ったもの」と主張しはじめたが、自民党政権は翌年の中国との国交正常化の際にも先送りし、そ の後も「領土問題は存在しない」のだからと、中国との対話を怠ってきた。
 竹島問題でも、韓国軍などによる訓練が1990年代初頭からおこなわれていたが、自民党政権は放置してきた。
 自民党は、自衛隊を「国防軍」とする憲法「改正」案を持っている。自民党が政権につけば、領土問題を話し合いではなく軍事力で解決しようと、さらなる軍備強化、戦争へと突き進む可能性すらある。

政策を守る 政治家、見抜く目を

■公共事業■

【3年前】無駄をなくす
【現 在】巨大事業を次々復活

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毎週金曜日におこなわれている原発再稼働反対の首相官邸前行動。粘り強いたたかいが政治を動かす力に(今年10月19日)

 「コンクリートから人へ」をスローガンに、公共事業の無駄をなくして国の財政を再建し、国民生活を守る財源を生み出すというのが、三年前の民主党の公約でした。
 ところが前回総選挙時に民主党が中止を約束した八ツ場ダム(群馬県長野原町)の工事も、野田内閣のもとで再開を決定。一メートル一億円、全長一六キロに 及ぶ東京外郭環状道路(外環道)の建設も続行。さらに今年、整備新幹線の三区間(新函館・札幌、金沢・敦賀、諫早・長崎)の着工を認可。これらはいずれも 自民党政権時代に決定されたものです。
 しかも消費税増税法には、自民党・公明党との談合の結果、「成長戦略」「事前防災及び减災」などに「資金を重点的に配分する」という附則まで書きこみま した。「消費税引き上げ分は社会保障だけに使う」と民主党政権は説明してきましたが、ウソだったのです。

不断のたたかいを

 「高校生授業料無償化」など、国民の願いを反映した政策は一部で、民主党の裏切りは数え上げるとキリがありません。企業団体献金・天下りの禁止も棚上げし、小沢元代表の金権腐敗疑惑ひとつ、究明しませんでした。
 子ども手当も自公政権下でも存在した「児童手当」に戻して減額。月七万円の最低保障年金の実現も、障害者から「利用料」を徴収する障害者自立支援法の廃 止も反故にしています。生活保護も公約通り母子加算を復活させたものの、母子加算と同時に廃止された老齢加算の復活は拒み、生活保護基準を下げようと計 画。
 一方で、民意を削る衆議院の比例定数八〇削減の公約に固執するあまり、他党の合意を得られず、選挙制度「改革」がすすまない要因にもなっています。
 ほかにも食料自給率向上を公約しながら、農業や日本経済を根底から破壊するTPP(環太平洋連携協定)参加に邁進したり、脱原発の国民運動が盛り上がる もとでも原発全廃を決断せず、大間原発の工事再開を認める姿からは「自民党政権と何が違うのか」「何のための政権交代だったのか」という声が出るのも当然 です。
 しかし政権交代は、「国民の力で政権を変えられる」という重要な教訓を残しました。同時に民主党の「変節」は、「政治家にお任せ」ではなく、選挙後も監 視し、国民のための政策を実行するよう迫る不断のたたかいが必要であることを示しました。

問われる候補者見抜く目

 総選挙は、どんなに遅くても来年八月末までに実施されます。七月には参議院選挙もあります。全 日本民医連は国政選挙に向け、▽各政党・議員に公開質問状を送り、その回答やこれまでの行動、政策ごとの立場などを公表する、▽地元出身の国会議員を訪 問・懇談する、▽各地で公開討論集会などをおこない、政党・議員を選択する判断材料を提供する、などの方針を掲げ、職員・共同組織などを中心に「選挙に 行って悪政を変えよう」との呼びかけを強める方針です。
 掲げている公約を点検するだけでなく、本当にその公約を守る候補者なのかどうか見抜く目が、私たち国民にいっそう問われる時代となったようです。

世論とは真逆の「第3極」

 マスコミがもてはやす「第3極」は、構造改革、税金の無駄遣い、アメリカ言いなりの政治を受け継ぐ人物を中心に構成されている。
 東京都知事を辞任し国政復帰をめざす石原慎太郎氏は、高齢者の無料乗車パスを有料化するなど都民サービスを削る一方、3年で1000億円近い赤字を出し た新銀行東京、1泊26万円の豪華海外出張、「1メートル1億円」の東京外環道工事(全長16キロ)などを進めてきた。原発も賛成。知事就任直後は米軍横 田基地返還を掲げていたが、今は何も言わなくなった。
 日本維新の会の橋下徹氏は「自立する国家」と言いながら、アメリカが要求するTPPや普天間基地の辺野古「移設」、オスプレイ配備には賛成。「脱原発」 もトーンダウンし、今年10月には「安全性の高い原発が開発されれば輸出する」。大阪市職員対象の思想調査アンケートを業務命令で実施するなど、独裁的な 政治手法も目立つ。
 維新の会の国会議員団代表には元民主党議員、幹事長には元自民党議員が就任しており、国民生活を破壊した張本人たちの寄せ集めになっている。

いつでも元気 2012.12 No.254